~ 政府統計76品目 × 47都市で見えた、"合理的"どころか"豪快"だった名古屋の正体 ~
はじめに:「名古屋人はケチ」
名古屋人はケチだと言われる。
だが本当にそうだろうか?
76品目の家計データで検証すると、
そのイメージは──
ほぼすべて否定される。
名古屋は「ケチな街」ではなかった。
むしろ、
東京に最も近い消費構造を持つ都市だった。
※本記事のデータは、e-Stat API(家計調査 品目分類)から47都道府県庁所在市の消費データを自動取得し、Z-score正規化・コサイン類似度で分析。コードは再現可能。
結論から言います
名古屋市の76品目合計支出は825,074円。
47都市中10位。上位1/4だ。
| 順位 | 都市 | 合計支出 |
|---|---|---|
| 1位 | 山形市 | 905,660円 |
| 2位 | 富山市 | 881,960円 |
| 3位 | 東京都区部 | 879,332円 |
| ... | ... | ... |
| 10位 | 名古屋市 | 825,074円 |
| 18位 | 京都市 | 786,479円 |
| 30位 | 大阪市 | 743,136円 |
大阪より8万円多い。京都より4万円多い。
「ケチ」どころか、名古屋は「使っている」側の都市だ。
Part 1: 名古屋が全国トップクラスの品目
まず、名古屋市が全国TOP5に入る品目を見てほしい。
| 順位 | 品目 | 名古屋市 | 全国平均 | 倍率 |
|---|---|---|---|---|
| 2位 | 喫茶代 | 14,897円 | 9,092円 | 164% |
| 2位 | 都市ガス代 | 73,117円 | 34,901円 | 210% |
| 3位 | 映画・演劇等入場料 | 10,684円 | 6,080円 | 176% |
| 3位 | 遊園地入場・乗物代 | 4,081円 | 2,718円 | 150% |
| 4位 | 洋食 | 19,764円 | 13,398円 | 148% |
| 4位 | スポーツクラブ使用料 | 8,429円 | 5,317円 | 159% |
| 5位 | 外国パック旅行費 | 21,958円 | 8,492円 | 259% |
外国旅行、全国平均の2.6倍。
映画3位。遊園地3位。スポーツクラブ4位。洋食4位。
これ、「ケチな街」のデータじゃない。
名古屋は「体験」と「サービス」にお金を使う都市だった。
ここまで見て、「それでもケチなんじゃないか」と思うかもしれない。
だが、この後さらにそのイメージを壊すデータが出てくる。
Part 2: 味噌を買わない名古屋
ここで、名古屋のステレオタイプを統計でぶつけてみる。
「味噌の街」検証
| 品目 | Z-score | 順位 | 判定 |
|---|---|---|---|
| みそ | -1.12 | 43位 | ❌ 買ってない |
| 中華麺 | +0.89 | 10位 | ✅ まあまあ |
| うなぎのかば焼き | +0.49 | 10位 | ✅ さすが |
| えび | -0.40 | 29位 | ❌ 普通 |
味噌、43位。
名古屋の家庭は年間1,798円。
全国平均2,255円。
全国平均の80%しか買っていない。
「味噌の街」で味噌を買わない。
これは矛盾ではない。
おそらく外食(味噌カツ、味噌煮込みうどん)で味噌を摂取しているのだ。
家では買わない。
外で食べる。
ちなみにカレールウは全国最下位(47位)。
1,161円。全国平均1,521円の76%。
名古屋人は家でカレーを作らないらしい。
Part 3: 「車社会」は本当か?
名古屋といえば車社会。100m道路。広い駐車場。
データを見る。
| 指標 | 名古屋 | 順位 | 判定 |
|---|---|---|---|
| ガソリン | 62,641円 | 32位 | ❌ 低い |
| 鉄道運賃 | 36,978円 | 6位 | ✅ 高い! |
| 自動車依存度 | 62.4% | 39位 | ❌ 車社会じゃない |
自動車依存度(車支出 / 全交通費)は47都市中39位。
名古屋は車社会どころか、鉄道をガンガン使っている。
自動車依存度TOP3は徳島(93.4%)、佐賀(92.8%)、松江(91.9%)。地方都市だ。名古屋の62.4%は大都市としては普通のレベル。
「名古屋は車がないと生活できない」——統計上、これは名古屋市内に限れば当てはまらない。
Part 4: 名古屋に最も似ている都市は?
76品目のZ-scoreベクトルでコサイン類似度を計算した。
名古屋市に消費構造が最も似ている都市
| 順位 | 都市 | 類似度 |
|---|---|---|
| 1位 | 東京都区部 | 0.610 |
| 2位 | 京都市 | 0.559 |
| 3位 | 横浜市 | 0.448 |
| 4位 | 奈良市 | 0.420 |
| 5位 | さいたま市 | 0.393 |
| ... | ... | ... |
| 8位 | 大阪市 | 0.279 |
名古屋に最も似ているのは東京(0.610)。
しかも2位が京都(0.559)、3位が横浜(0.448)。
大阪は8位(0.279)。名古屋と大阪は似ていない。
名古屋の消費パターンは「関西型」ではなく「首都圏型」だった。
Part 5: 中部圏で「浮いている」名古屋
大阪記事で「大阪は関西で浮いている」という発見があった。
名古屋も同じだ。
中部圏の相互類似度
| ペア | 類似度 |
|---|---|
| 名古屋 ↔ 岐阜 | 0.273 |
| 名古屋 ↔ 静岡 | 0.166 |
| 名古屋 ↔ 富山 | 0.147 |
| 名古屋 ↔ 津 | -0.120 |
| 名古屋 ↔ 金沢 | -0.239 |
| 名古屋 ↔ 長野 | -0.280 |
*マイナスの類似度。
- 名古屋と津、金沢、長野は「似ていない」どころか「逆の消費構造」。
名古屋は中部圏の盟主のはずだが、消費構造では完全に浮いている。
一方、大阪記事で示した通り大阪の最類似都市は名古屋(0.278)。
しかし名古屋側から見ると大阪は8位(0.279)。
大阪は名古屋を「仲間」だと思っているが、名古屋は東京を向いている。
Part 6: じゃあ「何が」名古屋を特殊にしているのか?
名古屋の消費構造を一言でまとめると:
「生活必需品は合理的に抑え、体験・サービスに集中投下する」
抑えているもの(全国平均以下)
| 品目 | Z-score | 順位 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| みそ | -1.12 | 43位 | 外食で摂取 |
| カレールウ | -1.82 | 47位 | 家で作らない |
| アイスクリーム | -1.38 | 44位 | 意外 |
| 冷凍調理食品 | -0.70 | 39位 | 手抜きしない |
| カップ麺 | -0.47 | 30位 | 同上 |
| 弁当 | -0.27 | 27位 | 外食で済ます |
突出して高いもの(全国平均大幅超)
| 品目 | Z-score | 順位 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 喫茶代 | +2.09 | 2位 | モーニング文化 |
| 映画・演劇 | +1.92 | 3位 | エンタメ消費 |
| 遊園地 | +1.60 | 3位 | レゴランドだけじゃない |
| 洋食 | +1.44 | 4位 | 外食は惜しまない |
| スポーツクラブ | +1.48 | 4位 | 健康投資 |
| 外国旅行 | +1.42 | 5位 | 旅行は豪快 |
カップ麺30位、冷凍食品39位、弁当27位。
名古屋人は「安い食事」で済ませない。
その代わり、喫茶店に行き、映画を観て、旅行に行く。
これは「ケチ」の正反対だ。
「意味のない支出をしない」のであって、「お金を使わない」のではない。
この「無駄を削り、価値に集中する」消費行動は、名古屋が持つ産業構造とも無関係ではないかもしれない。
製造業、とりわけトヨタに代表される合理化文化の影響が、生活レベルにも浸透している可能性がある。
Part 7: 名古屋 vs 東京 vs 大阪 ── 三都市の「性格」
支出構成比の比較
| カテゴリ | 名古屋 | 東京 | 大阪 |
|---|---|---|---|
| 食料 | 24.7% | 24.7% | 27.8% |
| 酒類 | 4.6% | 4.8% | 6.0% |
| 外食 | 14.0% | 14.7% | 12.9% |
| 交通 | 12.2% | 8.0% | 6.4% |
| 教養・娯楽 | 4.5% | 4.8% | 4.0% |
名古屋と東京は食料比率が完全一致(24.7%)。
大阪だけ27.8%で高い。
名古屋は交通費比率が最も高い(12.2%)。
鉄道6位 + ガソリン32位 = 両方使う。
大阪は酒類6.0%と食料27.8%が突出 → 「食べて飲む」街。
東京は外食14.7%と教養娯楽4.8% → 「外で消費する」街。
名古屋は交通12.2%と外食14.0% → 「移動して体験する」街。
代替品シフト率(「安い方をどれだけ選ぶか」)
| ペア | 名古屋 | 東京 | 大阪 | 全国平均 |
|---|---|---|---|---|
| ビール → 発泡酒 | 43.2% | 32.4% | 46.0% | 40.1% |
| 日本酒 → チューハイ | 54.6% | 54.5% | 66.7% | 49.1% |
名古屋の代替品シフト率はほぼ全国平均レベル。大阪より低い。
大阪は「安い方を積極的に選ぶ」。
名古屋は「別に安い方に寄せない」。
**「ケチ」なのは統計的に見ると大阪の方だった。
**(大阪を貶す意図はない。大阪は「価格と価値のズレを許さない」合理的な街だ。)
Part 8: 名古屋の消費構造、一文で言うと
名古屋人は「お金を使わない」のではない。
「意味のない支出をしない」だけだった。
カップ麺の代わりに洋食を食べ、
弁当の代わりに喫茶店でモーニングを食べ、
カレールウの代わりに映画を観に行く。
「ケチ」の正体は「選択と集中」だった。
まとめ:データが暴いた名古屋の県民性
| ステレオタイプ | データの結論 | 判定 |
|---|---|---|
| ケチ | 76品目合計10位、外食12位 | ❌ 否定 |
| 味噌の街 | みそ購入43位 | ❌ 外食で摂取 |
| 車社会 | 自動車依存度39位、鉄道6位 | ❌ 鉄道も使う |
| モーニング文化 | 喫茶代2位 | ✅ ガチ |
| 消費が大阪に似ている | 最類似都市は東京(0.610) | ❌ 東京型 |
5つのステレオタイプのうち、データが支持したのは「モーニング文化」だけだった。
名古屋はケチな街ではない。
「お金を使わない街」でもない。
──ただ、
"使う意味があるものにしか金を使わない街"だった。
だから外からは「ケチ」に見える。
だが実態は、
極めて選択的で、そして時に豪快な消費都市だった。
分析環境
- データソース: 家計調査 品目分類(2020年改定)、e-Stat API
- 対象: 47都道府県庁所在市 × 76品目(2024年 四半期平均)
- 手法: Z-score正規化、コサイン類似度
- 言語: Python(pandas, scipy)
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