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回路シミュレーション LTspice の使い方(6) 「プッシュ・プル回路」 クロスオーバー歪みの対応

Last updated at Posted at 2016-04-16

概要

プッシュ・プル回路のクロスオーバー歪みの対応

はじめに

前回「回路シミュレーション LTspice の使い方(5) プッシュ・プル回路」
http://qiita.com/exabugs/items/a211553614b3a0f22f6b
では、「入力インピーダンスの低い負荷をドライブする」回路を作成しました。
しかし実は、0V近辺で「クロスオーバー歪み」が発生していることがわかりました。
今回は、その歪み解消に挑戦します。
(「トランジスタ技術 2016年 4月号」を参考にしました。)

改良前

前回作成した、コンプリメンタリなトランジスタ2個を使った「プッシュ・プル」回路
スクリーンショット 2016-04-14 12.43.30.png

0V近辺でクロスオーバー歪みが発生している様子
スクリーンショット_2016-04-14_12_39_57.png

拡大図 (0V近辺)
スクリーンショット_2016-04-14_12_56_03.png

改良後

  • ダイオードを使ってバイアス回路を追加すると、0v近辺でトランジスタQ1,Q2が滑らかに切り替わる。
    スクリーンショット 2016-04-14 12.43.24.png

クロスオーバー歪みが解消した様子
スクリーンショット 2016-04-14 12.38.41.png

拡大図 (0V近辺)

スクリーンショット 2016-04-14 12.56.08.png

フーリエ変換

改良前

スクリーンショット 2016-04-14 12.38.02.png

改良後

スクリーンショット 2016-04-14 12.38.07.png

電流

オペアンプの出力電流と、トランジスタのベース電流は、以下の様子。

改良前

スクリーンショット 2016-04-16 22.30.40.png

改良後

オペアンプの出力電流は、改良前より多く必要になる。
スクリーンショット 2016-04-16 22.30.35.png

考察

  • 入力信号とトランジスタのベース電圧を比較すると、±0.7Vのバイアスがかかっている。
  • それによって、0V付近でも、どちらかのトランジスタを稼働させることができる。

スクリーンショット 2016-04-14 13.12.01.png

拡大図
スクリーンショット 2016-04-14 13.25.32.png

おわりに

  • ダイオードと抵抗を足すだけで、気持ち悪いクロスオーバー歪みをスカッと解消することが出来ました。
  • アナログ回路の世界では、きっと、お約束なんだろう。こういった定石の回路を覚えていく必要があると思いました。

付録

今回使用しているトランジスタの、LTspiceデータは以下となります。

「回路シミュレーション LTspice の使い方(2) 部品の追加」
http://qiita.com/exabugs/items/5bfb3a575ce05bb6cbde

*Low Noise Amp PC=0.4W Ic=0.15A Vcbo=60V Complementary 2SA1015
.model 2SC1815 NPN(Is=2.04E-15 Xti=3 Eg=1.11 Vaf=100 Bf=300 Ne=1.5 Ise=0
+ Vceo=50 Icrating=150m mfg=TOSHIBA
+ Ikf=200m Xtb=1.5 Br=3.377 Nc=2 Isc=0 Ikr=0 Rc=1 Cjc=1p Mjc=.3333
+ Vjc=.75 Fc=.5 Cje=25p Mje=.3333 Vje=.75 Tr=450n Tf=20n Itf=0 Vtf=0 Xtf=0)
*Low Noise Amp PC=0.4W Ic=0.15A Vcbo=50V Complementary 2SC1815
.model 2SA1015 PNP(Is=295.1E-18 Xti=3 Eg=1.11 Vaf=100 Bf=300 Ne=1.5 Ise=0
+ Vceo=50 Icrating=150m mfg=TOSHIBA
+ Ikf=200m Xtb=1.5 Br=10.45 Nc=2 Isc=0 Ikr=0 Rc=15 Cjc=66.2p
+ Mjc=1.054 Vjc=.75 Fc=.5 Cje=5p Mje=.3333 Vje=.75 Tr=10n Tf=1.661n Itf=0 Vtf=0 Xtf=0)

Vb-Ib 特性

項目   2SC1815  2SA1015  内容                単位 デフォルト
Is 2.04E-15 295.1E-18 伝達飽和電流 A 1.00E-16
Eg 1.11 1.11 バンドギャップバリア電位 eV 1.11
Xti 3 3 IS温度効果べき乗指数 - 3

hfe 特性

順方向
項目   2SC1815  2SA1015  内容                単位 デフォルト
Vaf 100 100 順方向アーリー電圧 V
Bf 300 300 順方向理想最大増幅率 - 100
Ikf 200m 200m 順方向高電流域のロールオフポイント A
Ise 0 0 B-E間漏れ電流飽和電流 A 0
Nr 順方向電流放出係数 - 1
Ne 1.5 1.5 B-E間漏れ電流放出係数 - 1.5

逆方向

項目   2SC1815  2SA1015  内容                単位 デフォルト
Var 逆方向アーリー電圧 V
Br 3.377 10.45 逆方向理想最大増幅率 - 1
Ikr 0 0 逆方向高電流域のロールオフポイント A
Isc 0 0 B-C間漏れ電流飽和電流 A 0
Nr 逆方向電流放出係数 - 1
Nc 2 2 B-C間漏れ電流放出係数 - 2

電極間容量 特性

項目   2SC1815  2SA1015  内容                単位 デフォルト
Cjc 1p 66.2p B-C間-バイアス時P-N接合容量 F 0
Mjc .3333 1.054 B-C間P-N接合勾配係数 - 0.33
Vjc .75 .75 B-C間ビルトイン(基底)電圧 V 0.75
Cje 25p 5p B-E間-バイアス時P-N接合容量 F 0
Mje .3333 .3333 B-E間P-N接合勾配係数 - 0.33
Vje .75 .75 B-E間ビルトイン(基底)電圧 V 0.75

スイッチング 特性

項目   2SC1815  2SA1015  内容                単位 デフォルト
Tr 450n 10n 逆方向理想通過時間 Sec 0
Tf 20n 1.661n 順方向理想通過時間 Sec 0

その他 特性

項目   2SC1815  2SA1015  内容                単位 デフォルト
Vceo 50 50
Icrating 150m 150m
mfg TOSHIBA TOSHIBA
Xtb 1.5 1.5 BF-BR温度係数 - 0
Rc 1 15 コレクタのオーミック抵抗 Ω 0
Fc .5 .5 順バイアス時の空乏層容量係数 - 0.5
Itf 0 0 通過時間のIc依存性 A 0
Vtf 0 0 通過時間のVb依存性 V
Xtf 0 0 通過時間バイアス依存係数 - 0

参考:
http://www.ms1.mctv.ne.jp/sifoen.project/SPICE/Spice-Menu.htm
http://www.ms1.mctv.ne.jp/sifoen.project/SPICE/Spice-Doc/(BJT)Spice%20Parameter.pdf

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