はじめに
自動運転AIチャレンジ2026の参加に向けた開発環境の準備について解説します。🚗
2026年の大会では、大きく分けて以下の2つの部門が用意されています。
- Sim to Real SW 部門
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End to End 部門
- ※End to End 部門では、シミュレータであるAWSIMのカメラセンサーを使用するため、NVIDIA製のGPUが必須となります。
自動運転AIチャレンジにおける公式の開発環境はLinux(Ubuntu)です。本記事では、これからチャレンジを始める初心者の方向けに、開発の土台となるLinux環境の準備方法を手順を追って解説します。💻
Linux環境構築
WindowsノートPCを使用している場合の環境構築
Windows OSのノートPCを使用し、「Sim to Real SW 部門」への参加を想定する場合、主に2つのアプローチが考えられます。それぞれの特徴や注意点を確認します。🧐
方法1:USBメモリにLinux(Ubuntu)をインストールする🙂
個人所有のPCを使用し、内蔵ディスクのWindows環境を残したまま、Linux環境を構築したい場合にお勧めの方法です。
【メリット】
- Intel内蔵グラフィックチップでも、AWSIMによる3D描画の表示が可能です。
- 内蔵ディスクのパーティションを変更してデュアルブート化する手法に比べ、Windows側のシステムに影響を与えるリスクが小さく、安全に試すことが可能です。
⚠️ 重要な注意点:BitLockerの回復キーについて
ノートPC(特にWindows 11)は、工場出荷時の初期状態から暗号化機能(BitLocker または デバイスの暗号化)が有効になっているケースが多く見られます。
BitLockerは、普段と異なるデバイス(今回作成するUbuntuのUSBメモリなど)からの起動を検知すると、セキュリティ保護のためにロック(回復画面)をかける仕組みになっています。🔐
そのため、後述する**BIOSの設定変更(USBブートの有効化やセキュアブートの無効化)を行った直後などに、「回復キー(48桁の数字)」**の入力を求められることがあります。あらかじめMicrosoftアカウント等から回復キーを控えておくと安心です。
💡 回復キーの要求を事前に回避する方法
BIOSの設定変更を行う前に、Windows上でBitLockerの保護を「一時停止」または「完全に解除(無効化)」しておくことで、回復キーの要求画面を未然に防ぐことが可能です。環境に合わせて以下のいずれかの手順を実施します。
方法A:BitLockerの保護を「一時停止」する(安全な手順)
システムを再起動するまでの間、BitLockerのデバイス構成チェックを一時的に無効にします。
- コントロールパネルを開き、「システムとセキュリティ」から「BitLocker ドライブ暗号化」へ進みます。
- 対象ドライブ(通常はCドライブ)の横にある「保護の一時停止」を選択します。
- USBメモリでの起動やBIOS設定の変更がすべて完了した後は、同じコントロールパネルの画面から「保護の再開」を実施します。
方法B:BitLockerを完全に「無効化(解除)」する
BitLockerによる暗号化自体を完全にオフにする方法です。
- Windowsの「設定」を開き、「プライバシーとセキュリティ」から「デバイスの暗号化」へ進み、「オフ」に切り替えます。
- または、コントロールパネルの「BitLocker ドライブ暗号化」から「BitLocker を無効にする」を選択します。
※暗号化の解除(復号)には時間がかかることがあります。途中で電源が切れるとデータ破損のおそれがあるため、完了するまでPCの電源を切らずに待ちます。
USBメモリを使ったUbuntu OSのインストール手順
ここでは、「USBメモリへのインストール」の具体的な手順を解説します。
1. 準備するもの
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USBメモリ(この記事ではSanDisk製の128GBを使用しました)
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UbuntuのISOファイル (Ubuntu 22.04 LTS)
- OSのインストールデータとなるISOファイルが必要です。以下のUbuntu公式リリース一覧ページにアクセスし、「Desktop image」のリンクから
ubuntu-22.04.x-desktop-amd64.isoをあらかじめダウンロードしておきます。ファイルサイズが大きいため(数GB程度)、通信環境の安定した場所での作業をお勧めします。🌐 - 🔗 Ubuntu 22.04 LTS (Jammy Jellyfish) 公式ダウンロードページ
- OSのインストールデータとなるISOファイルが必要です。以下のUbuntu公式リリース一覧ページにアクセスし、「Desktop image」のリンクから
2. USBメモリへの書き込み方法(インストールの種類)
USBメモリでUbuntuを動かすには、主に2つの方法があります。
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永続ストレージ付きLive USB(手軽でお勧めの方法)
Ubuntuの起動ディスクにデータを保存できる領域を作る方法です。USBメモリ内に保存したデータをしっかりと保持できます。 -
USBメモリへのフルインストール
PCの内蔵ディスクと同じように完全にインストールする方法ですが、インストーラ用とインストール先用の合計2本のUSBメモリが必要になります。
今回は、より手順が容易な**「1. 永続ストレージ付きLive USB」**の作成方法を、Windows用の定番ツール「Rufus(ルーファス)」を用いて解説します。
3. Rufusを使った書き込み手順
Rufusは無料で利用でき、動作が安定しているため広く活用されているツールです。
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Rufusのダウンロード
Rufusの公式サイトから最新版(インストール不要のポータブル版で差し支えありません)をダウンロードして起動します。 -
設定項目の入力
- デバイス: 書き込みを行いたいUSBメモリを間違いなく選択します。
- ブートの種類: 右側にある「選択」ボタンを押し、先ほどダウンロードしたUbuntuのISOファイルを選びます。
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永続パーティションサイズ(重要): UbuntuのISOファイルを選択すると、設定項目にスライダーが表示されます。デフォルトでは「なし(0)」になっていますが、スライダーを右に動かして保存用の容量(サイズ)を設定します。
- 💡 ポイント: 自動運転の開発ではシミュレータや大容量のデータ(rosbag等)を扱うため、スライダーを一番右まで動かして最大サイズ(USBメモリの空き容量すべて)に設定することを推奨します。現在のRufusは自動で適切なファイルシステム(ext3等)を構築するため、大容量でも問題なく保存領域を作成可能です。
- パーティション構成: 基本的には「GPT」(ターゲットシステムはUEFI)のままで問題ありません。(※古いPCにインストールする場合は「MBR」を選びます)
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書き込みのスタート
一番下にある「スタート」ボタンを押します。 -
モードの確認と完了
- 「ISOイメージモードで書き込む」か「DDイメージモードで書き込む」かの確認画面が表示されたら、推奨されている**「ISOイメージモードで書き込む」**のまま「OK」を押します。
- USBのデータ消去に関する最終警告が出ますので、選択したドライブに間違いがないか確認して「OK」を押します。
- 緑色のプログレスバーが右端まで進み、**「準備完了」**と表示されれば書き込みは完了です。🎉
4. USBメモリから起動するためのBIOS設定と起動手順
USBメモリへの書き込みが完了した後、PCをUSBメモリから起動させるためには、事前にBIOS(UEFI)の設定変更が必要になるケースが一般的です。
STEP 1: BIOS設定画面を開き、USBブートを有効にする
PCの電源を入れた直後に特定のキー(BIOSキー)を連続して押し、BIOS設定画面を開きます。
ここで**「USBブートの有効化」や、必要に応じて「セキュアブート(Secure Boot)の無効化」**を実施します。
主要メーカーごとの代表的なBIOSキーと設定例は以下の通りです。
※機種や製造時期によって画面の表記が異なる場合があるため、うまくいかない場合は各メーカーの公式サポート情報を確認します。
【HP(ヒューレット・パッカード)の場合】
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BIOSキー:
F10 -
設定例:
-
Advanced(詳細)やSystem Options(システムオプション)メニューから、USB BootまたはUSBブートサポートを「Enabled(有効)」に変更します。 -
Secure Boot(セキュアブート)の項目がある場合は「Disabled(無効)」に変更します。 - 設定後、
F10キーなどを押して「変更を保存して終了」を選びます。
-
【Dell(デル)の場合】
-
BIOSキー:
F2 -
設定例:
-
System Configurationメニューなどから、Enable USB Boot Supportにチェックを入れます。 -
Secure Bootメニューを開き、Secure Boot Enableを「Disabled」に変更します。 - 画面下部の「Apply(適用)」を押し、その後「Exit(終了)」を選びます。
-
【Lenovo(レノボ)の場合】
-
BIOSキー:
F1またはF2(機種によっては側面の小さなNovoボタンを押す) -
設定例:
-
BootまたはStartupタブに移動し、USB Bootを「Enabled」に変更します。 -
Securityタブで、Secure Bootを探して「Disabled」に変更します。 -
F10キーを押して設定を保存し、再起動を選びます。
-
STEP 2: ブートメニューからUSBメモリを選択して起動する
BIOS設定の保存が終わったら、一度PCの電源を完全に切り、作成したUSBメモリをポートに挿入します。
その後、PCの電源を入れた直後から、以下の「ブートメニューキー」を連続して押します。
| パソコンのメーカー | 代表的なブートメニューキー | ブートメニューでの一般的な選択項目(例) |
|---|---|---|
| HP |
F9 または Esc
|
USB Hard Drive / EFI USB Device など |
| Dell | F12 |
UEFI: USB Storage Device / USB Storage など |
| Lenovo |
F12 (または Fn + F12) |
USB HDD / EFI USB Device(製品名表示含む)など |
キーの入力に成功すると、画面に「Boot Menu」といったメニューが表示されます。
メニューの中から、上記のような**USBメモリに該当する項目(SanDiskなどのブランド名が表示される場合もあります)**を矢印キーで選択し、Enter キーを押します。
STEP 3: Ubuntuの起動メニュー選択とデスクトップ画面での注意点
USBメモリからの起動が進むと、黒い背景の画面(GRUBメニュー)が表示されます。
-
「Try or Install Ubuntu」を選択する
画面の一番上にある**「Try or Install Ubuntu」**という項目が選択されていることを確認し、Enterキーを押します。これにより、USBメモリからUbuntuを立ち上げる処理が開始されます。⏳ -
Ubuntuデスクトップ起動後の⚠️重要な注意点
しばらく待つと、Ubuntuのデスクトップ画面が表示されます。このとき、デスクトップ上に**「Ubuntu 22.04 LTSのインストール(Install Ubuntu...)」**という名称のショートカットアイコン(インストーラ)が配置されています。- 🛑 注意点: このアイコンを開いてインストーラのメニューを進めないように注意します。最後まで進めると、パソコンの内蔵SSDにUbuntuのシステムがそのまま上書きされ、既存のWindows環境や大切なデータがすべて消去されてしまうリスクがあります。
今回の「永続ストレージ付きLive USB」方式では、このインストーラを実行しなくても、起動したデスクトップ上でデータ保存を行うことが可能です。 アイコンには触れず、そのままデスクトップ上でブラウザやターミナルを開いて作業を開始します。
方法2:WindowsのWSL2にLinuxをインストールする
Windows OS上の仮想環境としてLinuxを動作させるため、比較的容易にセットアップができる方法です。
【メリットと制限】
- Windowsを起動したままシームレスにLinuxを使えるため、気軽に環境を構築して試すことが可能です。
- ただし、公式にはサポートされていない手順となります。また、仮想環境の仕組み上、AWSIMの3D描画にはあまり向いておらず、基本的には2D描画のツールである「RVIZ」での動作確認にとどまる点に留意が必要です。
⚠️ 注意点
ネイティブなOS環境とは異なるため、今後のセットアップ手順を一部変更する必要が生じる場合があります。
さいごに
今回は、自動運転AIチャレンジ2026に向けた環境構築の第一歩として、USBメモリを活用したUbuntuの導入方法を中心に解説しました。
関連情報
【自動運転AIチャレンジ 公式ドキュメント】
【BitLockerやBIOS設定に関する情報】
- Microsoft: manage-bde コマンドリファレンス
- HP: USBブートサポートの有効化または無効化
- Dell: F12 One-Time Boot Menuからの起動について
- Lenovo: BIOS (Boot Menu) でUSBディスクから起動する
