量子位相推定は自明
実は量子位相推定は、分かってしまえばめちゃくちゃ簡単です。この記事では、量子位相推定の極意を説明します。
量子位相推定とは
量子位相推定とは、あるユニタリ行列 $U$ と、その固有ベクトル $|\psi\rangle$ について、 $A|0\rangle = |\psi\rangle$ となるような量子回路 $A$ と、制御 $U^{2^n}$ ゲートを構成する量子回路とがあれば、 $|\psi\rangle$ に対応する固有値 $\lambda$ を(デジタル値で)求めることができる、というアルゴリズムです。よくある量子回路の構成としては、以下のようになっていることが多いです。
さて、この回路の意味、分かりますか?
量子位相推定の回路を理解する
このとき、 $P$ の一番左の列が $|\psi\rangle$ になるように、 $P$ を選ぶことができます。そうすると、以下の回路は等価になります。
また、制御$U$ゲートも書き換えることができ、 $P^{-1} P$ はキャンセルできます。
とても簡単な回路になりました。けれど、もっと簡単にできます。
制御Λゲートの標的量子ビットが $|0\rangle|0\rangle\cdots|0\rangle$ なのだから、制御量子ビットが $|1\rangle$ のときには、対応する固有値の $\lambda$ がキックバックされます。つまり、これは位相シフトのゲートで書くことができます。
ここで $P(\theta)$ は以下で定義される位相シフトゲートです。
簡単にはなりましたが、これでは、まだ、なぜ量子位相推定の回路が機能しているか分からないと思います。
実は $|0\rangle\cdots|0\rangle|0\rangle$ にアダマールゲートをかけた回路は、 $|0\rangle\cdots|0\rangle|0\rangle$ を量子フーリエ変換した回路と同じです。
書き換えると以下の回路が得られます。
ここで、学生時代に学んだフーリエ変換の公式を思い出してください。周波数領域での回転は、時間領域での平行移動に相当します。
つまり、QPEの量子回路は、$0$ を $\lambda$ にシフトする回路だったんですね。めでたしめでたし。