海外との多拠点開発の話 - 上海でブリッジ開発をしていたときに感じていたことを振り返る - Qiita の続編です。
上海拠点勤務時代の自慢
当時、上海拠点で、発足から関わったプロジェクトにおいて、チームメートが2015年の社内MVPにノミネートされた。プロジェクトについて自分は東京拠点および上海拠点のコミュニケーションブリッジ役だった。嬉しかった。
一方で「失敗」だと思っていたこと
上海にて。東京との関わり方についてどのようなマインドセットをもつかについて苦い思い出。例えば
- 何故東京が上海の状況をわかろうとしないのか分からない、そして何故コミュニケーション上、英語すら話そうとしないのか分からない
- 何故我々のメールを読まないのか全く分からない 等
海外赴任者の心理的サイクル にはいくつかステップがある。少し抜粋して引用。
- ステップ1:不安と期待の混在期。
- ステップ2:ハネムーン期。赴任直後はすべてが新鮮で日本と違う習慣や、街並み、家の広さ、人々が大らかであることなどがよいことに見え、興味を持って接することができます。ですが、このハネムーン期という時期は、あまり長くは続きません。
- ステップ3:カルチャー・ショック期。予約をしておいた水道屋さんが待てど暮らせど来ない、雨が降ると帰宅するまでが渋滞になり、45分のところが、2~3時間かかる、現地の社員は詰めが甘い、など習慣や文化の違いで不便を感じたり、不快な経験をしてショックをうけます。
- ステップ4:怒り・幻滅の時期。現地の習慣のいやなところが気になり、また、日本の生活や親しい友人などが恋しくなります。場合によっては孤独になって落ち込んだりします。
- ステップ5:適応期。その後、時間が経つにつれ、現実を受け入れ、現地の生活に適応していきます。
- ステップ6:現地文化の受容の時期。慣れてくると、住めば都というように、現地文化を受容し、仕事においても生活においても、快適な生活を送るようになります。
- ステップ7:帰国の不安と期待の時期。海外赴任の期間は3年から5年が多く、帰任が近づくと、帰国準備で忙しくなります。
- ステップ8:逆カルチャーショックの時期。帰国後は慣れ親しんだ海外の友人や同僚から切り離されます。そして、生まれ育った日本に戻っても、浦島太郎になったように、孤独感を少し味わいます。
- ステップ9:再適応の時期。その後、日本の生活にも再適応し、海外で培ったスキルや異文化適応力をうまく生かしていく時期がきます。
開発者としても「それぞれのチームにそれぞれのプロ意識と責任がありお互いにそれを尊重しなければならない」というHRTの原則というようなものが重要だと思うわけです。
大事な言葉・HRT~「Humility(謙虚)」、「Respect(尊敬)」、「Trust(信頼)」。ああなんて難しい - Qiita
なので立ち上げた
複数拠点開発には以下のような問題があると思っていた。上海でも各チームがそれぞれに格闘していたが、それを組織として解決したいと考えた。
問題1. 言語スキルの差により生じている問題
- 日本語、英語、中国語という異なる言語のスキル差に基づく問題
- フォーマルな場において
- 各プロダクトのWikiやあらゆるドキュメント、情報差
- 各会議体における議事録や対話の情報差
- インフォーマルな場において
- 自由に会話できない、雑談できない
- 経験値、知識、技術スキルに関わらず起こっている問題
- これについて以下のような取組みを行いたい!!
- ドキュメントの翻訳
- 会議における逐次訳
- ボランティアワーク等含め社内のあらゆる人から組織的に通訳・翻訳の力を「借りたい時に借りられる」仕組み
- 言語学習のあらゆる面からのサポート
問題2. 言語スキルの差と思われがちだがそうではない点により生じている問題
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問題2-1. 論理思考、知識、理解、マネジメントの仕方の差
- 言語によらず基礎的なコミュニケーションスキルによって生じている問題
- 例:
- 冗長に書かれたドキュメント
- 十分な準備のない会議
- これについて以下のような取組みを行いたい!!
- 日本では研修で行われているはずの文章講座、ロジカルシンキング、あるいは会議フォーマット等を海外事業所にも広めたい。
- 海外事業所他各拠点で行われている取組を東京に吸い上げる仕組みを作りたい。
-
問題2-2. 拠点ごとの暗黙ルール、風土等の差
- 言語によらず基礎的な拠点の風土理解差によって生じている問題
- 例:
- スケジュール共有
- 勤務時間
- タイムゾーンや設備など所与の条件
等など。
大事にしたいと思ったこと
1. 聴く力
開発のあらゆるチームメイトの状況について理解すること。どう東京と上海間で相互に関わるべきかを考えさせられた。上海のあらゆるチームメートをサポートする経験は彼らと彼らのバックグラウンドに対する理解が必要だと思った。もちろん、それは所詮上海だけの話なので、今後上海だけでなくさらにあらゆる国に出自を置いた仲間と関わるには、同じように勉強し続ける必要があると思う。
2. 発信する力
同じく、開発のあらゆるチームメイトに対して考えて発信する力。考えられるリアクションを認識し、提案し改善していきたい、これも引き続き勉強が必要だと思った。1. 2. のいずれにおいても、重要なのはただの言語力ではなく、それを前提としたマインドと洞察、どうやってそれを相手に伝えるか、どうやって相手を理解するかだと思っていた。
3. 継続する力
また、最終的に、重要なのは継続して取り組むこと、取り組みを一過性でなく浸透させて健康的に続けられるようにまですることだと思っていた。
続く
はてさてそのような意気込みでどんな取り組みをしたのだろうか、続く。
以上です~。