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運用チームの中長期育成に向けた取り組み 〜Squad Health Check modelの活用〜

Last updated at Posted at 2025-09-24

1. はじめに

こんにちは、博報堂テクノロジーズの森田です。

今回は私個人の投稿ではなく、担当しているチームのリーダーである近藤との共著になります。

私たちは日々の業務に加え、チームの長期的な成長と発展を目指して様々な取り組みを行っています。その中で、私たちが特に重視しているのは、チームが持続的に成長できる環境づくりです。長期的な成長と発展には以下のような状態を目指したいと考えています。

  • 心理的安全性が常に確保されること
  • 各人が自走状態にあること
  • メンバーが入れ替わってもこれを維持していること

これを実現すべく、チームの状態を定期的に可視化し改善点を見つけるためのツールとして、Spotify社が提唱する「Squad Health Check model」を導入しました。

2. ツール選定

2.1 Squad Health Check modelを選んだ理由

DORAやタックマンモデル、DASA成熟度モデル等を候補にしましたが、以下の観点からSquad Health Check modelが最適とし採用しました。

  • メンバー目線での評価が可能
  • 定量・定性の両面からチーム状態を把握できる
  • 評価軸をチームに適したものへカスタマイズ可能
  • "楽しい"など、普段は言語化しづらい感情的な側面をチーム全体で共有・可視化できる点

また、この記事を書くタイミングで生成AIにもツールを調べてもらった結果、以下もあるようです。

  • Echometer:心理的安全性やエンゲージメントを測定
  • Retrospective Radar:アジャイルチーム向けの振り返り支援
  • TeamMood:日々の気分を記録し、チームの雰囲気を把握

2.2 Squad Health Check modelについて

2.2.1 (改めて)Squad Health Check modelとは

Spotify社が提唱するチームの健全性を可視化するフレームワークです。詳細は以下を参照ください。

チームメンバー自身が主観的にチームの状態を評価し、色(緑・黄・赤)で表現することで、課題や改善点を可視化し自己認識と改善のきっかけを得ることを目的としたツール、と理解しています。

2.2.2 各評価項目

上記ブログ内の項目をベースに、必要に応じてカスタマイズします。私達は以下の項目を評価項目としました。

項目 内容の例
リリース 安全でスムーズにリリースできているか
働き方 働き方がチームに合っているか
バリュー チームが価値を提供できているか
スピード 作業が滞りなく進んでいるか
ビジョン チームの目指す方向が明確か
ミッション チームの役割が明確か
楽しい! 業務に楽しさを感じているか
自律性 自分たちで意思決定できているか
サポート 必要な支援が得られているか

私たちはSquad Health Check modelを四半期ごとに3回実施しましたが、評価項目については、原則、変更しない方針を取っています。これは、項目ごとの評価の推移を継続的に追うことで、チームの状態変化をより正確に把握できると考えているためです。
このため、評価項目は安易に決定するのではなく、チーム内で十分に議論を重ねた上で合意形成することが重要だと考えています。

2.2.3 評価方法

各項目に対し、メンバーがチーム目線で以下の評価を行います。

:現時点で改善の必要性無し
:壁はあるが乗り越えられる
:問題・悪影響あり

なお、緑が良い・赤が悪い、という訳ではありません

緑の評価が多く見られる場合、チーム形成初期の表面的な関係性を反映している可能性があります。上記のSpotifyのブログでは、こうした状態を「ハネムーン期(on honeymoon)」と表現しています。
一方で、赤や黄の評価が多いことは、メンバーがチームの現状を冷静に俯瞰し、課題や改善点に気づいている証とも言えます。これは、健全な自己認識が育まれている証拠とも捉えられます。

なので”良い”・”悪い”を決める材料では無く、あくまでチームをより良い状態へ持って行くための元ネタであるべきだと考えています。

2.2.4 実施方法の設計

この取り組みは経過が重要だと考えており、長期的に続けられるようラフかつクイックに出来るよう計画しました。

⏰フロー例(約50分〜60分)

  1. 前回の振り返り(5分)
  2. 個人ワーク(10分~15分)
    • 各項目に対して緑・黄・赤で評価
    • コメント記入(任意)
  3. ディスカッション対象の選定(5分)
    • 評価がばらけた項目、赤・黄が多い項目を選定
  4. ディスカッション(15分~20分)
    • 色の理由、課題に感じていることを共有
  5. 合意形成(15分)
    • 改善案の具体化
    • 次回までのアクション設定

2.2.5 記録と可視化

振り返りのしやすさ・共同編集のしやすさを加味し、Microsoft 365のMicrosoft Whiteboardを利用しました。

2.2.6 継続の仕組み化

長期継続の観点で、TeamHealthCheckの実施は以下段取りとしました。

  • かつある程度変化が見られるであろう四半期ごとに定期で実施
  • 会話した内容が風化しないよう改善施策の進捗を確認
  • だらけないよう打ち合わせは1時間きっかり

2.2.7 実施のコツ

実際にやってみた結果としての実施のコツを記載します。

  • 目線はその人から見たチームの状態とすることで個人の批判に繋がらない
  • 心理的安全性の確保が前提(受け止める)
  • 全員参加型にすることで、チーム全体の納得感が高まる
  • 改善案は小さくてもOK:まずは一歩から

3. やってみた

3.1 まず結果

やってみた結果を載せます。
Whiteboard1.png

3.2 振り返り

3.2.1 定量的な変化

評価結果は、大きく「変化が見られた項目」と「変化が少なかった項目」に分かれました。

  • 変化した項目:働き方、ビジョンミッション、バリュー、自律性
  • 変化が少なかった項目:リリース、スピード、サポート、楽しい!

中でも特に印象的だったのは、「自律性」の評価が大きく変化した点です。
当初、私たちの業務は依頼受託型の運用作業が中心で、受動的な感覚が無自覚にありました。しかし、「私たちがすべきことは何か?」という会話を重ねることで、依頼の背景を理解し依頼者とのコミュニケーションを積極的に取るようになりました。
この変化により、メンバーの意識は受動から能動へとシフトしたと感じています。

一方で、「スピード」や「リリース」といった技術的な項目には大きな変化は見られませんでした。これは、日常業務の中で既に改善サイクルが定着しており、安定した運用ができていることの表れとも言えるでしょう。

3.2.2 定性的な気づき

実際の業務に対する改善案は置かれた環境次第のため省略しますが、3回の実施を通してチームとして気付いた点を記載します。

  • 業務という短期の目線から離れ、中長期的な視座が芽生えた
  • 普段は自動化などの手段に目がいきがちだが、どういうところで価値提供すべきか、といった目的の部分を全体で会話できた良い機会であった
  • 普段は言語化されないポジティブな意見が出てきた
  • 心理的安全性に配慮した会話が出来ていた

4. 最後に

TeamHealthCheckを通じて、チームの状態を定期的に見直すことの重要性を認識しました。単なる業務改善だけでなく、メンバーのモチベーションや心理的安全性にも良い影響があると感じました。

なお、この取り組みは対面で実施し、その後にランチ会を設けるなどしてコミュニケーションを深めたことで、チームとしての一体感がさらに強まりました。ただ、こうした密なコミュニケーションの形は人それぞれの好みがあるため、各チームに合った方法を選ぶべきかと考えています。

Qiita記事として公開することで、同様の課題を抱える他チームの参考になれば幸いです。

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