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AIによって最初に消え始めた職業、エンジニアとして生き残るために考えたこと

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Last updated at Posted at 2026-05-09

はじめに

10年前、「AIに消される職業」の話がすごく流行りました。きっかけはオックスフォード大学のFrey & Osborne(2013)の論文です。米国の仕事の47%が自動化リスクにさらされるという内容でした。消える候補にはトラック運転手や事務職、テレマーケターが並んでいました。一方、エンジニアは「安全な職業」の代表格でした。

2026年の今、エンジニアの雇用が大規模に縮小しています。

エンジニアとして生き残るために何をすべきか、考えてみました。


1. 10年前の予測は完全に外れた

1-1. 「消える」はずだった職業

オックスフォード研究で高リスクとされた職業は物流、運輸、事務、小売です。「自動運転でトラック運転手300万人が失業する」といった話がたくさんありました。

エンジニアリングや創造性を必要とする職業は「安全」に分類されていました。シリコンバレーは「最も自動化されにくい地域」とされていたほどです。

1-2. 実際に起きたこと

トラック運転手は消えませんでした。自動運転は2026年でもまだ限定的です。

代わりに縮小したのはソフトウェアエンジニアの雇用でした。

  • 米国プログラマー雇用、2023〜2025年で27.5%減(IEEE Spectrum)
  • SWE求人、コロナ前比49%減(Indeed Hiring Lab)
  • テック全体でも36%減。AI求人の急増を含めても総量は縮小

Kelly Servicesの幹部が「コールセンターが最も脆弱だと予想されていたが、最大の影響はプログラマーに出た。誰も予測していなかった」と述べています。

予測は完全に逆でした。


2. なぜエンジニアが「最初」なのか

「他の業種も同じでは?」と疑問に思い、他業種の雇用縮小と比較すると、IT業界とは全く構造が違いました。

2-1. カスタマーサポート:DXの延長

カスタマーサポートは、自動音声応答など、DXによる自動化が、10年以上も前から進んでいました。

2025年のGartner調査(321社のCS責任者対象)では、AIを理由に人員を減らした企業はわずか20%でした。BLS予測でも今後10年の減少幅は5%です。SWEが2年で49%減少した速度とは桁が違います。

Klarnaは2,300人から1,600人に削減しましたが、品質が低下して人間を再雇用する方向に戻りました。人間にしか出来ない臨機応変な対応に価値があるのです。

そもそもCSは派遣市場で流動性が高く、縮小しても派遣先が変わるだけなので、社会的インパクトも小さいです。

2-2. 塾講師・英会話:人間に教わること自体に価値がある

McKinsey調査では、教師が生徒と直接関わる領域はテクノロジーの影響を最も受けにくいとされています。

将棋が良い例です。AIが棋士より強くなって10年経ちますが、プロ棋士は消えていません。最善手を知りたいならAI同士に指させればいい。でも人間は間違える。間違えるから罠を張る。「あなたならどう指しますか?」という面白さは人間同士でしか生まれません。

教育も似ているとおもいます。20年以上前からググれば答えが分かるようになりましたが、人から教わる価値は消えていません。AIに聞ける時代でも、人から教わる価値は残ると思います。

実際、大量レイオフの事例もほぼありません。

2-3. 金融:結局、営業職

金融は一見AIと相性が良さそうです。分析やリスク計算はAIに任せられます。しかし、バンカーや証券マンの仕事の本質は営業です。顧客との信頼関係、最終的な融資判断など、責任を取る行為は残ります。

「ウォール街で20万人削減」という予測はありますが、3〜5年先の話です。SWEの49%減は既に起きた事実です。10年前の予測も外れたので、本当に起きるかは不明です。

2-4. エンジニアだけが満たす条件

他業種との比較で、エンジニアが最初に縮小する条件が見えてきました。

  • 成果物がコードなので、AIの出力がそのまま最終成果物になる
  • 「人間が作った」ことに誰も価値を見出さない。動くかどうかだけが問われる
  • 従事者が世界で数千万人規模
  • 1人のシニアがAIで10人分を回せる。残り9人のポジションが消える

カスタマーサポートは「AIが補助して、人が仕上げる」構造です。教育は「人間に教わる体験」自体が商品です。金融は「信頼関係と責任」が残ります。エンジニアだけが「AIの出力が完成品」となり、かつ「人間であることに付加価値がない」という条件を満たしています。だから最初に、しかも急速に雇用が縮小し始めたのだと思います。


3. レイオフの実態

3-1. 数字

  • 2026年、テック企業で128,270人がレイオフ。1日1,002人ペース(Layoffs.fyi)
  • 2025年、AI直接起因の削減55,000人
  • AI/ML求人は340%増だが、従来型SWE求人は49%減。増えた分では減った分をカバーできない

「AI求人が増えているからスキルチェンジすれば大丈夫」という見方もありますが、総量として明確に減っています。AI求人の母数が小さいからです。

3-2. 象徴的な事例

Block(Square/Cash App):10,000人から6,000人未満に削減。CEOのジャック・ドーシーが「財務上の困難ではなく、AIツールの能力向上が理由」と明言しました。

Salesforce:2026年度にエンジニアの新規採用をゼロにしました。AIコーディングエージェントで必要なキャパシティをまかなったとCEOのベニオフが述べています。

Amazon:ジャシーCEOが「5人のエンジニアがエージェントコーディングツールを使い、以前なら40〜50人で1年かかったサービスを65日で再構築した」と発言しました。

Meta:8,000人削減(全体の10%)に加えて6,000の未充填ポジションをクローズしました。


4. 国策の皮肉

4-1. 増やした人材が出る頃には職がない

日本では「デジタル人材76万人不足」(経産省)を受けて情報系学部の新設・定員増が相次ぎました。2025年度から大学入試共通テストに「情報」が追加されています。国を挙げて「エンジニアを増やせ」と号令をかけた時期です。

そうやって増やした学生たちが社会に出るのは2028〜2029年頃です。

4-2. アメリカも同じ

米国でもCS学部の入学者は2023-2024年に前年比9.9%増でした。大学が施設を建て、教員を雇い、入学制限をかけるほどの人気です。ミシガン大学ではCS学位授与数が2012年の132人から2022年に600人へ急増しています。

ところが2025-2026年度、CS系学部の62%で入学者数が減少に転じました。40%、50%、75%減という報告もあります。原因は労働市場への不安とAIへの懸念です。

CS新卒の失業率は6.1%です。哲学専攻は3.2%、美術史は3%。「コードを学べ」と言われてきた専攻より、哲学や美術史の方が就職できています。

4-3. 最悪のタイミング

2022〜2023年は「ChatGPTすごい→AI時代→エンジニア最強→CS学部に行こう」という流れが最も加速した時期でした。AIがエンジニア需要を増やすと思って入学した学生を、そのAIが職から弾き出しています。

大学の構造上、カリキュラム変更には数年かかります。教授を雇ったら簡単には辞めさせられません。建てた校舎は残ります。市場が「ジュニアSWEは要らない」と言っていても、大学は定員拡大を続けるしかありません。

18歳に4年後の労働市場を読めというのは無理です。変化の速度が人間の意思決定サイクルを超えた構造的な問題だと思います。

ただ、情報を学ぶこと自体は無駄になりません。AIを使いこなす力やデータを読む力はどの職業でも武器になります。「情報学部に4年通ってSWEになる」という前提だけが崩れました。


5. 脳死でAIにプロンプトを投げると破綻する

5-1. データが示す技術的負債の爆発

AIが書いたコードをそのまま本番に入れ続けた結果のデータが出ています。

  • Ox Securityが300以上のリポジトリを分析した結果、AI生成コードの80〜100%に不完全なエラーハンドリング、弱い並行処理、一貫性のないアーキテクチャなどのアンチパターンが存在
  • 管理されていないAI生成コードは2年目にメンテナンスコストが従来の4倍に膨張(Codebridge)
  • Forrester予測で2026年、技術リーダーの75%が中〜深刻な技術的負債に直面
  • GitClear分析でコード重複が8倍に増加。リファクタリングは大幅に減少

研究者たちはAIを「監督のいない優秀なジュニアの軍団」と表現しています。ただし、これはあくまで現時点での結果に過ぎず、1年後には大きく状況が変わっても不思議では無いです。特にハーネスという解決の糸口が見えている以上、まだまだAIは使い物にならないという楽観的な見方は危険です。

5-2. 速く書けることはボトルネックではなかった

AIコーディングツールは2026年の全商用コードの41%を生成しています。速度はかつてないほど上がりました。にもかかわらず、経験豊富な開発者の19%がAIツール使用時に生産性が低下したと報告しています(Stack Overflow)。

コードを書くこと自体はもともとボトルネックではありませんでした。コードを理解すること、デバッグすること、自分が書いていないコードを修正すること。これらが本当のボトルネックです。AIは速い部分をさらに速くしただけで、遅い部分はそのまま残っています。

5-3. 先を見据えた設計は人間にしかできない

AIは目の前のタスクを解くのは得意です。しかし全体のアーキテクチャが先を見据えた正しい設計かどうかは判断できません。個々のチケットを解決するコードは書ける。半年後にスケールするか、他の機能と整合するか、技術的負債にならないか。全体をみて人間が判断するしかありません。

脳死でプロンプトを投げ続けると、個々のパーツは動くけど全体として破綻するシステムができあがります。しかもAIで個々のタスクが高速に片付く分、設計判断のミスは以前より速く蓄積します。

Codebridgeの記事にこう書かれていました。「AIの出力をファーストドラフトとして扱い、レビューとリファクタリングを行うチームは速度と持続性を両立できる。AIコードをそのまま本番に入れるチームは、2027年にキャリア史上最も高額なリライトをすることになる」。


6. では誰が生き残るのか

6-1. 技術 vs マネジメントではない

生き残る人の共通点は「技術力があるか」でも「マネジメントができるか」でもないと思いました。

仕事を正しく定義できるかどうか。分岐点はそこだと思っています。

技術側なら、自分で課題を見つけてOSSとして解決策を作れるような開発者。マネジメント側なら、顧客の課題を見抜いてタスクを設計してレビューできるPL/PM。どちらも「何を作るべきか」を自分で判断しています。

逆に、どちらの側でも指示待ちは危ないです。言われた通りに実装する技術者も、案件を右から左に流すだけのマネージャーも、AIで代替できます。

6-2. PM力は意外と活きる

マネジメントをちゃんとやってきた人は、AIエージェント管理に必要なスキルをほぼ持っています。

  • 大きなタスクを適切な粒度に分解する
  • 曖昧な仕様を明確な指示に変換する
  • 成果物の品質をレビューして判断する
  • 進捗を管理してボトルネックを見つける

相手が人間からAIに変わるだけで、マネジメントの本質は同じです。対人スキルが高い人は顧客側にも回れます。技術の中身がわかってAIで実現可能性を判断できて、かつ顧客と話せる人材が一番価値を持つと思います。

6-3. 一番危ないポジション

一番危ないのは「技術力はあるが指示待ち」の人です。

コードが書けても、自分で判断しない人はAIと同じポジションにいます。しかもAIの方が速い。技術力の高さが安心材料になって危機感を持ちにくいのも厄介です。

6-4. 「正しく」定義する

仕事を定義するだけなら誰でもできます。大事なのは「正しく」定義することです。

  • 顧客やユーザーの本当の課題を見抜く力
  • 技術的な実現可能性を判断する力
  • 優先度をつけて捨てる判断ができる力
  • 先を見据えたアーキテクチャかどうかを評価する力

これらは経験と判断力の積み重ねでしか身につきません。AIが最も代替しにくい部分です。

いくらマネージドハーネスが良くなっても、最後はプロンプトの質です。正しく指示しないと、先を見据えていないアーキテクチャになって破綻します。設計を評価して、「この方向は違う」と却下できる人。AIの出力速度が上がるほど、その判断の価値は上がり続けます。


7. SIerにいるなら

7-1. 人月モデルの崩壊

SIerのビジネスモデルの本質は「人月×単価」です。エンジニアの頭数がそのまま売上になる構造です。AIで1人が10人分の出力を出せるなら、クライアント側は「なぜ10人月分払うのか」と言い出します。発注側もAIを使い始めるので、見積もりの妥当性が丸裸になります。

7-2. 大手SIerの活路

ただ、大手SIerにはアドバンテージもあります。大規模な顧客基盤と信頼関係があります。上流に入れるポジションがあります。複数ドメインの業務知識が社内に蓄積されています。

今まで下請けに出していた実装をAIに置き換えれば、人件費がそのまま利益になります。社内のエンジニアが「上流+AI活用で全部回す」人材に転換できれば、利益率は上がる可能性すらあります。

一方で中小SIの優秀な数人がAIを使って直接クライアントを取りに来る動きも出てきます。大手の看板で守られていた参入障壁は下がります。

7-3. SIerのパラドックス

SIerで生き残れる人材像は「一人で全部やれる人」です。上流で顧客対面して価値を出すか、最強の技術力でAIをハーネスして指揮するか。できれば両方の力が必要です。

しかしSIerは「分業して頭数で売る」モデルです。生き残れる人材になるほどSIerにいる理由がなくなる。大手SIerにいるなら、社内で時流に乗れるポジションを早めに取りに行くべきだと思います。


8. 市場はずっと答えを出していた

「技術こそ正義」はエンジニアコミュニティの中の価値観でした。

しかし現実の給与体系を見ると、マネージャーの方がずっと上でした。日本のSIerなら課長・部長ラインに乗らないと年収は頭打ちです。どれだけ技術があってもプログラマやSEのままでは、年収に限界があります。市場は昔から「判断する力・人を動かす力」に高い値段をつけていました。

AI時代に起きていることは「逆転」ではなく「答え合わせ」だと思います。技術がコモディティ化した時に何が残るか。市場がずっと高く評価していたものがそのまま残りました。

AIが代替するのは「作業」です。「判断」ではありません。


おわりに

ここまで書いてきて、自分が何をすべきかが少し整理できました。

自分はどちらかというと技術寄りの人間です。顧客の前に出るよりコードを書いている方が好きだし、得意です。しかし自分で書いた通り、「技術力はあるが指示待ち」が一番危ないポジションだと思います。

だからこそ、対人スキルを高める努力は続けます。顧客の課題を引き出す力、チームを動かす力、説明する力。苦手な領域ですが、避けて通れません。

同時に、技術の勉強も必死で頑張ろうと思います。AIを上手く指揮するために、設計を評価して、「この方向は違う」と判断できる人間になりたい。脳死でプロンプトを投げるのではなく、全体のアーキテクチャに責任を持てる人間になりたいです。

やるべき仕事を正しく定義して、判断して、責任を取る。AI時代にエンジニアとして生き残るために、技術と対人スキルの両方を磨いていきたいです。

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