参考記事
この記事は以下の記事に大きく影響を受け、書きました。わたし自身の学習記録の側面が強いです。元記事が非常に参考になるので、ぜひご一読ください。
【新人プログラマ応援】開発タスクをアサインされたらどういう手順で進めるべきか by @jnchito
はじめに
「このタスク、お願いできる?」
実務に入って間もない頃、この一言がどれだけプレッシャーになるか。期待に応えたい気持ちと、何から手をつけていいかわからない焦り。そのギャップで苦しんでいる開発者は意外と多いはずです。
この記事では、タスクをアサインされてから完了するまでの具体的な進め方を、実例ベースで解説します。
この記事で想定する読者
- 実務経験が浅く、タスクの進め方に不安を感じている開発者
- タスクに着手したものの、途中で詰まって動けなくなってしまう人
- 「もっと効率的な進め方があるはず」と感じている人
想定する開発シナリオ
プロジェクト: Laravel製の社内管理システム(運用3年目)
タスク内容: ユーザー管理画面に検索フィルター機能を追加
- 名前、メールアドレス、登録日範囲で絞り込み可能に
- 検索条件をURLパラメータで保持
- 検索結果はページネーション対応
開発環境はセットアップ済み、という前提で進めます。
Step 1: 現状把握 – 今のシステムを「体験」する
やること: ローカル環境で実際に画面を操作して、現行の挙動を確認する
最初にすべきはコードを読むことではなく、画面を触ることです。
具体的なチェックポイント
- ユーザー管理画面にどうアクセスするか?(メニュー構造、URL)
- 現在の一覧表示はどんな状態か?(ソート順、表示項目、件数)
- ページネーションは既に実装されているか?
- 類似機能は他の画面にあるか?(他のマスタ管理画面など)
なぜこれが重要か
画面を触らずにいきなりコードから入ると、「この画面ってこういうUIだったのか...」と後で気づいて手戻りが発生します。ユーザー視点で現状を体験することで、追加する機能がどうあるべきか具体的にイメージできるようになります。
よくある落とし穴:
- 権限不足でページが表示できない → シーダーで管理者ユーザー作成が必要
- テストデータが足りなくてページネーションの動作確認ができない
Step 2: 要件の解像度を上げる – 曖昧さを残さない
やること: 機能の仕様を具体的なレベルまで詰める
「検索フィルター追加」という指示だけでは情報が足りません。実装に必要な粒度まで要件を明確にします。
確認すべき項目リスト
UI/UX面
- フィルターの配置場所は?(一覧の上? サイドバー?)
- 検索ボタンのラベルは?「検索」「絞り込み」「フィルター適用」?
- リセットボタンは必要?
- 検索中のローディング表示は?
- 検索条件が空の場合はどうする?(全件表示? エラー?)
機能面
- 部分一致? 完全一致? 前方一致?
- 日付範囲の指定方法は?(カレンダーUI? テキスト入力?)
- 複数条件を指定した場合はAND検索? OR検索?
- 検索結果のソート順は?(登録日降順? 名前昇順?)
非機能面
- 何万件までデータが増える想定?(パフォーマンス要件)
- 検索結果のページネーションは何件/ページ?
- URLパラメータで検索条件を共有可能にするか?
既存機能から学ぶ
他の画面に似た検索機能があれば、その実装を確認しましょう。UIの統一感だけでなく、共通コンポーネントが使えるかもしれません。
「なぜ」を理解する
タスクの背景も聞いておくと、より良い実装案が見えてきます。
- 誰がこの機能を使うのか?(管理者? 一般ユーザー?)
- どんな課題を解決したいのか?(現状の不便さは?)
- どれくらいの頻度で使われる?(毎日? たまに?)
例: 「サポート担当が毎日、特定期間に登録したユーザーを確認する作業がある」という背景を知れば、日付範囲の入力UIをより使いやすくする必要性が見えてきます。
Step 3: コードの地図を描く – 実装の全体像を掴む
やること: 関連するコードを読んで、どこに何があるか把握する
ここでようやくコードを開きます。ただし書くためではなく、読むためです。
調査ポイント
ルーティング
routes/web.php の該当部分を確認
→ ユーザー管理画面は resource() 使ってる? 個別ルート定義?
コントローラー
UserController@index の現在の実装は?
→ ページネーションはどう実装してる?(simplePaginate? paginate?)
→ クエリビルダーの書き方は?
ビュー
resources/views/users/index.blade.php
→ どのレイアウトを継承してる?
→ どんなコンポーネントを使ってる?(Bootstrap? Tailwind? 独自CSS?)
モデル
User モデルにスコープはある?
→ 検索用のローカルスコープを追加すべき?
既存の類似機能
他の管理画面に検索機能があれば参考にする
→ FormRequest でバリデーションしてる?
→ 検索条件の保持方法は?
テストコードの確認
既存のテストがあるか確認します。
- Feature テストでユーザー一覧のテストはある?
- どんなテストケースが書かれてる?
- テストの書き方のお手本として使えそう?
テストがない場合: 今回新たに書く必要があります。工数見積もりに含めましょう。
データベースの確認
-- usersテーブルの構造確認
DESCRIBE users;
-- 本番相当のデータ件数確認(開発環境で)
SELECT COUNT(*) FROM users;
-- インデックスの確認
SHOW INDEX FROM users;
検索対象カラムにインデックスが貼られていない場合、パフォーマンス問題が起きる可能性があります。
Step 4: タスクを「食べられるサイズ」に分解する
やること: 実装内容を30分〜1時間で完了できる小タスクに分ける
ここが最も重要なステップです。大きなタスクは誰も完了できません。 小さく切り分けて、1つずつクリアしていきます。
分解例: 検索フィルター機能
□ ルーティング設定
- routes/web.php で検索パラメータを受け取れるように確認(既存ルートで対応可能か?)
□ FormRequest 作成
- SearchUserRequest を作成
- バリデーションルール定義(name, email, registered_from, registered_to)
□ コントローラー修正
- UserController@index で検索パラメータを受け取る
- 検索ロジックを実装(クエリビルダーでWHERE句追加)
- ページネーションに検索パラメータを引き継ぐ
□ ビュー作成
- 検索フォームのHTMLを作成
- 既存の一覧表示の上に配置
- 検索ボタンとリセットボタン追加
□ 検索条件の保持
- 検索後も入力値をフォームに再表示
- old() ヘルパーを使う
□ 空検索時の挙動実装
- 全項目未入力時は全件表示
- バリデーションメッセージ表示
□ スタイリング調整
- フォーム要素のレイアウト調整
- レスポンシブ対応確認
□ テスト作成
- Feature テストで検索パターン網羅
- 名前のみで検索
- 複数条件での検索
- 日付範囲での検索
- 該当なしの場合
分解のコツ
- ファイル単位で分ける: 1タスク = 1〜2ファイルの修正
- 動作確認できる単位にする: 各タスク完了後に「動いた!」を確認できるように
- 依存関係を意識する: FormRequestを先に作らないとコントローラーが書けない、など
- 見積もりも書く: 各タスクに所要時間の目安を付ける
見積もりの記入例
□ FormRequest 作成 (20分)
□ コントローラー修正 (40分)
□ ビュー作成 (60分) ← 一番時間かかりそう
□ テスト作成 (50分)
不安なタスクには「⚠️」マークをつけておきます。
□ ビュー作成 (60分) ⚠️ Blade初めて書くので時間かかるかも
Step 5: 実装方針をレビューしてもらう
やること: タスク分解の内容を先輩エンジニアに確認してもらう
ここまで、まだコードは1行も書いていません。
これが重要です。いきなりコードを書き始めると、方向性を間違えて大幅な手戻りが発生するリスクがあります。
相談時に伝えること
- タスクの理解: 「ユーザー管理画面に検索フィルターを追加します」
- 実装方針: 「FormRequestでバリデーションして、コントローラーで検索条件を受け取って...」
- タスク分解リスト: 「こういう順番で実装しようと思っています」
- 所要時間見積もり: 「トータル4時間くらいを想定しています」
- 不安な点: 「Bladeでの日付入力UIが初めてなので、ここで詰まるかもしれません」
得られるメリット
- 実装方針の間違いを早期発見
- 「もっと簡単な方法あるよ」というアドバイス
- 不安な部分への事前サポート約束
- 「そこまで分解できてれば大丈夫」という安心感
Step 6: 実装する – 小タスクを1つずつ潰す
やること: タスクリストに沿ってコードを書く
ようやくコーディング開始です。でも、もう迷うことはありません。やることが明確だからです。
実装時の基本ルール
ルール1: 上から順番にやる
タスクリストの順番には意味があります。飛ばさずに上から進めましょう。
ルール2: 1タスク完了ごとにコミット
git commit -m "Add FormRequest for user search"
git commit -m "Implement search logic in UserController"
小刻みにコミットすることで、問題が起きても戻りやすくなります。
ルール3: WIPプルリクエストを作る
実装開始したら、すぐにWIP(Work in Progress)のプルリクエストを作成。
[WIP] Add search filter to user management screen
これにより、他のメンバーが進捗を確認でき、早期にフィードバックがもらえます。
ハマったら30分ルール
実装中に詰まったら、30分で見切りをつけます。
1. 詰まった → タイマー30分セット
2. 30分後 → まだ解決してない?
3. → すぐに助けを求める
「自分で解決したい」という気持ちはわかりますが、1人で3時間悩むより、先輩と15分ペアプロする方が圧倒的に効率的です。
中間レポートを出す
正常系が動くようになったタイミングで、一度動作確認してもらいます。
「名前検索までは動くようになりました。方向性合ってますか?」
こうすることで、仕様の認識ズレによる手戻りを防げます。
Step 7: レビューを受けて完了
やること: プルリクエストのWIPを外してレビュー依頼
全タスクのチェックが埋まったら、実装完了です。
完了前のセルフチェック
- すべての検索パターンをブラウザで手動確認した
- テストが全てパスする
- コミットメッセージが適切
- 不要なコメントアウトやconsole.logが残っていない
- コードフォーマットが整っている(Pint/Linterを実行)
プルリクエストの説明文
## 概要
ユーザー管理画面に検索フィルター機能を追加しました。
## 変更内容
- 名前、メールアドレス、登録日範囲での検索が可能に
- 検索条件をURLパラメータで保持
- 検索結果のページネーション対応
## 動作確認
- [x] 名前のみで検索
- [x] 複数条件での検索
- [x] 検索結果0件の場合
- [x] ページネーション動作
## スクリーンショット
(実際の画面キャプチャを添付)
レビューで修正依頼が来ても、大きな手戻りはないはずです。事前に方針を確認しているからです。
まとめ: なぜこの手順が有効なのか
この記事で紹介した7ステップは、一見遠回りに見えるかもしれません。
でも実は、これが最短ルートです。
従来のやり方(失敗パターン)
タスクを受ける
→ いきなりコーディング開始
→ 途中で仕様の不明点に気づく
→ 実装方針を間違えていたことが判明
→ 大幅な手戻り
→ 納期遅延
この記事のやり方(成功パターン)
タスクを受ける
→ 徹底的に事前調査
→ タスクを小さく分解
→ 実装方針を確認
→ 迷わずコーディング
→ 計画通り完了
最も重要なポイント
「急がば回れ」 です。
焦ってコードを書き始めるのではなく、ゴールまでの最短経路を見つけることに時間を使う。最短経路が見えたら、あとは迷わず進むだけ。
タスクを「食べられるサイズ」に切り分ければ、誰でも完走できます。
おわりに
実務経験が浅い頃は、タスクをもらうたびに不安になります。でも、正しい手順を知っていれば、その不安は確実に減っていきます。
この記事が、誰かの「初めてのタスク完走」の助けになれば嬉しいです。
もし詰まったときは、遠慮せずに周りに助けを求めてください。それもまた、プロの仕事の進め方です。