まずはじめに
本記事の内容は、情報提供を目的としており、記事執筆者が責任を負うものではありません。
個別の事象については、専門家にご相談くださいね。
一応お約束ですが書いておきましょうね…
導入として、あつ森を例にしてみよう
今年よく流行ったものでいうと、あつ森(あつまれ どうぶつの森1)があります。
我が家でも発売日にダウンロード購入しました。
家具とかも細部まで非常に凝っていて、よくできていますよね。
さて、ここで問題です。
この女の子がコンピューティングをしている着座姿勢には良い点と悪い点があります。
それぞれの点について、説明できる方ってどれぐらいいらっしゃいますか?(笑)
おそらく… あまりおられないのではないかと思います。
会社だと専門の人が気にしてオフィス家具などを設計・組み合わせてくれているケースも多いですが、リモートワークでそれを続けてしまうと目、肩、腰が辛くなってしまうかもしれませんね。(実際、リモートワークが始まってからつらい…って人もいるのではないでしょうか?)
実はそんな悩みに答えてくれる内容を、本に寄稿しました。
私は最近だとアウトプットとしては技術同人誌に対して寄稿するケースが多くなってきているのですが、この度、寄稿させて頂いていた技術同人誌が商業出版する事になりました。
「エンジニアのためのオンライン生活ガイドブック (インプレスR&D 技術の泉シリーズ(NextPublishing)」2です。
2020年12月18日発刊になります。
公式情報はこちら3から見ていただけます。
今回、その中の1章()「第3章 オンライン生活の労働衛生的なハードウェア環境」について、大事なところを中心に公開してみます。
実際この記事だけ読めば、この章目当てであれば買わなくてもいいかもしれないです…
オンライン生活の労働衛生的なハードウェア環境について(Essential版)
序文(ここはだいたいほぼ元原稿そのまま)
みなさん、リモートワークが盛んになってきていますが、
自宅での開発環境はどうされていますでしょうか?
2020年の2月頃から急に始まったコロナ禍により、いきなりリモートワークが始まった方も多かったのではないでしょうか。(私もそうでした。)
一般的なある程度以上の規模の会社では総務部の方やオフィス家具のメーカーがプロフェッショナルとして業務の環境を構築してくれているため、一般の社員が「どのような基準でオフィスを作れば、作業者の負担が少なくなるか?」という点については、普段は気にするケースはあまりなかったのだろうなと思っているのですが、今回のコロナ禍によるリモートワークへの急激なシフトに関しては、どうしても「業務の継続」が優先され、(緊急事態宣言時においては、それすら100%の状態で運用する事はままならなかった会社や組織も多かったと聞いています)個人のリモートワーク環境をどのように準備・維持すれば良いかについて、適切な情報を持っている人が本当に少ないように感じています。
実際、リモートワークに伴う手当(これでリモート環境整えてね みたいなやつ)が出た会社の話までは聞こえてきましたが、
こういった点について考慮してリモートワーク環境を準備するように といった様な指導を客観的な根拠を踏まえた上で行っている職場は、今回のコロナ禍でリモートワークへのシフトが急激に進んだ割には、あまり聞こえてきた覚えがないのです…
もしこの読者の方がそういう職場にお勤めであれば、非常に職場からのサポートのレベルが高いと思われます。いい会社ですね。
本章では、厚生労働省が提示している「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」4に基づき、適切なオンライン生活での環境整備(主にハードウェア面)について情報を提供できればと考えています。
また、今回のこの記事のベースになっているのは「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインについて」5になります。
本ガイドラインはどちらかというと使用者(会社の雇用側・責任者側)に立って記載されたマニュアルのため、
以下の記事ではユーザー側として必要な観点に絞って、説明をしていきますね。
また、本ガイドラインを見ていただくとわかるのですが、この文書はガイドライン本編、ガイドラインの解説 という構成になっており、今回の記事でもまず本編の内容で大事なポイントを紹介し、その後に公式なガイドライン上の解説(以下「公式な解説」と記載)と、他の参照すべき内容を適宜組み合わせて解説を行っています。
実際のガイドラインも含めて参考にしていただけると幸いです。
ここから、大事なポイントをかいつまんでいこう(ここからは要点だけコンパクトに拾うよ)
もともと、この記事のベースにしているのは公的な資料です。
「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」4
「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインについて」5
この資料群が対象にしてるユーザ
めちゃくちゃ簡単に書くと
・業務でITつかうひとは全員対象
・自営型テレワーカーの人が自宅で行うのも対象(資料の2章とか10章に書いてる)
・テレワークを行う労働者に対する配慮もしような(資料の10章に書いてる)
です。簡単ですね。
大事なポイント
次の画像に大体(見たいポイントの7割ぐらい)は書いてあるんですが、いらすとや画像使いまくりだったのもあった事から、前述の本2には載せず、ちゃんとベースのところから説明してます。
画像に書かれてないポイントもありますし・・・
もともとこの記事の最初に書いた問題も解決してないですね。
ディスプレイの最適な距離
たとえば液晶テレビなどでは最適な視聴距離のめやすは「画面パネルの高さの約3倍」6とされています。
(※この指針、世の中には一日中テレビを見続けている人もいるわけで、そういった人の為のものなのですが、一日中ディスプレイを見続けている情報処理産業の従事者も実は同様の距離を置かないといけないのでは?という気がしています…)
本来の体の正しいポジションについて(総論)
おそらく初めて知る方も多いのだと思いますが、ここで改めて「本来、体として正しいポジショニング」についておさらいしておきましょう。
本来、体にとって一番負担の少ないとされているポジショニングは下図のようなものです。
そう。朝礼などでやった人も多い、気を付け(直立不動)の姿勢ですね。
なお、注意すべきポイントとして、バランスのよい直立不動の人体を横からみた場合、鉛直線上(重力の方向。要は地面に対しての垂直)に次の要素が一直線に並んでいるはずです。
- 耳
- 肩甲骨
- 骨盤
※脊髄についてはS字を描いて衝撃を吸収するように沿っているので、かならずしもそうではないでしょう。
※肩こりを訴える人は肩甲骨が前に出がちであったりといった姿勢のくせがみられる事があるそうです。(私自身、整体師の先生に指摘されました… ^^;)
また、手のひらは人の前の方向に対して垂直が本来は自然な姿勢です。
(そういった事から、一部のエルゴノミクスデザインのマウスでは斜めや縦に握る形状のマウスが存在しますね。
私も腱鞘炎になったことが一時期あるのですが、縦向きマウスを使うことでだいぶ緩和されました。)
なお力学的な観点でいうと、基本的に物体が立つためには「3点以上の支持物の中心に重心が来て、平衡状態が保てている」状態となる必要があります。椅子などの立体的に立つ必要のある構造物も、脚が3つ以上あるのはそういった理由のためです。
(逆に椅子や折りたたみ式の机ですべての脚が接地せずガタガタする場合は、全ての脚が同一平面上にて接地していない事が原因となります。)
これはカメラの三脚などを想像するとわかりやすいでしょう。
例えば、カメラの三脚であれば、三脚の脚を均等に伸ばさなかった場合など、三脚の3点の足で描いた三角形から垂直に柱を立てた三角柱の空間の外側にカメラが来るように三脚を設置した場合、普通であればカメラは転倒するはずです。
(カメラがめちゃくちゃ軽いとか、三脚がめちゃくちゃ重いという理由があり、バランスが取れてしまうケースも無いわけではないですが)
では、人が作業をするときに直立不動に近い体勢を取るにはどうすればよいでしょうか?
ヒント:スタンディングデスクとか、ありますよね・・・
本来の体の正しいポジションについて(ディスプレイの位置)
さらに、肩こりなどを防ぎやすいディスプレイの角度というのはあるのでしょうか?
ポイントは、頭の角度にあるそうです。
一般的にはディスプレイを見るときの目と水平な位置にディスプレイの上端が来て、頭の角度は垂直から10度程度までの傾きに抑えるのが良いとされています。
なぜかというと、頭は結構重いんだそうです。(成人で4~6キロ程度)
先の三脚の例でも示しましたが、仮に頭を大きく曲げたり、前に突き出して作業をしている場合、
自立しないようなバランス状態のものをどこかの筋肉が支えているはずで、結果それが首や肩のこりの原因になってしまうそうですよ。
また、重いものを持ち上げる…といった例ですと、例えばスポーツの世界ではウエイトリフティングがありますが、
ウエイトリフティングもバーベルを保持した選手が一番体制が安定する姿勢は、頭の上にバーベルを持った体制ですよね。
(実際に注意深く見てみると、バーベルを落としてしまうケースでは垂直に持ったバーベルが少し中心からずれはじめ、
一気に保持できなくなってバーベルを落としている事がわかって頂けるかと思います。)
首で無理な体制をカバーしないように気をつけたいものですね。
またこれを期に、目と頭の角度とディスプレイの位置関係、改めて見直してみてもいいかもしれませんね。
本来の体の正しいポジションについて(腰から下)
- 座面(臀部や骨盤)から膝までの部位が地面と平行になる
- 地面に踵がしっかり着く(ように座面の高さを調整するか、踵を置くためのフットレストを足元に設置する)
図にすると次のようになります。
おそらくこの過程で、普通ならすねもほぼ垂直になると思います。(すねについては垂直でなくとも良いようですが。)
また、踵を地面につけておくのが普通の座位の姿勢ですが、一部すねを支えて…というタイプの椅子もありますね。
本質的には骨盤を立位と同じようになるよう、極力立てたい…というのが根っこにありそうで、(ガイドラインや、すねを支えるタイプの椅子の設計として)どちらでも理にかなっているような気はしています。私はそのタイプの椅子を長時間試したことはないのですが・・・
本来の体の正しいポジションについて(机まわりの位置関係)
身体にとって負担が少ないであろう座位の姿勢は次のようになります。
- 肩が前に出ない
- 腕を持ち上げなくて良い
- 体も垂直を維持できる
例えば昔からよく「たすき掛けが肩こりに効く」という話が言われていますが、その理由の一つが、肩が前に出なくなる事だそうです。実際に肩を後ろに引っ張る姿勢矯正グッズなども市販されていますね。
さて、なぜ肩が前に出がちになってしまうかについても考えてみましょう。
まず理由として大きいだろう点はキーボードやマウスが前に置かれるため、身体がUIのデバイスを迎えにいってしまい前傾姿勢を取ってしまいがちであろうと考えられます。
もう1点、理由として大きそうなもので「画面の文字が小さいので顔を近づけてしまう」というケースはあるのですが、これについては適切なサイズ(弱視や老眼などがあるのであればできれば大型)のディスプレイを利用するようにしましょう。
同様に腕を持ち上げるのもあまり良くなく、これを解消するためには次のような方法があります。
- キーボードやマウスの前にリストレストを使う
- 椅子に肘置きがあるものを使って、肘置きを机の高さないしリストレストの高さと揃える
- 薄いキーボードを使う(ことで、机に腕をおいても持ち上げる必要が減る)
肩と腕のポジショニングが合えば、姿勢も相当改善されるはずですし、伴って身体の負担も減るはずですよ。
最後に答えあわせをしてみよう
ということで、ここまでで基本的なポイントを駆け足で攫ってきました。
ここまで読み切ったあなたであればわかるかな?
○良いポイント
- 目線よりちょい下にディスプレイの上端がある
- ディスプレイが遠い
○良くないポイント
- 手からキーボードが遠い
- 地面やフットレストに足がついていない(まあこの頭身だと絶対着かないでしょうけどw)
という感じになります。また、顔が照らされるぐらいディスプレイが明るいのもちょっと明るすぎかもしれませんね。
この記事が、あなたのコンピューティングの参考になれば幸いです。