海外との多拠点開発の話 - 東京で開発のための通翻訳チームを立ち上げたことを振り返る - Qiita の続き。
具体的にチャレンジした内容を書いてみます。
様々な試み...
1. 通翻訳者と寺子屋を開催する
- 毎日 9:00-10:00。講師: 通訳、翻訳各位。
- 寺子屋なので、基本は自学自習。出入り自由、スポット利用歓迎。
- 場所: 開発フロア フリースペース(翻訳チーム座席横) 。
- ルール: 各自、解決したい課題を持ってくる。時間内、先生に個別レクチャーしてもらえる場とする。
- 朝方生活を推奨する。
シチュエーション例
- 海外事業所メンバーに自己紹介したく考えてみたがこれでナチュラルに表現出来ているだろうか?
- 締切りの調整等の微妙なニュアンスを伝えたい文章を書いたが適切に表現できているだろうか?
- 自分のレベルでお勧めの本とか勉強法を教えてほしい etc
What is Terakoya?:https://en.wikipedia.org/wiki/Terakoya
2. 「日本語」を直す
- 論理的なドキュメント、読みやすいドキュメントを書く。
- 口語をドキュメントに使わない。
- お客様名を正しくお客様名と分かるようにする。(E.g. ○○さん, ○○ -> ○○コーポレーション様 etc)
- 人名、社員名を正しく人名と分かるようにする。議事録でニックネームを使わない。
- 機能名を極力機能名と分かるようにする。略さない。
- その場の「文脈がわかる人」にしか分からないような口語をドキュメントで使わない。
- 主語を明確にする。
- 「、」を適切な位置で行う。
これらができるだけでも「Google翻訳」が使いやすくなるという試み。
3. 業界用語・社内用語辞書を整備する。
業界用語
不思議の国のSE用語 - Qiita に準じ、以下など。
- 上げる -> Version upgrade
- 叩く -> 実行する
- 蹴る -> 実行する
- 回す -> 実行する
- 落ちる -> エラーになる、中止される
- 落とす -> 止める、ダウンロードする
- (プロセスを) 切る -> 止める
- (チケットを) 切る -> 発行する
- 引く -> 検索する、取得してくる
- 持ち方 -> データのでき方
- 走る -> 実行される (run)
- 発火する -> 起動する (invoke)
- 飛ぶ -> データが消える
- 串ざし -> いくつかのレコードを指定条件で検索し束ねて取得すること
社内用語辞書
- 以下の解決を目論む。
- 用語の標準がないため、言葉を好きなように翻訳してしまう。
- 結果コミュニケーションミスが発生する。
- 各用語が再利用できておらず、各チームが時間とコストを浪費している。
- 各用語の質に矛盾、不統一があり、それがドキュメントやプロダクトの信頼性に影響している。
- 日英中の対訳だけでなく、日日・英英…で用語の定義を管理できる。
- 各プロジェクトにて別の意味を持つ用語をそれぞれのプロジェクト毎に管理できる。
- アカウントを作成できる。
- 検索にはログイン不要。ログインすると「boo!」ボタンを操作でき、Upvote、Downvoteができる。
4. 「技術翻訳のチェックポイント」をチェックする。
(引用) 以下に気をつけよというようなこと。
- 冠詞(a/an/the)の不適切な使用
- 用語が不明瞭、不正確、または不適切
- 単数、複数間違い
- 文法間違い
- 誤訳のために事実と違っている英語
- 不正確、不必要、または不自然な前置詞
- 不自然な英語
- 句読法間違い
- 明瞭な動詞構文が必要
- 綴りエラー
- 修飾語句の対象が不明瞭または間違っている
- 用語が推奨翻訳辞書と矛盾している
- 不明瞭、または不可解な文
- スタイルガイドに相反
- 不統一な用語や句
- 不明瞭:語順が読み手を混乱させる
- 受動態:不必要な受動態の使用
- 不明瞭:指示語(it, they)が不明瞭、または不正確
- 主語と動詞の不一致
- 不統一:並列でない構文
- 類語反復または不必要な繰り返しを含む文
- 不明瞭:動作主または主体が不明瞭
- 事実に反するエラーまたは矛盾
- 用語の修飾語句が多すぎる
- 用語または略語が未定義
- 不明瞭:動作の目的語が不明瞭
- 不明瞭:文が長すぎて難解
結果
実務的には アプリをローカライズする時の見積もり - 翻訳外注 - Qiita。
色々やりました。意図はどれもこれも悪くはないと思っている。
が!これだけでは、 劇的な改善はなかった!
というのが冷静な振り返りである。次記事でその闇を深堀る... 。