AI時代において、人間に求められる価値は「単体の専門スキル」から「間を取り持つ力」へシフトしています。
「え、プログラミングできるんでしょ?」「デザインできるんでしょ?」──こういった一点突破型のスキルは、もはやAIが代替できる時代になりました。じゃあ人間は何をすればいいのか。その答えが「間を取り持つ力」だと考えています。
単体スキルの価値が相対的に下がっている
これまで評価されてきた能力を振り返ってみましょう。
- プログラミングができる
- 絵が描ける
- 文章が書ける
- データ分析ができる
これらは確かに価値があった。でも今はどうでしょうか。
# 昔
人間がコードを書く → 評価される
# 今
AIにプロンプトを投げる → コードが出てくる → 人間がレビュー
コードを「書く」という行為自体の希少性は、明らかに下がっています。同じことが絵にも文章にも言えるわけで。
AIが苦手な「流れを読む力」
ただし、AIにも弱点がある。それが「流れを読む力」です。
具体例:漫画制作
AIは絵を描けます。かなり上手に。でも「面白い漫画」は描けない。
なぜか?
漫画が面白いのは、こういう要素があるからです。
| 要素 | AIの得意度 | 人間の役割 |
|---|---|---|
| 作画 | ◎ | チェック・修正 |
| コマ割り | △ | 読者の視線誘導設計 |
| ストーリー展開 | △ | 伏線・感情の流れ設計 |
| 読者の期待操作 | × | 全体の空気感を読む |
作画はできても、「ここで読者が何を期待しているか」「どういう順番で情報を出せば驚きが生まれるか」といった「流れ」の設計はまだまだ人間の領域なんですね。
「間を取り持つ力」が求められる3つの理由
1. 複数の専門領域をつなぐ必要がある
AIは各分野で強力です。でも「デザインとエンジニアリングの間」「ビジネスと技術の間」をつなぐのは人間の仕事。
「このデザイン、技術的に実現できる?」「このビジネス要件、ユーザー体験として成立する?」
こういう判断は、複数の文脈を理解している人間にしかできません。
2. ステークホルダー間の調整が必要
プロジェクトには様々な立場の人がいます。
- クライアント:お金を出す人
- エンドユーザー:実際に使う人
- 開発チーム:作る人
- 経営層:責任を取る人
それぞれの「言語」が違う。同じ機能でも、見ている角度が違う。その間を取り持って、全員が納得できる形に落とし込む──これはAIには難しい。
3. 文脈を超えた価値判断が必要
「技術的には可能だけど、やるべきか?」
この問いに答えるには、技術だけでなく、倫理、ビジネス、社会的影響など、複数の文脈を横断した判断が必要です。AIは各文脈での分析はできても、それらを統合した「価値判断」は人間に委ねられています。
実践:間を取り持つ力を磨くには
では具体的にどうすればいいのか。
-
複数の専門領域に首を突っ込む
- 浅くていいから、隣の領域を学ぶ
- 「翻訳」できる程度の理解を目指す
-
異なる立場の人と意図的に話す
- 自分と違う職種の人とランチする
- 相手の「困りごと」を聞く習慣をつける
-
「なぜ」を掘り下げる癖をつける
- 表面的な要件の奥にある意図を探る
- 「本当は何を解決したいのか」を考える
まとめ
AI時代における人間の価値は、「何かができる」から「間をつなげる」へと変化しています。
- 個別スキルはAIで代替可能になった
- AIは「流れを読む」のがまだ苦手
- 複数の文脈・立場・領域を横断する力が求められる
「自分は何ができるか」ではなく「自分は何と何をつなげられるか」──そういう視点で自分のキャリアを考えてみると、新しい可能性が見えてくるかもしれません。
参考
- 本記事は個人の見解に基づくものです
- 次回は「間を取り持てる人材になるための具体的な方法」について書く予定です
