0. はじめに
はじめまして。
株式会社学情 DX・マーケティング戦略部 DXチームのinoueです。
前職ではSESとして、ヘルプデスク業務を経験していました。
その後、DX推進に興味を持ち転職したのですが、実際に社内の問い合わせ対応を改善していく中で、ヘルプデスク経験が想像以上に活きる場面が多くありました。
本記事では、Microsoft 365 / Power Platform / AIを活用しながら、社内の問い合わせ対応をどのように仕組み化していったか、
そして、AI活用でうまくいかなかった点から何を学んだかをまとめます。
1. 入社直後、問い合わせが「個別チャット地獄」だった
数年前ですが、私が学情に入社した当初は、次のような状態でした。
- 問い合わせが 個別チャット / 対面中心で、情報が流れて消える
- 過去回答が残らず、同じ問い合わせでも毎回文章を作り直す
- 対応品質が 人に依存(属人化) し、チームとして回答できていない
他の記事でも触れますが、未経験から急に社内SEになった方が多い部署ではあるものの、
ここでの本質的な問題は「ITスキル不足」ではなく、
“問い合わせが仕組みとして処理されていない” ことだなと感じました。
2. SESでのヘルプデスク経験から見えていた課題
前職のヘルプデスク経験から、問い合わせ対応でよく起きる課題には共通点がありました。
主な課題はこの3つです。
- 受付(入口)がバラバラ
- 回答が資産化しない
- 同じ質問が繰り返される
逆に言えば、やるべきこともシンプルです。
- 入口を統一する(まず集める)
- 回答を残す(資産化)
- 同じ質問を減らす(自己解決へ寄せる)
この3つを軸に、Microsoft 365を使って仕組み化を進めました。
3. 実際に取り組んだこと
外部のサービスを利用するのが手っ取り早いかもしれませんが、
入社したてほやほやの私がそんなこともできるはずがありません。
ただしMicrosoft 365を導入しているため、十分に開発する環境は整っていたため、
社内のリソースを最大限に活用して次の3つを取り組んでみました。
施策①:Forms × Power Automateで「入口」を統一
最初に取り組んだのは、問い合わせの入口を統一することです。
それまでは「誰に聞けばいいか」が分かりにくく、結果として個別チャットや口頭での問い合わせが多くなっていたと予想しました。
そこで、まずは問い合わせを受け付ける場所を明確にしました。
■やったこと
- Formsで問い合わせフォームを作成
- 送信時に Power Automateでユーザーとのグループチャットを自動生成
- 部内用のチャネルに問い合わせ概要 兼 通知用スレッドを自動投稿
■効果
シンプルな仕組みで、すぐに問い合わせ件数が削減されるわけではありませんが、
まずは問い合わせをいきなり減らすより、見える化・仕組み化できました。
- 問い合わせを 見える化 できる
- 個別DMをやめて 履歴が集約 され、チーム対応へ移行される
- 依頼者:投げ先に迷わない
- 対応側:必要に応じて柔軟に担当者を巻き込めるようになった
施策②:SharePoint / OneNoteで「回答」を資産化
入口を統一すると、次に見えてきたのは「同じような問い合わせが繰り返されている」という課題でした。
そこで、回答をその場限りで終わらせず、ナレッジとして残す取り組みを進めました。
■やったこと
- エンドユーザー向け:SharePoint(公開ナレッジ)
- 部内向け:OneNote(内部メモ / 手順)
■SharePointを選んだ理由
- キーワード検索しやすい
- タグや分類で整理しやすい
- エンドユーザー向けに見せやすく、社内ポータルとして展開しやすい
■OneNoteを選んだ理由
- メモ感覚で書き始められる
- 手順書や内部メモを階層管理しやすい
- ナレッジを書く心理的ハードルを下げやすい
■効果
特に効果を感じたのが、対応側としても過去の回答を流用し、
問い合わせの工数を削減できたことだと思います。
また、増員していたタイミングだったので、新入社員向けのいいタスクにもなりました。
- 回答時間の短縮
- エンドユーザーの自己解決
- 新入社員がSharePoint記事を作成することで業務理解にもつながる
4.AIを活用した1次対応の自動化を狙ったが利用数が0回に
回答が資産化され、問い合わせは記事のリンクを送るだけになったため、
対応の効率化や、新人もすぐに問い合わせ対応ができるようになったりと、様々なメリットがありました。
その一方で、効率化できたといっても、対応工数は依然として発生しています。
理想は問い合わせの対応工数そのものをなくすことなので、
それまでに蓄積していたSharePoint記事をナレッジベースとして活用し、
当時リリースされたばかりのCopilotエージェントビルダーを使って、1次対応の自動化に取り組みました。
■やったこと
- SharePointをナレッジとして、AIエージェントを作成
■効果
- リリースして数か月後には利用回数が0回に
- 数名のヒアリング実施をしたが、ほぼ誰も知らない
ある程度予想はしておりましたが、盛大にずっこけました。。
しかも利用回数に関しては1回もなくなり、ただ作っただけになってしまいました。
5.Copilot Studioを使った今後の展望
このまま従来の運用を継続した場合、問い合わせ対応は属人化したままとなり、自動化は進まないと考えました。
そこで、AIによる一次対応の実現に向けて、現状の課題を整理しました。
■課題
① 問い合わせFormsに偏っており、AIエージェントが認知されていない
AIエージェントの機能以前に、存在自体が十分に知られていませんでした。
② 「人に聞く」文化が根強く残っている
利便性よりも従来の行動が優先される傾向があり、利用促進の障壁となっています。
③ ナレッジと機能が不足している
ナレッジ記事は約30件あるものの、解決できない問い合わせも多く残っています。
また、AIで解決できなかった場合に再度人へ同じ説明が必要になるため、
最初から人に問い合わせた方が良い、という判断につながる懸念があります。
■解決策
特に③の問題は①②にも大きく影響すると考えています。
解決できない体験が続くと、認知されても使われず、結果として「人に聞く」に戻ってしまいます。
こうした課題に対し、Copilot Studioのリリースをきっかけに、解決の方向性が見えてきました。
Copilotエージェントビルダーにはない機能を活用し、運用の見直しを進めています。
①問い合わせ導線の一本化
Formsを廃止し、問い合わせの入口をCopilot Studioに統一することで、
AI利用を前提とした導線に変更します。
いきなり変更するのはリスクがあるため、まずは並行稼働し徐々に一本化することにしました。
②継続的な利用啓発
短期間で文化を変えることは難しいため、シンプルな周知と草の根的な発信を継続していきます。
③解決率を高める仕組みの整備
不足しているナレッジの補完と、エスカレーションの仕組みを整備します。
ナレッジはシンプルに増やしていくだけで、
エスカレーションの仕組みに関してはCopilot Studioのワークフローの機能を利用することで、
これまでユーザーが対話していた内容も併せてエスカレーションすることができます。
▼これまでのフロー
AIに問合せ ⇒ 解決しない
⇒ エンドユーザーがFormsでまた問い合わせる or 説明が面倒なので直接問い合わせる
▼新しいフロー
AIに問合せ ⇒ 解決しない
⇒ AIが問い合わせ内容をまとめ、Teamsを作り、人へエスカレーション
まだ、導入して間もないので十分な計測ができておりません。
しばらくしたら、また課題など見えてくると思うので、記事を投稿しようと思います。
6. まとめ
問い合わせ対応は頑張る人を増やすより、仕組み化(入口統一→見える化→ナレッジ)するだけで、だいぶ楽になりました。
そして、さらに効率化するためにAIの活用をしていきましたが、精度はもちろん、運用改善をしないと結局使われません。
今回の課題は、ナレッジの少なさ、認知、人に聞く文化、だったので運用フローを整備して、
今後はヘルプデスクの業務効率化はもちろん、ユーザー側の利便性も向上できるような開発を進めていけたらと思いました。
お断り
この記事は筆者の個人的な経験や考えに基づいて書いています。所属組織の公式な意見や方針とは関係ありませんのでご了承ください。