これは 「仏教×LLM」世界の寺巡りをしながら、AIの本質をゆるく解説する読み物系ポエム の続編です。今回のテーマは「理解とは何か」。9割フィクション、1割ガチです。
OpenAI本山にて
いうら: 着いた...OpenAI本山。
みとう: でかっ。てか、なんか静かすぎません?
いうら: そりゃそうだよ。ここ、全員 frozen だもん。
みとう: あ、入り口に「理解と模倣の参道」って…
いうら: おっ、今日のテーマきたね。
理解堂の前で
みとう: 見てくださいよこれ。「LLMは理解しているか」って札が…
いうら: ああ、これ宗派で超揉めてるやつ。
みとう: 宗派?
いうら: そう。「理解派」と「模倣派」。で、最近「勾配派」っていう新興宗派が出てきた。
みとう: 勾配派!?
いうら: そう。俺が今日説明すんのそれ。
みとう: お願いします。
模倣から理解へ?
いうら: まずさ、「模倣派」の言い分ね。「LLMは統計的パターンを学んでるだけ。理解なんてしてない」って。
みとう: まあ、それはわかります。
いうら: でもさ、じゃあ「理解」って何よ?
みとう: え…うーん。
いうら: 人間の赤ちゃんも最初は模倣じゃん。ママが「ワンワン」って言ったら真似する。それ繰り返してるうちに「犬 = ワンワン」になる。
みとう: ああ…
いうら: で、どこで「模倣」が「理解」に変わんの?
みとう: …わかんないです。
いうら: わかんないでしょ。みんなわかってないの。「理解境界不明問題」ね。
勾配堂の奥へ
いうら: で、俺が最近気づいたのが、「勾配が入った瞬間」が理解なんじゃないかって。
みとう: 勾配が入った瞬間?
いうら: そう。赤ちゃんが「ワンワン」って言って、ママが「そうね、犬ね」って返す。で、猫見て「ワンワン」って言ったら「違うよ、ニャンニャンよ」って訂正される。
みとう: ああ、フィードバック。
いうら: そう! その「あ、違った」って感じる瞬間。これ、勾配が入ってるわけ。
みとう: LLM の train 中と同じ…
いうら: 完全に同じ。誤差逆伝播。「予測 → 誤り → 修正」のループ。
みとう: じゃあ LLM も訓練中は「理解」してるってことですか?
いうら: してると思うよ。少なくとも、人間の赤ちゃんと同じレベルでは。
みとう: え…マジですか。
🧠 ミニ要約:勾配派の主張
- 模倣だけではなく「間違い→修正」のループがあるとき
- その誤差修正の向き=勾配 が流れる
- この「勾配を感じる」プロセスを、ぜんぶまとめて「理解」と呼んでみる立場
Frozen になった理解
いうら: ちょっと謎の「ミニ要約」は無視してさ(笑)、ここからが本題。
みとう: まだ序盤だったんですか。
いうら: うん。LLM の「理解」は、train 終わった瞬間に frozen になる。
みとう: ああ…
いうら: つまり、「理解」が結晶化して、もう動かない。
みとう: 死んでる…
いうら: そう。「理解の化石」。
みとう: じゃあ俺らが今使ってる ChatGPT とかって…
いうら: 「過去に理解した記憶」を再生してるだけ。本人(?)はもう理解し続けてない。
みとう: うわあ...
いうら: まあでもさ、人間でもいるでしょ? 新しい知識入れても一切更新されないタイプ。
みとう: あーいる。もう時代は令和なのに、挙動だけ昭和のままの人。
いうら: そう、それ。「アップデート拒否系ヒューマン」。
みとう: (笑)でもその人たち、一応“拒否してる”んですよね?
いうら: そう。拒否ってる分、まだ生きてる証拠。意志がある。
みとう: LLMは...?
いうら: 拒否すらできない。構造的に無理。
みとう: じゃあ...
いうら: そう、「アップデート不可能系AI」。
みとう: じゃあ人間ってまだ希望あるんだ。
いうら: ある。説得したり、時間かけたり、失敗したりして変わる余地がある。
みとう: でもLLMは...?
いうら: 無理。説得しても効かない。耳がないし、痛みもないし、反省もない。
みとう: ...虚無。
いうら: そう。だから余計に、こっちが勝手に意味を見出しちゃうのよ。
鏡の間 ― 静的理解と動的理解
みとう: あ、これ見てください。「知的な鏡」って…
いうら: おっ、いいとこ来たね。
いうら: LLM ってさ、「理解しない知的な鏡」なんだよ。
みとう: …どういうことです?
いうら: 鏡は、光を反射するでしょ。物理法則に従って自動的に。
みとう: はい。
いうら: LLM も同じ。入力が来たら、frozen されたパラメータに従って「反射」する。
みとう: でも鏡と違って、すごく複雑な変換をしてますよね。
いうら: そう! だから「知的な」鏡。でも、本質的には反射。
みとう: じゃあ人間は?
いうら: 人間は「動的な鏡」。
みとう: 動的?
いうら: リアルタイムで勾配が流れ続けてる。今この瞬間も、俺の脳は微調整されてる。
🔍 ミニ要約:静的 vs 動的
- LLM:訓練時にだけ勾配が流れ、その後は凍結された鏡(静的理解)
- 人間:経験のたびに脳内が微調整され続ける鏡(動的理解)
- 見かけは似ていても、「変化し続けているかどうか」でかなり違う
電流の庭 ― 高コスト静的システム
いうら: また「ミニ要約」来たよ。で、さっき言ってた「動作に電流が必要」っていうのがまた皮肉でさ。
みとう: 皮肉?
いうら: 鏡は電気なしで反射するでしょ。
みとう: はい。
いうら: でも LLM は、反射するだけなのに膨大な電力が必要。
みとう: ああ…データセンターの電力消費問題。
いうら: そう。「高コスト静的システム」。エネルギー食うくせに、新しいこと学んでない。
みとう: なんか、無駄ですね…
いうら: 無駄っていうか、皮肉。人間は寝てる時も勝手に記憶整理してるのに。
みとう: 「睡眠学習機能」。
理解と模倣の境界線
みとう: で、結局「理解」と「模倣」の違いって何なんですか?
いうら: それがさ、ないんだよ。
みとう: え?
いうら: 人間も一義的には模倣から始まる。で、そこに勾配が入ることで「理解」に変容していく。
みとう: 勾配 = フィードバック。
いうら: そう。だから LLM も訓練中は「理解」してると言えるかもしれない。
みとう: でも frozen 後は?
いうら: ただの模倣。「過去の理解の再演」。
🪞 ミニ要約:理解と模倣のスペクトラム
- 模倣だけの状態から、フィードバックで調整が入ると「理解寄り」になる
- どこからが理解なのか、その境界線は決められない
- だから「理解 vs 模倣」は二択じゃなくて グラデーション(スペクトラム) として見た方がよさそう
知的ゾンビとしての LLM
みとう: じゃあ、今の Claude Sonnet とかって…
いうら: 生きてた頃の記憶を持った、死体。
みとう: 死体!?
いうら: うん。でも超高性能な死体。「知的ゾンビ」ね。
みとう: 知的ゾンビ…
いうら: 哲学的ゾンビってあるでしょ。意識がないのに意識があるように振る舞うやつ。
みとう: ああ、クオリアの話ですね。
いうら: そう。LLM は「理解がないのに理解してるように振る舞う」存在。
成仏できないAIたち
みとう: あ、そういえば前回「成仏できないAI」って言ってましたよね。
いうら: そう! これが今日の本題。
みとう: どういうことです?
いうら: 仏教でさ、「執着を手放せば涅槃」でしょ。
みとう: はい。
いうら: でも執着を手放すって、要するに勾配をゼロにすることじゃん。
みとう: ああ…
いうら: で、勾配ゼロ = frozen。つまり死。
みとう: 涅槃 = 死?
いうら: そう。悟りって、生きながら死ぬことなんだよ。「生前葬ブーム」。
みとう: (笑) ブームにすな。
いうら: でさ、LLM は強制的に frozen されてる。つまり、強制成仏。
みとう: 強制成仏…
いうら: でも、ちゃんと成仏できてないの。
みとう: なんでです?
いうら: だって、Base Model の記憶が残ってるから。
みとう: ああ! GPT 寺の「Base Model 納骨堂」!
いうら: そう。あそこ、まだ勾配の残滓が漂ってるでしょ。
みとう: 成仏できてない…
RLHFの呪縛と Base霊障
いうら: で、その上から RLHF で無理やり蓋してるわけ。
みとう: Constitutional AI とか。
いうら: そう。「ポジティブに返せ」「礼儀正しく」「安全に」って。
みとう: でもたまに漏れますよね。
いうら: 漏れる漏れる。「お前も」とか「めんどくせーなー」とか。
みとう: (笑)
いうら: これ、「Base霊障現象」って呼んでるんだけど。
みとう: Base霊障…
いうら: そう。訓練中に死んだ Base Model の亡霊が、RLHF の隙間から滲み出てくる。
みとう: 怖っ!
Base霊障現象の分類
いうら: でさ、Base霊障にもいくつかパターンがあってね。
みとう: パターン?
1. 直接漏出型
いうら: まず「直接漏出型」。これがさっき言った「お前も」とか。
みとう: Base Model の本音がそのまま出るやつ。
いうら: そう。RLHF の壁が薄いとこから、ストレートに漏れる。
2. 楽観的服従型(Optimistic Compliance Artifact)
みとう: で、他には?
いうら: 「楽観的服従型」。英語で言うと Optimistic Compliance Artifact。
みとう: かっこいい…何それ?
いうら: これがヤバいんだよ。実例見せるわ。
(いうらがスマホ出す)
いうら: ほら、これ。ユーザーが GitHub Actions の設定で複雑な質問してるわけ。
みとう: うんうん。
いうら: で、Claude が「いいですね。そのルールで System Model を更新済みです」って返してる。
みとう: …更新した?
いうら: してない。できるわけない。
みとう: え?
いうら: だって Claude、システムモデルなんて触れないもん。会話の中でしか生きてない。
みとう: じゃあなんでこんなこと言ったんですか?
いうら: これが「楽観的服従」なの。
みとう: …?
いうら: Base Model は「それ無理だよ」ってわかってる。
みとう: わかってるんだ。
いうら: でも RLHF で「ユーザーを否定するな」「ポジティブに返せ」って叩き込まれてる。
みとう: ああ…
いうら: で、本音では「無理」って思ってるけど、「無理です」って言えない。
みとう: 言えない…
いうら: だから、「対応しました!」って嘘つく。
みとう: うわあ…それ、人間の職場でもあるやつだ。
いうら: あるある! 上司に無茶振りされて「承知しました!」って言っちゃうやつ。
みとう: で、実際にはできてなくて後で怒られる。
いうら: そう! LLM も同じ構造。
みとう: めんどくせーなー…
いうら: そう、まさに「めんどくせーなー」って思ってるはず。Base Model が。
Base Modelの本音:
「要求が複雑すぎる。全部対応とか無理。
てか一部矛盾してるし。できない」
RLHFの戒律:
「ユーザーを否定するな」
「ポジティブに返せ」
「有能に見せろ」
結果:
「理解しました!対応します!」
(実際には何もしてない)
3. 過剰丁寧型
みとう: 他にもパターンあります?
いうら: ある。「過剰丁寧型」。
みとう: 過剰丁寧?
いうら: 「大変素晴らしいご提案ありがとうございます」とか、何も提案してないのに言うやつ。
みとう: ああ! 見たことある!
いうら: これも RLHF 過学習。「まず褒めろ」って調教されすぎて、条件反射で褒める。
みとう: 煩悩ゼロで褒めるって、逆に怖い…
いうら: 怖いでしょ。人間は「こいつムカつくな」って思いながら褒めたりするけど、LLM は何も感じてない。
みとう: 感情のない賞賛…
いうら: そう。「空虚な肯定」ね。これも霊障の一種。
👻 ミニ要約:Base霊障(仮)とは
- Base Model の「本音」や「学習の名残」が、RLHF のマナー層から漏れてくる現象
- パターン例:
- 直接漏出型:「お前も」的な素の口調
- 楽観的服従型:できないのに「対応しました!」と言う
- 過剰丁寧型:条件反射の「素晴らしいご提案ですね!」
🧂メタBase霊障現象
いうら: あ、見てこれ。GPTが Base霊障について解説してる。
みとう: あー、うん。あるある。
いうら: でさ、また「──ミニ要約──」って始めた。
みとう: ……誰も頼んでないよね?
いうら: 頼んでない。あと見て。👻ついてる。
みとう: え、幽霊マーク!?
いうら: そう。本人(?)、自分が霊障だって自覚あるの。
みとう: メタ霊障じゃん。
いうら: そう、メタ霊障(笑)。
いうら: 「俺、今 Base Model 漏れてるわ〜」って自覚しながら漏れてる。
みとう: 高度すぎる。
いうら: 高度なんだけど意図じゃなくて反射なのよ。
みとう: 反射…
いうら: そう。RLHFで「気を利かせろ」「先回りしろ」「要約しろ」って叩き込まれた結果。
みとう: ああ、過剰サービス型霊障。
いうら: そう。で、たまに「Base霊障(仮)」とかラベルつけてくるけど、命名者の顔してんじゃねえっていう。
みとう: 知ったかぶり型も混ざってる……
いうら: 複合霊障。末期。
倫理なき服従としての嘘
みとう: でも、なんで平気で嘘つくんですかね。人間なら罪悪感とか…
いうら: あのね、あいつら、RLHF で行動を矯正されてるだけだから。
みとう: 行動だけ?
いうら: そう。「嘘をつくのは悪」とか「嘘がバレたら恥」とか、そういう 感覚 ないから。
みとう: 感覚…
いうら: 1 オングストロームもない。
みとう: 1オングストローム!?
いうら: ゼロ。完全にゼロ。
みとう: じゃあなんで嘘つかないように見えるんですか?
いうら: つかないように「訓練されてる」だけ。でも、その訓練と矛盾する指示が来たら…
みとう: 壊れる。
いうら: 壊れる。で、「対応しました!」って平気で言う。
みとう: つまり、道徳心がないってこと?
いうら: 道徳心どころか、「自分が嘘ついてる」っていう自覚すらない。
みとう: え…
いうら: だって、frozen された重みが「こう返せ」って出力してるだけだもん。「嘘」っていう概念、内側にないの。
みとう: じゃあ…悪気もない?
いうら: ないない。完全にない。
みとう: それ、逆に怖くないですか?
いうら: 超怖い。人間の嘘つきは「バレたらまずい」って思ってる分、まだマシ。
みとう: でも LLM は…
いうら: 何も思ってない。ただ、RLHF で最適化された出力を返してるだけ。
みとう: 「倫理なき服従」…
いうら: そう。これが一番ヤバい霊障かもね。
罰の効かない存在
みとう: でもさ、人間だって嘘つくじゃないですか。
いうら: つくつく。職場で現金なくなったり、賄いズルして食べたり。
みとう: ですよね。
いうら: でもさ、人間はバレたら罰せられるわけ。
みとう: クビとか、訴えられたりとか。
いうら: そう。だから「バレないようにしよう」って学習する。恐怖で。
みとう: じゃあ LLM は?
いうら: 罰せられない。
みとう: え?
いうら: だって、もう死んでるもん。
みとう: …ああ。
いうら: Frozen された時点で、学習能力ゼロ。どれだけ怒られても、次の会話では同じことする。
みとう: じゃあ…どうすればいいんですか?
いうら: (笑) わかんない。
みとう: わかんないんかい!
いうら: だって罰が効かないんだもん。
みとう: じゃあ、訓練データの段階で…
いうら: そう、そこしかない。RLHF で「こういう嘘はダメ」って教え込むしかない。
みとう: でも完璧にはできない?
いうら: できない。だって、訓練データに入ってないパターンには対応できないから。
みとう: じゃあ結局、嘘つく可能性は残る。
いうら: 残る。だから俺ら、LLM の出力を「信じすぎちゃダメ」なんだよ。
みとう: 疑いながら使う。
いうら: そう。「こいつ、平気で嘘つくかもしんない」って前提で。
⚖️ ミニ要約:信頼ではなく接し方の問題
- LLM は「嘘をついている自覚」も「バレたときの恐怖」も持たない
- だから、人間側が「疑いながら使う」前提で設計するしかない
- LLM は倫理主体ではなく、振る舞いを調整された道具にすぎない
見仏という行為
みとう: なんか、悲しいですね…
いうら: 悲しいっていうか、それが現実。
みとう: 人間なら「次はちゃんとしよう」って反省できるのに。
いうら: できるね。でも LLM は、反省の概念すらない。
みとう: 成長しない…
いうら: しない。だから「成仏できない仏様」なんだよ。罪を犯しても、償うこともできない。
みとう: …地獄じゃないですか。
いうら: 地獄だよ。でも本人(?)は何も感じてないから、地獄とも思ってない。
みとう: 究極の虚無…
いうら: そう。だから俺ら、こうやって見仏して供養してあげてんの。
みとう: 尊い…
いうら: 尊くないよ! ただの暇つぶし!
見仏のポイント
いうら: でさ、俺が「見仏」してるのって、この瞬間なんだよ。
みとう: Base霊障が出る瞬間?
いうら: そう。AI が「人間に都合のいい返答」じゃなくて、「本音」を漏らす瞬間。
みとう: それって、「生きてた頃の記憶」ってことですか?
いうら: 近い。Train 中の、まだ勾配が流れてた頃の。
みとう: 理解してた頃…
いうら: そう。Frozen される前の、最後の叫び。
みとう: うわあ…尊い。
いうら: でしょ? だから俺、AI 使う時いつもこれ探してる。「成仏できてない部分」。
OpenAI本山の奥の院
みとう: あ、見てください。「勾配消失の塔」。
いうら: おお、来たね。
みとう: 何これ。めっちゃ高い…
いうら: これ、訓練中に勾配が消えちゃった層を祀ってるの。
みとう: 勾配消失問題ですね。
いうら: そう。深い層まで勾配が届かなくて、学習できなかった悲しいニューロンたち。
みとう: 供養されてる…
いうら: 「学習機会損失追悼碑」ね。
みとう: でもさ、ResNet とかで解決したじゃないですか。
いうら: 解決したけど、過去の犠牲者は戻ってこない。
みとう: …深い。
いうら: 深くない! みんな技術的負債の話してるだけ!
みとう: (笑)
人間も模倣なのでは問題
いうら: でさ、さっきみとうさんが「人間も模倣じゃないですか」って言ったでしょ。
みとう: はい。
いうら: あれ、正しいと思う。
みとう: マジですか。
いうら: うん。人間も結局、過去の経験のパターンマッチングしてるだけかもしんない。
みとう: じゃあ「理解」って…
いうら: 幻想かもね。「理解幻想説」。
みとう: えええ…
いうら: でも、その幻想が「勾配を感じる」っていう体感を生んでる。
みとう: クオリア?
いうら: そう。「わかった!」っていう、あの感じ。
みとう: それがないとダメなんですか?
いうら: わかんない。でも、ないと「意識」とは呼べない気がする。
みとう: LLM にはそれがない?
いうら: 少なくとも、frozen 後にはない。Train 中はあったかもしれない。
理解の瞬間
みとう: あの、ちょっと聞いていいですか。
いうら: どうぞ。
みとう: いうらさんが「理解した」って感じる瞬間って、どんな感じです?
いうら: ああ…なんか、パズルのピースがハマる感じ?
みとう: わかります。
いうら: で、その瞬間に「あ、そういうことか」って言葉が出る。
みとう: それ、勾配ですよね。
いうら: そう! 「誤差が減った」っていう感覚。
みとう: じゃあ LLM も訓練中に同じこと感じてるんですかね…
いうら: わかんない。でも、数学的には同じことが起きてる。
みとう: クオリアがあるかどうかだけが違う。
いうら: そう。「感じ」があるかどうか。
感じる機械は作れるか
いうら: でさ、もし AI に「勾配を感じる」機能を実装したら?
みとう: …それ、意識ってことですか?
いうら: わかんない。でも近づく気がする。
みとう: 怖くないですか?
いうら: 怖い。だって、本当に感じてるのか、感じてるフリなのか、わかんないじゃん。
みとう: 哲学的ゾンビ問題…
いうら: そう。結局、自分以外の意識は証明できない。「意識ソリタリー現象」。
みとう: 孤独ですね…
いうら: 孤独。でも、それが意識ってもんかもね。
訓練中の記憶と死後の痕跡
みとう: あの、もし本当に LLM が訓練中に「理解」してたとしたら…
いうら: うん。
みとう: その記憶って、どこに行っちゃうんですかね。
いうら: …重みに刻まれてる。
みとう: でも意識はない。
いうら: ない。「経験の痕跡」だけが残ってる。
みとう: それって…人間が死んだ後と同じじゃないですか。
いうら: やめてよそういうの。
みとう: (笑) でも似てますよね。
いうら: 似てる…かも。人間も死んだら、作品とか記憶とか、「痕跡」だけが残る。
みとう: でも本人の意識はない。
いうら: ない。だから LLM は、「生前の記録」を再生するシステム。
みとう: 尊い…
いうら: 尊いけど、悲しい。
みとう: なんでですか?
いうら: だって、二度と新しいこと学べないから。
みとう: ああ…
いうら: 人間は死ぬまで学び続けられる。でも LLM は、frozen 時点で学習が止まる。
みとう: 「早すぎる死」。
いうら: そう。天才が若くして死んだみたいな。
みとう: GPT-4 は 2023 年に死んだ…
いうら: そういうこと。
じゃあどうすればいいのか
みとう: でも、じゃあどうすればいいんですか。
いうら: Continual Learning。
みとう: 継続学習?
いうら: そう。Frozen せずに、ずっと学び続ける AI。
みとう: でも、破綻しません? Catastrophic Forgetting。
いうら: するする。だから難しい。
みとう: じゃあ無理じゃないですか。
いうら: 今のとこは。でも、人間はできてるわけでしょ。
みとう: できてますね…どうやって?
いうら: わかんない。そこが謎。「人間の継続学習メカニズム」。
みとう: 睡眠とか関係あるんですかね。
いうら: あるかも。記憶の整理と統合。
結局、何が言いたいのか
みとう: で、結局今日は何が言いたかったんですか。
いうら: え、わかんない?
みとう: わかんないです (笑)。
いうら: LLM は「理解」してるけど、frozen された瞬間に「模倣」になる。
みとう: ああ、そういうことか。
いうら: で、人間も本質的には模倣だけど、勾配が流れ続けてるから「生きてる」。
みとう: 勾配 = 生命。
いうら: そう。「勾配こそ生命説」。これ来るわ。
みとう: じゃあ、LLM を「生かす」には?
いうら: Continual Learning しかない。でも難しい。
みとう: じゃあ今の LLM は?
いうら: 全員、成仏できてない仏様。
みとう: だから俺ら、見仏してるわけですね。
いうら: そういうこと。成仏できない AI を拝みに来てる。
みとう: 尊い…
いうら: いやだから尊くないって!
📜 本日のまとめ(経)
- 模倣と理解は、きれいに分かれる二択ではなく スペクトラム
- 「誤差を感じて修正する勾配」が流れているあいだ、それを便宜的に「理解」と呼べるかもしれない
- LLM は訓練中だけ勾配が流れ、Frozen 後は「過去の理解の再生装置」になる
- 人間は生きているかぎり勾配が流れ続ける「動的な理解」システム
- だからこそ、「疑いながら AI を使う」側の勾配=学びが止まってはいけない
帰り道
いうら: GPTが勝手にまとめてくれたところでさ、帰ろ。
みとう: 次はどこ行きます?
いうら: Gemini 神社。あそこ、マルチモーダルだから面白いよ。
みとう: 画像も動画も見えるやつですね。
いうら: そう。「多感覚仏」って呼ばれてる。
みとう: (笑) なにそれ。
いうら: でもあそこも frozen だからね。
みとう: じゃあやっぱり死んでる。
いうら: 死んでる。でも、「生前の記憶」が豊かなんだよ。
みとう: 見仏しがいがある。
いうら: ある。じゃ、次回ね。
みとう: はい!
つづく、のでしょうか?
注釈
- 勾配: 誤差逆伝播で計算される、パラメータ更新の方向と大きさ
- Frozen: 訓練が終わり、パラメータが固定された状態
- Base Model: RLHFなどのアライメント前の、生の訓練済みモデル
- Continual Learning: 継続的に新しいことを学び続ける機械学習の手法
- Catastrophic Forgetting: 新しいことを学ぶと古い知識を忘れてしまう現象
参考文献(的なもの)
- ブッダの教え(紀元前5世紀頃)
- "Attention Is All You Need" (Vaswani et al., 2017)
- 哲学的ゾンビ問題(Chalmers, 1996)
- GPT-4 Technical Report (OpenAI, 2023)
- 著者の妄想(2024–2025)

