はじめに
「産後パパ育休1、取れるようになったし、休業中も少し働けるらしい。収入の足しになるし、一石二鳥だな!」
2022年10月から始まった新制度を利用しようと考えたとき、私もそう思っていました。
しかし、ある一点を見落としたまま計画を立てた結果、もらえるはずだった約10万円の給付金が0円になるという事実に直面したのです。
この記事は、私と同じ失敗をする人を一人でも減らすための実録です。
結論:この記事で一番伝えたいこと
産後パパ育休中に働くことを検討する前に、まずこの事実を知ってください。
【衝撃の時給換算】
私のケースでは、26時間働いて増えた手取り額は約2万円でした。
これを時給に換算すると、約760円です。
これは、得た給与(11.7万円)の分だけ給付金が減額調整された結果であり、給与がそのまま上乗せされるわけではないのです。
この制度は 「給与と給付金を合わせて、休業前賃金の80%程度になるように自動調整される」 仕組みです。
給付金だけでもらえる約67%の水準から、働くことで80%の水準まで収入を補填することはできますが、「給与+給付金満額」で収入が1.5倍になるような制度ではありません。
したがって、休業中に働くかどうかは、
「実質時給760円の労働と、家族と過ごすかけがえのない時間、どちらを選ぶか」 という視点で判断すべき、というのが私の結論です。
1. 制度の基本と「落とし穴」
制度の基本はシンプルです。
- 期間: 子の出生後8週間以内に、最大4週間(28日)まで。
- 分割: 2回に分けて取得可能。
- 就業: 労使協定があれば、休業中に働ける。
そして、落とし穴は「就業」のルールにあります。
項目 | 上限ルール | 私がハマった罠 |
---|---|---|
① 就業日数・時間 | 休業期間中の所定労働日数・時間の半分まで | こちらはクリアしていました ✅ |
② 就業による給与額 | 休業前の賃金 × 休業日数の80% | この上限を超過していました ❌ |
多くの人が①の時間ルールは知っていますが、給付金の支給判定には②の「給与額」が決定的に重要なのです。
2.【実録】給付金0円までの計算シミュレーション
私が愕然とした計算過程を、モデルケースとして再現します。
【前提条件】
- 育休開始前の月収:約38万円
- 休業期間:12日間
- 休業中の就業計画:時給4,500円で合計31時間
Step 1: 自分の「賃金日額」を算出する
(月収380,000円 × 6ヶ月) ÷ 180日 = 12,666円/日
休業開始時賃金日額とは?
原則として、育児休業開始前6か月間の賃金を180で割った額です。正確な金額は賃金台帳などをご確認ください。Step 2: 運命の分かれ道…支給上限ラインの算出
(賃金日額 12,666円 × 休業日数 12日) × 80% = 121,593円
休業中の稼ぎが 121,593円 を超えると、給付金は0円になります。
Step 3: 計画との比較、そして絶望へ
時給4,500円 × 31時間 = 139,500円
【判定結果】
計画給与額(139,500円)が、支給上限ライン(121,593円)を 17,907円超過。この結果、給付金は全額不支給となりました。
3.【重要】収入比較で見る制度のホントのところ
3つのパターンで最終的な手取り総額を比較すると、制度の本質がよく分かります。
働き方のパターン | ① 休業中の給与 | ② 支給される給付金 | ③ 手取り総額 (①+②) |
---|---|---|---|
A. 全く働かない | 0円 | 約101,834円 | 約101,834円 |
B. 賢く働く (26h) | 117,000円 | 約4,593円 | 約121,593円 |
C. 働きすぎる (31h) | 139,500円 | 0円 | 139,500円 |
補足:「全く働かない」場合の給付金はどう計算する?
「A. 全く働かない」場合の給付金(約101,834円)は、**「休業前の賃金(休業期間分)の67%」**として計算されます。
Step 1: 基準額の算出
まず、休業前の賃金が休業期間(12日)でいくらになるかを計算します。
賃金日額 12,666円 × 休業日数 12日 = 151,992円
Step 2: 給付率(67%)を掛ける
次に、上記の基準額に法律で定められた給付率67%を掛けます。
基準額 151,992円 × 67% = 101,834.64円
これが、全く働かなかった場合に満額支給される給付金額となります。
この表が示す通り、26時間働いて増えた手取りは、全く働かなかった場合と比較して、たったの約2万円です。これが、冒頭で述べた「実質時給 約760円」の根拠です。
4. まとめ:同じ失敗をしないためのToDoリスト
産後パパ育休は、家族にとって非常に価値のある制度です。その恩恵を最大限に活用するため、休業前に必ず以下のチェックリストを確認してください。
- 自分の賃金日額を把握する
- 休業予定日数から「給付金の支給上限ライン(休業前賃金の80%)」を計算する
- 休業中の就業計画(得られる給与額)が上限を超えないか確認する
- 働く場合、それによって増える手取り額(実質時給)と、失われる時間の価値を天秤にかける
- 少しでも不安があれば、会社の労務担当者やハローワークに相談する
この記事が、これから育休を取得するあなたの助けとなり、家族との貴重な時間を安心して過ごすための一助となれば幸いです。
-
正式名称は「出生時育気休業」です。子の出生後8週間以内に4週間まで取得できます。 ↩