はじめに
こんにちは、GroovyDNPdsこと、グエン ディン ホアンと申します!
普段は、ベトナムオフショアを活用した印刷業務ソフトウエア開発のプロジェクトマネジメントに携わっています。日々の業務でAIの可能性を感じる中、実は過去にAWS DeepRacer日本大会で、まさかの2位入賞という嬉しい経験もさせていただきました(当時のレポートはこちら)。AIを使った競技には人一倍の情熱を持っています!
この度、日本初となるDNP向けプライベート開催のAWS AI League(※)に参加する機会を得ました。 本大会は「Tune Whiz」というコンペティションで、AI同士が競い合い、その判定すらAIが行うという、まさに「生成AIを使う」から「生成AIを作る」時代へのシフトを肌で感じられる貴重な体験でした。
※経緯と背景
- 生成AI活用スキルの国際コンペティション「AWS AI League」に日本企業として唯一選出され出場
- AWS AI Leagueプライベート大会を開催してみた / Qiita @dnpds-nakamura
本記事では、このAWS AI Leagueでの私の体験と、そこで得られた学びや気づきを共有したいと思います。
参加動機:生成AIを使う→作る時代に取り残されたくない
近年、ChatGPTをはじめとする生成AIの進化は目覚ましく、私たちの働き方やクリエイティブな活動に大きな変革をもたらしています。この波に乗り遅れたくない、いや、むしろその波を自ら作り出す側になりたいという強い思いから、このAWS AI Leagueへの参加を決めました。
特に、AI同士が競技を行い、その結果をAIが判定するという仕組みには、未来のスポーツやエンターテイメントの形を見るようで、大きなワクワクを感じました。
開発体験:学習からデプロイまでがこんなに簡単に!
以前、AWS DeepRacerに初めて参加した際、モデルの学習にはJupyter NotebookでPythonコードを記述し、試行錯誤を繰り返す必要がありました。しかし、今回のAWS AI Leagueでは、その開発体験の進化に驚きました。
驚いたのは、SageMaker JumpStartを活用することで、数回のクリックだけで追加学習やデプロイが完結したことです。
- GUIベースの直感的な操作: モデルの選択、ハイパーパラメータの調整、学習の開始、デプロイまで、ほとんどの操作がWeb上のGUIで完結しました。
- 高速なイテレーション: 改善のアイデアが浮かんだらすぐに学習を回し、デプロイして結果を確認できるため、PDCAサイクルを高速に回すことができました。
「どうせ出たばかりのサービスだから、まだ手作業が多いだろう」と勝手に思い込んでいた自分を恥じました。現代のAI開発プラットフォームの進化には目を見張るものがあります。
生成AIを「使う」から「作る」へ:実践的な活用例
今回のAWS AI Leagueでは、まさに「生成AIをどう活用して、より良いAIを作るか」が問われました。私は特に以下の点で生成AIの力を借りました。
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サンプルデータの分析と傾向把握:
- 提供されたサンプルデータや過去の競技データを生成AIで分析し、勝敗に影響を与える主要な要素を得ました。
- 具体的には、「このデータセットから、勝敗に影響を与える可能性のある上位5つの要素を挙げてください」といったプロンプトで、人間が見落としがちなインサイトを得ることができました。
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評価基準の解釈と戦略提案:
- 競技の評価基準が複雑だったため、生成AIにその基準を渡し、「この評価基準を最大化するための戦略を複数提案してください」と指示しました。
- これにより、どの要素に注力すべきか、どのようなアプローチが有効かという指針を得ることができました。
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プロンプト作成ガイドラインの提案:ライバルとの協調が生んだ知見
参加者同士は競技上のライバルではありましたが、「情報共有によって全体としてより良い成果が得られるはず」という信念のもと、大会期間中も積極的に情報発信や意見交換を行いました。
その情報共有の一環として、私たちが試みたのが、AIモデルの改善に不可欠な「プロンプト作成ガイドライン」を、生成AI自身に作成させるというアプローチです。
具体的なアプローチ:
- 「効率的な学習データ生成のためのプロンプトの構成要素と、避けるべき表現を教えてください」
- 「特定のタスクにおいて、生成AIから質の高いアウトプットを引き出すためのプロンプト設計のベストプラクティスを提案してください」
といった形で生成AIに問いかけ、その回答をチーム内で共有しました。このガイドラインは他の参加者からも大きな反響を呼び、活発な意見交換など、コミュニティ全体での知見の深化につながりました。
この取組みは、ライバルである参加者同士が知見を共有し、共に高め合うという、新しいAI開発コミュニティの形を模索する上でも非常に有意義な経験となりました。
AIモデルの競争と学び:自己ベスト5位、そしてその先
いくつかの生成AIに異なるアプローチで学習データを作成させ、その結果を比較しながらモデルを調整していきました。
Virtual Competition(予選)において、最終的に自己ベストの順位は5位を記録することができました!

図1: AWS AI Leagueのリーダーボード。ブックマークレットを使って、エイリアス名を所属・名前に変換しています。
しかし、喜びは一瞬でした。上位モデルとの差は大きく、特に「なぜそのモデルが強いのか」という本質的な理解がまだ不足していると感じました。これは、単に生成AIに「作らせる」だけでなく、その裏にあるアルゴリズムやデータに対する深い洞察が不可欠であることを改めて教えてくれました。
余談:偶然なハードウエアトラブル、クラウドのありがたさを改めて実感
5日間の競技期間の3日目、まさかの出来事が起こりました。開発に使用していたPCのハードウエアが突然壊れ、起動不能になってしまったのです。
「せっかく作った学習データやモデルのパラメータが無くなってしまったらどうしよう…」と、一瞬血の気が引きました。しかし、すぐに「待てよ、S3に保存してあった!」と思い出し、ホッと胸をなでおろしました。
この一件で、改めてクラウドサービスの偉大さ、特にS3のようなオブジェクトストレージの堅牢性と可用性のありがたさを痛感しました。もしローカルにしかデータがなかったら、そこで私のAWS AI Leagueは終わっていたでしょう。クラウドが当たり前になった現代において、その恩恵を改めて実感する出来事でした。
まとめと今後の展望
今回の日本初AWS AI Leagueへの参加は、私にとって多くの学びと刺激を与えてくれました。
- 生成AIの可能性: 単なるツールとして使うだけでなく、開発プロセスそのものを加速させるパートナーとしての生成AIの可能性を強く感じました。
- 開発体験の進化: AI開発プラットフォームの進化により、アイデアから実装、評価までのサイクルが劇的に短縮されていることを実感しました。
- クラウドの重要性: 予期せぬトラブルからデータを守り、開発を継続するためのクラウドインフラの重要性を再認識しました。
「生成AIを使う」から「生成AIを作る」時代は、もう始まっています。これからも新しい技術に積極的に触れ、学び続け、自分自身のスキルをアップデートしていきたいと思います。
もし、この記事を読んでAWS AI Leagueや生成AI活用に興味を持たれた方がいらっしゃれば、ぜひ一緒に挑戦していきましょう!