私は2022年からの産休・育休を経て、2024年5月に職場復帰しました。
復帰後、生成AIに関するプロジェクトに参画することになったのですが、生成AIに関する知識が全くなく、戸惑いを感じていました。
ChatGPTを少し使ったことがある程度で、RAGといった生成AIに関する技術についても知りませんでした。
そのため、周囲とのスキル差やプロジェクトについていけるかどうかに焦りを感じており、効率よく働くためのヒントやキャリアを再考したいと考えていました。
また、IT業界における女性のキャリアパスについても漠然とした不安を抱えていました。
IT業界は女性の割合が少なく、キャリアパスを描くのが難しいという課題があります。
産休・育休後のキャリア再構築や、技術分野での女性の少なさに対する懸念がありました。
こうした個人的な課題(スキル不足とキャリアパスの難しさ)に対し、同じような境遇の方やヒントを得られるコミュニティを探し、Microsoftが提供している 「Code; Without Barriers」 に参加することにしました。
Code; Without Barriersとは
Code; Without Barriers は、 AIで目指す、総活躍社会 を掲げ、人材 x テクノロジーで、日本の社会課題解決を実現することをミッションとしています。
特に、急成長している AI、デジタルテクノロジー、クラウドの分野におけるジェンダーギャップをはじめとする障壁の解消を支援し、女性の開発者、創業者、コミュニティ、組織が、包摂的な経済成長に貢献する ための、トレーニング、ネットワーキング、メンターシップなどのプラットフォームが提供されています。
このプログラムはアジアを中心に展開、日本市場での展開は2024年5月から始まり、私はその第1期生として参加していました。
プログラムの内容
プログラムの内容としては、主に以下の4つが提供されます。
- スキリング (学習リソース)
- デジタルバッジの提供
- イベントへの参加機会(キックオフやMeet Upなど)
- コミュニティ活動 (LinkedIn Group)
スキリングでは、「使う人コース」と「創る人コース」に分かれていました。
前者はツールの活用法を学び、後者は技術や知識を深める内容です。
私は 「創る人コース」 に参加し、AI時代に必要なソフトスキルや生成AIの基礎知識を学びました。
使う人コースでは主にCopilotの使い方が学べるようです。
私が参加した「創る人コース」で提供される学習コンテンツは主に以下の通りです。
学んだ内容の一部をご紹介します。
- 学びへの一歩を踏み出す(クラウドスキルチャレンジ)
- AI時代に必要なソフトスキル:「幸せなキャリアを築く」
- 生成AIの基礎知識
- AIの基礎知識(AI-900)
- Azure OpenAI 入門(AI-050)
- Azure開発 抜粋(AZ-204)
- Azure AI開発中級(AI-102)
学びへの一歩を踏み出す(クラウドスキルチャレンジ)
Microsoft Learnのカリキュラムとして提供されており、特に 成長型マインドセット (Growth Mindset) と 自己効力感 に焦点を当てています。
このモジュールでは、 固定型マインドセットと 成長型マインドセット の概念について学びます。
成長型マインドセット とは、 「知らないことは何でも学ぶことができ、熱心さと努力で能力を向上させることができる」 という考え方です。
これに対し、固定型マインドセットは、性格や頭の良さ、想像力などは変えることのできない不変なものだと思い込む考え方です。
テクノロジー分野での学習や仕事において、なぜ成長型マインドセットが必要なのかを説明し、固定型から成長型へマインドセットを変えるための戦略(内なる対話を意識する、完璧ではなく進歩を目指す、他の人から学ぶなど)についても学びます。
このモジュールでは、テクノロジー分野での学習や成長に 自己効力感 がどのように影響するか、そして自己効力感をマインドセットに結びつける方法についても考察します。
自身の自己効力感を評価し、快適ゾーンや自己効力感に影響を与える要因についても分析します。
テクノロジー分野で自己効力感を向上させるための戦略が提供されており、「これはスキルを伸ばすチャンスだ、練習すれば上手になる」というマインドセットを持つことの重要性が示唆されます。
AIの基礎知識(AI-900)
このコンテンツは、 AzureにおけるAIの機能やできることを理解する ためのものです。
AIの基本的な概念、機械学習の基礎、そしてAzureのAIサービス(Azure Machine Learning、Azure AIサービス、Azure AI Searchなど)について広範に学びます。
Computer Vision、自然言語処理、ドキュメント インテリジェンスとナレッジ マイニング、そして生成AIといった分野の基礎知識も含まれています。
このコースは、Azure AI Fundamentals (AI-900) の資格取得に向けた内容となっており、私自身もこのコンテンツ受講後にAI-900の資格を取得することができました。
以下のコースを含む内容でした。
Azure OpenAI 入門(AI-050)
Azure OpenAIサービスを理解し、利用できるようになることを目的としたコースです。
リソースのプロビジョニング、モデルのデプロイ、Azure OpenAIスタジオの使用方法、Azure OpenAIをアプリに統合する、プロンプトエンジニアリングを適用する、コードを生成する、画像を生成する、独自のデータを使用するなどの学習内容が含まれていました。
以下のコースを含む内容でした。
Azure開発 抜粋(AZ-204)
AIというよりはAzureを使用して、リソースグループを作成してサービスをまとめる方法や、Azure App Serviceを利用する方法について学びました。
以下のコースを含む内容でした。
Azure AI開発中級(AI-102)
Azure AIソリューションの設計と実装に関する内容を扱うコースで、 Azure OpenAIサービスを理解し使えるようになる ことを目的とした内容になっていました。
Azure AIソリューションの各説明、それらのソリューションを活用した、画像分類、テキスト分析、質問応答ソリューション、RAGの実装方法について学びました。
以下のコースを含む内容でした。
Code; Without Barriers in Japanで得られた学びと変化
Code; Without Barriers in Japanに参加して、私自身にいくつかの学びと変化がありました。
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スキル不足への対処と学習習慣の定着 :以前はスキル不足を感じると諦めがちでしたが、「近道はない」と理解し、地道に勉強を続ける習慣が身につきました。産休・育休期間で忘れていたAzureやAIに関する知識を思い出し、Azure AI Fundamentals (AI-900) の資格も取得しました。LinkedInで他の参加者が勉強している投稿を見ることも刺激になり、勉強する習慣がついてきました。
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グロースマインドセットの理解と実践 :特に印象に残っているのは、グロースマインドセットに関する学びです。Microsoftの方のセミナーを聞いていると、共通してこのグロースマインドセットを持たれていることが印象的でした。新しい課題や技術に直面したとき、「自分にはまだ学ぶ余地がある」と考え、以前よりは積極的に挑戦するようになったと思います。
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自身のスキルの立ち位置の把握:Code; Without Barriersの参加者には、Azureを初めて使う方もいれば、非常に高いスキルを持つ方もいました。その中で、Azure、AWS、GCPといった複数のクラウドを使った経験があることは、自信にしても良いのではないかと思える一方で、世の中にはさらにスキルが高い人もいることを知り、自分のスキルが世の中でどの程度のレベルにあるのかを客観的に理解する参考になりました。
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キャリアパスへのヒント:Microsoft社員の方々のキャリアに関するセミナーを聞くことで、多様な働き方やキャリアパスについてヒントを得ることができました。様々なキャリアを歩んでいる人がいることを知り、自身のキャリアについて考えるきっかけになりました。
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コミュニティでの交流 :私自身発言をしたりといった活動は積極的にできておりませんでしたが、LinkedInグループを通じて、参加者同士で情報交換や技術的な質問をしたり、リアルイベントで顔を合わせる機会もあったので、社外の方々のマインドセットを知ることができる良い機会となりました。
まとめ
Code; Without Barriers in Japanへの参加は、キャリアを考え直し、意識を新たにする大きなきっかけとなりました。
このプログラムは、女性の社会進出を支援し、キャリアの第一歩を踏み出す勇気を与えてくれます。
社内で業務をこなしているだけでなく、Code; Without Barriersのように社外の様々なコミュニティやセミナーに参加することで、技術的にもマインド的にも多くのことを学ぶことができます。
ご興味のある方は、Code; Without Barriers in Japanの公式ウェブサイトから登録できるので、ぜひチャレンジしてみてください。