今年もAdventCalendarの季節がやってきました。
20日目、魚の大罪司教 giiita です。
去年のAdventCalendarでは 全ての台所へ贈る浸透圧 をお贈りしました。
さて、今年も浸透圧に関連したお話を。
冬といったら何を思い浮かべますか?
そう、ボラ子ですね。これを食べないことには冬は越せません。
カニ、フグ、アンコウ、寒ヒラメ、寒ぶり、車海老、アオリイカ、etc...
食べなきゃいけないものが多すぎて本当に毎年忙しい...まるでこの一年を海が労ってくれているかのようなラインナップで、痛風の歯止めが効きません。
そんな中、片手間でできるカラスミを作らない手はありません。
安くなってくると都内スーパーなどでは小売されるそうです。(みたことないぞ)
今回はhenryの勇敢な仲間たちと割り勘でボラ子を入手しました。これで年末年始に向けてカラスミを作っていきます。
血抜き
ボラ子はすじこのように薄い幕で覆われており、そこには血管がそりゃもう細かく走っており、こいつを綺麗にしてやります。
どこまでやるか決まっているわけではないので別にやらなくても大丈夫。でもせっかくなら極上のカラスミを作りたい!という人は全部取ってやりましょう。
まち針などでプツッと血管に注射を打つイメージでうっすら刺し、硬貨などで穴を開けた方向になぞると、血液が固まっていなければ面白いように血が抜けます。絶対に膜を破ってはいけません!
コツ
- 必ず氷水に漬けながら
- 血抜きに使う道具は殺菌しよう
- 細い針なら膜を完全に突き破っても大丈夫。重要なのは、刺してから押し広げない事。刺したら同じ角度でひき抜く。1突き程度では流出しない
- 注射のように、血管の流れる方向にならうように針を刺す。極細の毛細血管は、横・真上からの差し込みではなかなか捉えられないかも。
- 血が固まっている場合はしばらく氷水につけておく
これを好きなだけ繰り返します。そりゃもう大変です。カラスミ作りで一番大変な作業です。
ここまでやれば完璧です。血液凝固が進んでいる場合、血を溶け出させるために氷水に漬け置いたりしますが、今回は状態が良さそうだったのでスキップしました。
塩漬け
好きなだけ血を抜いたら次は塩蔵です。これによって腐敗の元となる水分を抜き、殺菌します。
そう、浸透圧で殴り倒すのです。基本的にはカッチカチになるまで抜きます。
塩蔵はものすごい殺菌作用があり、フグ毒ですらも無毒化できます。そのためこの工程で漬け込みが甘いとその後の状態管理が難しくなるので塩はケチらずしっかり漬けましょう。
コツ
- 序盤は大量の水分が出るので、ざっくりで。ある程度水が出たら塩に埋める
- へそ(ボラの身の部分)やボラ子の股の部分までしっかり塩を当てる
- 前述の通り、塩は生臭くなりますが、塩の中は殺菌作用があるので、ちゃんと使いまわせる。その後の浸透圧のお供に
- ちなみに、にがりの多い塩でつけるとphの関係で仕上がりが黒くなりやすいとかなんとか...?という説もある。別に売るわけじゃないから気にしないけどね
※今回は時間もないので長期保存しないであろう分は塩蔵一日で切り上げました。年末に間に合わせたいというのが半分
塩抜き
さて、一日の塩蔵でもしっかり水分が抜け、ぶよぶよだったボラ子は餅くらいの弾力になりました。
今度は塩気を抜きつつ酒で戻していきます。
コツ
- 酒はなんでもいい。人によって全然違う酒で戻すので正解はない。安いボトル焼酎からめちゃめちゃ高い日本酒で戻す人まで千差万別。ただし甘口の日本酒は塩気が抜けるのに時間がかかるようなので注意
- カッチカチに塩漬けした個体は、呼び塩(弱塩水)で一日前後塩抜き後、コリがなくなるくらいまで酒につける
干し
さて、あれから3日ほど経ちました。長期保存用はまだ塩の中で眠ってますが、年末用の酒戻しの進捗を確認します。
ホルマリン感ありますね。残念ながら上の方は狭そうだったからか、まだ凝ってたので追い戻しします。
酒塩がキツいようなら酒も入れ変えようかと思ったものの、後続とのタイミングの兼ね合いもあり、舐めてみてもそこまで塩気強い感じでもなかったのでそのままにしました。
下の方はぶよんぶよんでいい感じに塩が抜けたようです。
今日は雲が多かったので、外干しするにはちょっと微妙な天気だったものの、さすがは冬。湿度が低くてあっという間に乾きます。
前回イサキの子でカラスミを作った時は夏の終わりだったので、塩&酒に漬けたとは言え爆速で腐りそうだったこともあり、冷蔵庫で乾燥しましたが、それよりもだいぶ早く乾きますね。
ここからは毎日出し入れするので、日々様子を見ていきます。
コツ
- 股をしっかり開いて干す
- 皮がパリパリに干からびてしまうので、一日1~2回は酒を霧吹きで吹く
- あまり急速に乾くようならオリーブオイルとか、できれば酸化に強い椿油とかを薄く塗る
- 夜間は結露しないよう涼しい室内か冷蔵庫へ
- 室内保管の時は軽い重石を乗せて整形する
1日目
まだ表面はもっちり感があり、重石がぺたっとくっつく感じです。
2日目
表面は乾燥して脂が滲んできました。
ボラ身のハムもうまそうになってきた
ちょっと皺がよってますが、これは重石で張るようにすれば多少治ります。
こればかりは個体差なのである程度はばらつきます。
3日目
今日から2本目も追加で干しに入りました。
そして悲しいことに吊り場所を変えようとした際干し網を落としてしまい、皮が両方裂けてしまった...
中は両方まだ柔らかいのでこれ以上重石は使えなくなりました...とほほ
こう見ると2日の差で追分メイラード化しましたね。2週間も干した頃には真っ黒になるかも
左はずいぶん型の悪い子だ...
4日目
なんとか破れたところが乾いてきた...
もう酒気もだいぶ飛んでカラスミらしい香りがするようになってきました。
ソフトカラスミとしてはもう食べれますね
さて、保存用も1週間たってパッキパキになったので塩抜きに移行します。
5日目
うまそうすぎてここから先は自分との戦い
6日目
メイラード反応も大体落ち着きました。
あとは硬さの問題のみ
7日目
だいぶ固くなってきましたが芯はまだちょっと柔らかい
ここまで来るとなかなか毎日変わり映えがなく、もう食ってもいいだろ感でてきます。
8日目
序盤に落っことして避けてしまった部分が乾燥してヒビ割れてきました。
これは致し方ない...避けた部分を切除する手術を行います。メス...
まだ若干若い感じですが、尿酸値が上がってゆくのを感じる...
まとめ
さて、これでみんな来年から血眼でボラ子を探すことになるのではないかと思いますが、値段を見てびっくり諦めないでください。状態にもよりますが1kg10,000円ならかなり安いと覚えておいておくといいかと思います。
1kg=4腹と仮定して、1腹2,500円ですが、売りに出したらまともなカラスミなら1腹5,000円じゃ買えません。
時間はかかりますが、買うくらいなら作り置きした方が遥かに安く仕上がります。ダース買いでもいいレベル!
え?全然仕事と関係のない話じゃないかって?
こうして自身の尿酸値を上げ、病院の稼働率に貢献してゆくのです。
食べ過ぎにはご注意を...