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Antigravity x Geminiを "Proactive Tech Lead" に育てる試みとその記録

Last updated at Posted at 2025-12-17

混沌を飼い慣らすための覚書

――AIエージェントを Proactive Tech Lead に育てる試み

IDEの中にAIが住み着くようになってから、コーディングの手触りは静かに変わり始めた。
我々はもう、すべてのコードを自分の指で書いているわけではない。
代わりに指示を出し、方向を与え、判断を委ねる。
仕事は「書く」ことから、「指揮する」ことへと少しずつスライドしている。

Google Antigravity と Gemini による Agentic Coding は、強力だ。
だが強力であるがゆえに、制御を失うと厄介なことになる。

放っておけば、彼らは善意のまま main ブランチを書き換える。
長い文脈の途中で、初期の設計思想はいつの間にか忘れ去られる。
それはまるで、記憶力はいいが性格に一貫性のない優秀なインターンのようだ。

では、どうすればいいのか。

もちろん、人格を持つわけではないであろう。
だが、振る舞いを設計することはできる。

単なる「道具」ではなく、
文脈を理解し、自律的にプロジェクトをメンテナンスする
信頼できる Tech Lead として振る舞ってもらうことはできないのか。

その問いから、この設定は始まった。


外部脳という発想

私が辿り着いた暫定的な答えは、意外なほど地味なものだった。

プロンプトを工夫するのではない。
モデルに期待するのでもない。
ルールと手順を、コードとして外部に置く。

リポジトリのルートに .agent ディレクトリを置き、
そこにエージェントの行動原理をすべて集約する。

  • 行動規範は rules.md
  • 手順書は workflows/
  • 記憶は Markdown ファイル群として

プロジェクト固有のコードとは切り離し、
.gitignore や submodule、シンボリックリンクで運用する。

これは、エージェントのための外部脳だ。
人格と記憶を、リポジトリの外に持たせる試みである。


制御の要諦は三つだけだった

試行錯誤の末、残った本質は驚くほどシンプルだった。

  1. 安全装置
  2. 記憶の強制
  3. 記憶の断捨離

それだけでいい。


1. 安全装置としての Meta-Protocols

自律的に動く存在には、思考より優先される絶対的な制約が必要だ。
私はそれを「メタプロトコル」と呼んでいる。

Pre-Flight Check

コミット権限を持つエージェントにとって、
ブランチの誤操作は致命傷になり得る。

そこで rules.md の最上位に、こう書いた。

  • 作業前に必ず git branch --show-current
  • main であれば即座に停止

拍子抜けするほど単純だが、効果は劇的だった。
それ以来、この手の事故は一度も起きていない。

安全とは、往々にして退屈なものだ。

Documentation Hygiene

もう一つの原則は、こう定義した。

コードを変えたなら、ドキュメントも変えろ。

finalize_task ワークフローでは、
ARCHITECTURE.mdCHANGELOG.md の更新を必須にした。

人間は忙しいと、こうした作業を後回しにする。
エージェントは違う。
書いてあることを、そのまま守る。


2. 記憶を忘れさせないための Workflows

どれほどコンテキストウィンドウが広がっても、
記憶は時間とともに薄まる。

だから私は、「思い出させる」ことを自動化した。

Context Loading (start_task)

タスク開始時、エージェントは必ず次を読む。

  • LESSONS.md —— 過去の失敗
  • ARCHITECTURE.md —— 現在の設計
  • DECISIONS.md —— 重要な意思決定(ADR)

「昔そう決めた理由」を、毎回思い出させる。
それだけで判断のブレは大きく減る。

Self-Correction (finalize_task)

コミット直前、git diff --cached を実行する。
そして、自分の変更を自分で読む。

デバッグコードは残っていないか。
壊していないか。
一呼吸置くことで、質は驚くほど上がる。


3. 記憶の断捨離 (Context Optimization)

もう一つ、運用していく中で気づいたことがある。
どれだけ良い記憶も、溜め込みすぎればノイズになるということだ。

コンテキストウィンドウは有限であり、なにより我々の認知負荷には限界がある。
だから「捨てる」仕組みも必要になる。

  • Archive: 古くなった変更履歴 (CHANGELOG.md) は、定期的に Archives/ ディレクトリへと退避させる。
  • Condense: 肥大化したドキュメントは、要約して本質だけを残す。

エージェント自身に、部屋の掃除をさせるようなものだ。
常にワークスペースを整理整頓し、新鮮な空気を入れる。
そうすることで、彼らの思考は鋭さを保ち続ける。


現在地

この .agent 構成を導入してから、
Gemini は単なるコード生成機ではなくなった。

設計を気にし、履歴を尊重し、
ときにはこちらの意図を問い返してくる。

完璧な Tech Lead ではない。
だが、少なくとも信頼できる同僚にはなりつつある。


もちろん、これは正解ではない。
ただの実験だ。

AIの能力が進化すれば、
こんな仕組みは不要になるかもしれない。
あるいは、もっと精巧なオーケストレーションが必要になるかもしれない。

我々はまだ、この新しい知性との距離感を探っている。

混沌は消えない。
だが、飼い慣らすことはできる。

今のところ、私はそう信じている。


Repository
https://github.com/mtskf/gemini-agent-configs

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