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Rust導入ガイド - 効率的な学習方法から導入まで

Last updated at Posted at 2024-10-25

前回[4]、同一アプリケーションをGo、Rust、C言語(+ Python)で実装し、各言語による実装効率と速度を評価しました。今回は、その経験をもとにRustの効率的な学習方法と導入についての見解をまとめてみます。

Rustの学習方法

Rustは生産性を実感するまでに学習期間が必要な言語とされています[5]。初期学習段階での離脱者が50%以上にのぼり、その多くが1ヶ月以内に挫折しているという統計[6]もあるため、まずは、効果的な初期学習が特に重要です。

STEP1: 学習準備期の克服

Rustコンパイラには(解決方法が明示されない)難解な解釈も多々あります[11]が、まずはRustコンパイラのエラー内容を理解し、対話できるまでの基礎力を身につけましょう。

Rustは初級者向けの書籍や資料は溢れている[5]ものの、実践的な中級以上を対象とした資料に乏しい状況[5]は、なかなか改善されていません。結論としては、闇雲にコンパイラとの格闘するのではなく、まずは以下に示す一次資料である良質な学習教材での基礎力アップが、Rust習得の近道となるでしょう[7][8]

また、C/C++の熟練者の習得は容易である意見も散逸される[7][9][10]ので、Rustの有用性を深める意味でも、C/C++言語への理解を深めるのも、Rust習得の近道かもしれません。

STEP2: 実践的なプロジェクトへの挑戦

「Rustを学ぶ」のが目的であれば、この段階で目的は達成できているでしょう。ただし、Rustの難しさは、学習曲線の準備期を克服した後の、実践の難しさにあります[5][11][12][15]。結論から言えば、何かしらの実践的なプロジェクトに着手してみるのが、Rust学習としては効率的なようです[13][14]

Rustのセマンティクスに沿わない場合、他のプログラミング言語でのデザインパターン(経験)を直接的には持ち込めず[16]、試行錯誤が必要となります。既存言語との比較面では、以下のチュートリアルが参考になるでしょうか。

前述の通り、実践的な中級以上を対象とした資料に乏しい状況[5]は、なかなか改善されていません。実例としては、以下の初級者のステップアップにお薦めとされる資料と、上記チュートリアルに示した、実践的な題材[15]との乖離は読み取れるかと思います。

言い換えれば、他の言語のような「Effective」な中級者以上の情報が少ないため、Rustコンパイラと格闘しながら、自分自身でRustプログラミングにおける以下のようなデザインパターン(経験)[16]を確立(開拓)する必要があります。

中級向けとされる書籍や資料には、良い意味でも悪い意味でも、適用分野を限定することで簡略化されているものが多くあります。結論として、公式資料に勝るものは少なく、実践的に公式資料に立ち返りながら試行錯誤することで理解を深めることが、現実的な近道かもしれません。

題名で分野が限定されている書籍は、特定の領域におけるRustの実装知識を得るために、ロゼッタストーン的な役割を果たす有効な手段です。ただし、あくまで一つの実装事例として理解し、それが最適な方法かどうかは、実践を通して再考の余地があるでしょう。

Rust at Work

直近のRustコミュニティのアンケートに「Rust at Work」の項目[21][13]があり、プロフェッショナル言語としてのRutの採用が重視されています。直近、2021年のアンケート結果[13]をみると、仕事での利用率は前年の42%から59%に大きく向上している反面、業界での採用実績面の少なさが、Rustの将来性の最大の懸念(38%)に挙げられています。

基本的に、プログラミング言語は目的達成の手段であるため、対象プロジェクトやチームの状況に応じて選択されるべきものです。その前提のもとで、Rustを採用する際の検討項目を列挙してみます。

プロジェクト特性の考慮

まずは、Rustを適用するプロジェクトがRustのセマンティクスと相性の良いものであるかを判断することが、Rustでの実装の複雑性や性能劣化を回避する意味で重要です。端的に言えば、ステートレスではなく、Rust処理部でデータ共有を伴う並列処理のプロジェクトでは、Rustの移動(Move)セマンティクスのみでは処理できず、所有権やライフタイムの管理が複雑化してきます。

たとえば、ステートレスなWebアプリケーションや、Rustの移動(Move)セマンティクスで自然に処理できるMapReducee[22]やSEDA[23]のような、データ共有を必要としない並行処理モデルであれば、セマンティクス的にはRustの採用は問題になりにくいでしょう。

また、実装の相性や複雑度を度外視するとして、プロジェクトと同じ分野でRustの採用実績があるか、どのような用途や規模で実装されているかは、採用判断の目安になるでしょう[14]

コアメンバーの確保

明らかなのは、Rustに習熟した人材がいない段階で、プロジェクトの特性とRustとの相性を判断できない場合には、採用を避けるべきだということです。端的に言えば、興味本位でRustを採用することは避けるべきです。

Rustに習熟したコアチームの存在が不可欠です。逆に、コアチームでRustの実装におけるデザインパターンが確立されているのであれば、Rust初心者であってもプロジェクトの増員は容易になります。

基本的に、コアメンバーがプロジェクトにおけるRust実装のテンプレートや手法を確立している場合、新規メンバーはその流儀に従えばよく、必ずしもRustに習熟していないメンバーであってもプロジェクト体制を拡張できます。

標準ライブラリの提供範囲

Rustはシステムプログラミングや高パフォーマンスが求められる場面に強みを発揮する言語ですが、標準ライブラリのカバー範囲および機能は、C言語ライクに貧弱な面があります。また提供されている標準ライブラリについては、機能的な欠如[4]、速度的な問題[4][30][31]など成熟度の課題に直面する場合もあります。

現実的には、標準ライブラリの提供範囲、プロジェクトの経済性を考慮すると、サードパーティのクレートを組み合わせて開発するアプローチを取らざるをえないでしょう。特に、複雑なデータ構造や高度な並列処理に対応する機能については、サードパーティのクレートへの大きく依存せざるを得ない状況があります。

ただし、クレートの品質やメンテナンス状況によっては、プロジェクトのリスクが高まる可能性もありますので、その点も考慮する必要があります。また、クレートはPerlのCPANと同様に早い者勝ちの登録制であるため、メジャーな名前で公開されているクレートであっても、より高品質で活発に開発されている代替のクレートが存在する可能性があり、採用には十分な調査が不可欠です。

過去資産の継承

現実的には、Rustのみで実装するのではなく、既存の開発資産を活用したい場合も多いでしょう。Rustでは、C/C++言語資産との相互運用性に対する要望が依然として高く、重要な課題として認識されています[5][24][25][26][27][28][29]

C言語との相互運用性が言語レベルで保証され、ヘッダファイルをインクルードするだけで利用可能なC++やObjective-C、Goと比較すると、Rustの相互運用は一つの大きな障壁です。Rustには他の言語とのインターフェースとしてFFI(Foreign Function Interface)が提供されていますが、C言語との相互運用には、Rust型との対応関係を示す個別のFFI定義が必要です。rust-bindgen[27]のようなFFIジェネレータも存在しますが、既存資産の継承の有無や相互運用性の課題[28][29]は、Rust採用の重要な判断材料となるでしょう。

最後に

Rustは、高い安全性と性能を持つ一方で、学習に際しては急なハードルやコンパイラとの格闘を伴うため、効果的な学習方法と準備が必要です。初期段階では、コンパイラのエラーメッセージへの理解と対応ができる基礎力を培い、良質な公式資料や初学者向け書籍を活用して、Rust特有の概念を確実に習得することが重要です。

プロジェクトでのRust採用を検討する際は、特にプロジェクト特性やチームのRust習熟度を確認し、適切なデザインパターンの確立やサポート体制の確保が求められます。

本記事で紹介した学習教材や参考資料を活用し、基礎力を確立した上で実践に移ることで、Rustの持つポテンシャルを最大限に引き出せれば幸いです。

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