概要
クライアントサーバー方式(Client-Server Model)は、コンピュータネットワークにおける分散システムの設計パターンの一つです。この方式では、クライアント(client)とサーバー(server)という2つの役割に分かれたデバイスが通信を行い、それぞれ特定の役割を果たします。
反対に、情報を一元管理するサーバーが存在せず、ネットワークに接続している端末同士で直接データの検索や転送を行う方式をP2P(Peer to peer)方式と言います。P2Pでは、1つの端末がクライアントとサーバーの両方の役割を担っています。具体的には、情報を所持している端末がサーバーの役割をするのに対して、情報を必要としている端末がクライアントとなり、サーバー役の端末に対してデータの検索要求を行います。LINEの一部の機能や、仮想通貨のブロックチェーンによる台帳システムなどで使われています。
クライアントとサーバーの役割
クライアント
- ユーザーの入力やリクエストを処理する
- サーバーにデータやサービスを要求する
- 例: Webブラウザ、モバイルアプリ、デスクトップソフトウェア
サーバー
- クライアントからのリクエストを受け取り、適切なレスポンスを返す
- データベースやファイルストレージ、アプリケーションロジックを提供する
- 例: Webサーバー(Apache, Nginx)、データベースサーバー(MySQL, PostgreSQL)
クライアントサーバー方式のメリット
- 集中管理
サーバー側でデータやアプリケーションを一元管理できるため、メンテナンスが容易 - セキュリティ
基本的にクライアント側にはデータを保存せず、サーバー側で管理するため、情報漏洩のリスクを低減 - スケーラビリティ
サーバーのリソースを強化することで、多数のクライアントに対応可能。 - 柔軟性
異なるプラットフォームやデバイス間での通信が可能。
クライアントサーバー方式のデメリット
- サーバーへの依存
サーバーがダウンすると、システム全体が停止する可能性がある。 - スケールコスト
大量のリクエストを処理するために、サーバーのリソース増強が必要になる。 - ネットワークへの負荷
通信が増えるとネットワーク帯域に影響を与える可能性がある。
実構成例
Webアプリケーション
クライアント: Webブラウザ
サーバー: Webサーバー + データベースサーバー
メールシステム
クライアント: メールソフト(Outlook、Thunderbird)
サーバー: メールサーバー(SMTP、IMAP)
オンラインゲーム
クライアント: ゲームアプリ
サーバー: ゲームサーバー
クライアントサーバー方式とP2P方式の比較
特徴 | クライアントサーバー方式 | P2P方式(ピアツーピア) |
---|---|---|
構造 | サーバーが中心 | 各デバイスが対等(中心がいない) |
メンテナンス性 | 高い | 低い |
可用性 | サーバー依存 | ピアが多いほど高い |
セキュリティ | サーバーに集中管理可能 | 各ピアに依存 |
使用例 | Webアプリケーション | ブロックチェーン |
昔はどうだったのか
1970年代頃までは、少数のコンピュータ(メインフレーム)に計算機資源を集中させ、 それを一つあるいは複数の通信専用端末(ターミナル)から利用するということが行われていました。しかし、コンピュータの低価格化やネットワークの普及によって、 複数のコンピュータで分業した方がトータルコストが低くなることが多くなってきたため、現在ではクライアントサーバー方式が広く普及しています。
まとめ
クライアントサーバー方式は、アプリケーション設計の基盤であり、Webアプリケーションやクラウドサービスを支える重要なアーキテクチャです。一方で、サーバー依存やスケーラビリティにおける課題も存在するため、用途に応じた設計が必要となります。
参考文献
https://www.nic.ad.jp/ja/basics/terms/client-server-system.html
https://wa3.i-3-i.info/word12356.html