・背景を、手掛かりとして使う
・アロセントリック空間処理(allocentric spatial processing)
前半部分(その1)からの続きです。
Motoaki Uchimura and Shigeru Kitazawa, Journal of Neuroscience
を参考にして、説明します。
プリズムメガネを使って、指差しをすると、横にずれてしまいます。
プリズムメガネをかけていても、何回かやっているうちに、+印の近くに指をさせるようになります。
実験では、ターゲット(+印)を移動させて調べます。
※ 論文では、背景の四角い枠も移動させますが、わかりにくいので、説明動画では固定しています。
次に、背景にある四角を、指を置く瞬間に右方向にずらしてみます。
すると、四角い箱の動きが邪魔をして、どこを指したらいいかよくわからなくなるんです。
背景の四角い箱が左にずれるので、それに誘われて指で正しい位置をさしやすくなるんですね。
四角い箱が、本来の場所から動くだけで、ターゲット位置の補正をしやすくなったり、しにくくなったりするんです。
四角い箱を、空間認知の手掛かりとしているんですね。
人が、物の位置を把握するときには、ふたつの処理の仕方があることが知られています。
ひとつはエゴセントリック空間処理、もうひとつはアロセントリック空間処理です。
エゴセントリック空間処理は、自分の体を基準として空間認知を行うものです。
アロセントリック空間処理は、背景や、周りに見える物体の位置を手掛かりに、空間認知を行うものです。
論文の例では、アロセントリック空間処理が影響を受けていると考えられます。
背景の四角形が、ターゲット(+)の位置を探るときの目印となっているからです。
ただし、アロセントリック空間処理やエゴセントリック空間処理の研究には、わかっていないことがたくさんあります。
おそらく、日常生活で、わたしたちは気が付かないうちに、ふたつを上手く使い分けているのでしょう。
<参考>
1. Motoaki Uchimura and Shigeru Kitazawa, Journal of Neuroscience (2013)
2. Nobuyuki Nishimura, Motoaki Uchimura, and Shigeru Kitazawa, Journal of Neurophysiology (2019)
3. Allocentric vs. Egocentric Spatial Processing, Maria Kozhevnikov’s Lab (Harvard Medical School)
※ 動画は説明のためのイメージで、画像の大きさや位置、実験条件などは全く異なります。詳細は原典のメソッドを見てください。