なぜDockerを使うのか?開発環境構築でDockerを使う理由を整理する
Webアプリケーションを開発するとき、開発環境の作り方にはいくつかの選択肢があります。
たとえば、LaravelやNext.jsを使う場合、自分のPCに直接PHP、Composer、Node.js、MySQLなどをインストールして開発する方法があります。
一方で、Dockerを使って、PHPやNode.js、MySQLなどをコンテナとして立ち上げる方法もあります。
この記事では、Dockerを使う理由について、実務目線で整理します。
Dockerとは何か
Dockerは、アプリケーションを動かすために必要な環境を「コンテナ」という単位で管理できる仕組みです。
たとえば、LaravelとNext.jsを使う場合、以下のような環境が必要になります。
- PHP
- Composer
- Node.js
- npm
- MySQL
- Nginx
Dockerを使わない場合、これらを自分のPCに直接インストールする必要があります。
一方でDockerを使うと、これらの環境をPC本体ではなく、コンテナの中に用意できます。
イメージとしては、アプリケーションごとに専用の作業部屋を作るようなものです。
Dockerを使わない場合の環境構築
Dockerを使わない場合は、自分のPCに直接必要なソフトウェアをインストールします。
たとえばWindows PCでLaravelとNext.jsを開発する場合、次のようなものを入れることになります。
- Node.js
- PHP
- Composer
- MySQL
- Nginx
この方法はシンプルです。
特に一人で開発する場合や、学習初期の段階では、直接インストールしたほうが理解しやすいこともあります。
ただし、プロジェクトが増えてくると、次のような問題が起きやすくなります。
- プロジェクトAではNode.js 18が必要
- プロジェクトBではNode.js 20が必要
- 古いLaravel案件ではPHP 7.4が必要
- 新しいLaravel案件ではPHP 8.2が必要
このように、プロジェクトごとに必要なバージョンが違う場合、PCの中で環境が混ざりやすくなります。
Dockerを使う理由
Dockerを使う一番大きな理由は、開発環境を安定して再現しやすくするためです。
具体的には、次のようなメリットがあります。
1. PC本体の環境を汚しにくい
Dockerを使うと、PHPやMySQL、NginxなどをPC本体に直接入れずに済みます。
必要なソフトウェアはコンテナの中に用意されます。
そのため、PC本体にはできるだけ余計なものを入れず、開発環境を整理しやすくなります。
たとえば、プロジェクトが不要になった場合でも、Dockerのコンテナやイメージを削除すれば、関連する環境をまとめて片付けやすくなります。
もちろん、Docker DesktopやWSL2、Dockerのイメージやボリューム自体はPCに残ります。
そのため、「完全に何も残らない」というわけではありません。
ただ、PHPやMySQLなどを個別にインストールして管理するよりは、PC本体の環境をクリーンに保ちやすいです。
2. プロジェクトごとに環境を分けられる
Web制作やシステム開発では、案件ごとに必要な環境が違うことがあります。
たとえば、以下のようなケースです。
- A案件:PHP 8.2 / MySQL 8.0 / Node.js 20
- B案件:PHP 7.4 / MySQL 5.7 / Node.js 16
- C案件:Next.jsのみ
Dockerを使うと、プロジェクトごとに必要な環境をコンテナとして分けられます。
そのため、ある案件のPHPバージョンを変更したことで、別の案件が動かなくなるといった問題を減らせます。
これは複数案件を扱う場合にかなり大きなメリットです。
3. Windowsと本番Linuxの差を減らせる
本番サーバーはUbuntuなどのLinuxであることが多いです。
一方で、開発PCはWindowsやMacの場合が大半です。
Windowsで直接開発していると、次のような違いによって、本番環境でエラーが起きることがあります。
- ファイルパスの違い
- 大文字・小文字の扱い
- PHP拡張モジュールの違い
- Node.jsやPHPのバージョン差
- MySQLの設定差
特にWindowsでは、ファイル名の大文字・小文字をあまり意識しなくても動くことがあります。
しかしLinuxでは大文字・小文字が厳密に区別されます。
そのため、ローカルでは動いていたのに、本番サーバーにアップしたら動かないということがあります。
Dockerを使えば、Windows上でもLinuxに近い環境を用意できます。
これにより、OSやミドルウェアの違いによるトラブルを減らせます。
ただし、Dockerを使えば本番トラブルが完全になくなるわけではありません。
本番環境では、以下のような別の問題も発生します。
- .envの設定
- ドメイン設定
- SSL設定
- Nginx設定
- ファイル権限
- メール送信設定
- DB接続情報
- キャッシュ
- cronやqueueの設定
Dockerはあくまで、開発環境と本番環境の差を減らすための手段です。
4. 環境構築の手順を共有しやすい
Dockerを使うと、環境構築の内容をファイルとして管理できます。
代表的なものが以下です。
- Dockerfile
- docker-compose.yml
これらのファイルに、必要な環境や起動方法を書いておけば、他の開発者も同じような環境を作りやすくなります。
つまり、「このファイルに書かれた内容をもとに環境を立ち上げる」という流れを作れるため、手作業でPHPやMySQLをインストールしていくより、環境構築の手順を標準化しやすくなります。
もちろん、実際には.envの作成やDB初期化、マイグレーションなども必要になることがあります。
それでも、環境構築の流れをファイルとして残せる点は大きなメリットです。
5. PCの買い替えや故障時に復旧しやすい
PCを買い替えたり、故障したりした場合、開発環境を最初から作り直す必要があります。
Dockerを使っていない場合、次のような作業が必要になります。
- PHPをインストール
- Composerをインストール
- Node.jsをインストール
- MySQLをインストール
- Nginxをインストール
- 環境変数を設定
- 各種バージョンを合わせる
これらを一つひとつ再設定するのは大変です。
Dockerを使っていれば、プロジェクト側にDockerfileやdocker-compose.ymlが残っているため、環境を再現しやすくなります。
新しいPCにDockerを入れて、プロジェクトを取得し、必要な初期設定を行えば、開発環境を復旧しやすいです。
6. 本番環境へのデプロイを考えやすくなる
Dockerを使うと、本番環境へのデプロイも考えやすくなります。
よく「Dockerはそのまま本番に上げられる」と言われることがあります。
これは、開発環境のファイルをそのままFTPでアップすればよいという意味ではありません。
正確には、Dockerで定義した実行環境を本番側でも再現しやすいという意味です。
通常、本番サーバーに直接環境を作る場合は、サーバーにPHP、Node.js、Composer、MySQL、Nginxなどをインストールして設定する必要があります。
Dockerを使う場合は、アプリケーションの実行環境をコンテナとしてまとめることができます。
そのため、本番サーバー側でDockerが動く環境を用意しさえすれば、コンテナを起動することにより、容易に本番サーバーにプロジェクトをデプロイすることができます。
ただし、本番運用では以下のような知識も必要です。
- Dockerイメージのビルド
- コンテナの起動・停止
- ログ確認
- ボリューム管理
- DBの永続化
- バックアップ
- SSL設定
- リバースプロキシ設定
- 環境変数管理
そのため、Dockerを使えば本番運用が自動的に簡単になるわけではありません。
むしろ、本番運用の考え方がDocker前提に変わります。
Dockerを使うデメリット
Dockerにはメリットが多いですが、デメリットもあります。
1. 学習コストがある
Dockerを使うには、次のような概念を理解する必要があります。
- コンテナ
- イメージ
- Dockerfile
- docker-compose.yml
- ボリューム
- ポート
- ネットワーク
最初は少しわかりにくいです。
特に、LaravelやNext.js自体の学習も同時に進めている場合、Dockerまで覚えると負担が大きくなることがあります。
2. トラブルの原因が増える
Dockerを使うと、アプリケーションそのもののエラーに加えて、Docker側のトラブルも発生します。
たとえば、以下のような問題です。
- コンテナが起動しない
- ポートが競合する
- ボリュームの中身が古い
- ファイルの権限がおかしい
- MySQLコンテナに接続できない
Dockerを使わない場合より、見るべき範囲が増えることがあります。
3. 小規模な一人開発では大げさな場合もある
小さな静的サイトや、シンプルなWordPress案件などでは、Dockerを使うよりも直接環境を用意したほうが早い場合があります。
また、一人開発で環境差をあまり気にしなくてよい場合、Dockerの導入コストのほうが大きく感じることもあります。
Dockerは便利ですが、すべての開発で必須というわけではありません。
Dockerを使ったほうがよいケース
Dockerが向いているのは、次のようなケースです。
- 複数人で開発する
- WindowsとLinuxの差を減らしたい
- PHPやNode.jsのバージョンを案件ごとに分けたい
- Laravel + Next.js + MySQLのように構成が複数ある
- 本番環境に近い状態で開発したい
- 長期的に保守する予定がある
このような場合は、Dockerを使うメリットが大きいです。
Dockerを使わなくてもよいケース
逆に、次のような場合は無理にDockerを使わなくてもよいと思います。
- 学習初期でまずアプリを作ることを優先したい
- 開発者が一人だけ
- 小規模なサイト制作
- 本番環境の構成がシンプル
- 直接インストールした環境を自分で管理できる
Dockerを使うこと自体が目的になってしまうと、本来作りたいものの開発が進まなくなることもあります。
そのため、プロジェクトの規模や目的に合わせて判断することが大切です。
まとめ
Dockerを使う、主な理由は以下の通りです。
- PC本体の環境を汚しにくい
- プロジェクトごとに環境を分けられる
- WindowsとLinuxの差を減らせる
- 環境構築の手順を共有しやすい
- PCの買い替えや故障時に復旧しやすい
- 本番環境へのデプロイを考えやすくなる
ただし、Dockerを使えばすべてが楽になるわけではありません。
Docker自体の学習コストもありますし、Docker特有のトラブルもあります。
重要なのは、Dockerを使うかどうかではなく、開発環境を再現しやすく、管理しやすい状態にすることです。
一人開発や小規模案件では直接環境構築でも問題ありません。
一方で、複数人開発や長期運用、Laravel + Next.js + MySQLのような構成では、Dockerを使うメリットは大きいです。
Dockerは「必ず使うべきもの」ではなく、「環境差を減らし、開発環境を安定させるための選択肢」として考えるのがよいと思います。