はじめに
紡績を源流とするカネボウは、化粧品の取得と非化粧品のクラシエへの継承という分割で価値を保全しました。本稿ではブランドと事業の切り離し設計を整理します。仮説は「ブランドの意味と資本の最適持ち主を分け、顧客接点の連続性を保った再配置」です。
1. 分割の経緯と意図
事業ごとの競争力とシナジーを踏まえ、買い手との適合性が高い単位で再編しました。雇用とブランドの連続性にも配慮しました。
能力マップは次の通りです。
- ブランド資産の評価と移管設計
- チャネル・サプライの切替運用
- PMIと品質規格の整合
- コミュニケーション設計と顧客移行
2. ブランド継承の設計
顧客接点における名称や品質を維持しつつ、資本と研究開発の体制を最適化しました。重複資産の統合と再配置を進めました。
3. 成長領域への集中
日用品、医薬、食品での重点投資を進め、チャネルと製品ポートフォリオを見直しました。研究テーマの再選定を行いました。
主なトレードオフは次の通りです。
- 旧来資産の維持コスト vs 新規領域への集中投資
- 速やかな統合 vs 品質・供給の安定性
- ブランド統一感 vs 事業別の差別化
4. 再検証と評価
ブランド認知や信頼指標、カテゴリー別売上、チャネルKPIを追跡し、分割後の成長軌道を評価します。社会的影響として、雇用安定とブランド資産の保全、消費者安全基準の維持が含まれます。
90日プランは次の通りです。
- 旧/新体制での品質監査・規格の差分是正
- 主要チャネルでの在庫・販促切替の段取り表作成
- 顧客問い合わせ・CS体制の一本化とFAQ更新
- ブランド移行コミュニケーションのA/Bテスト
おわりに
資本とブランドを分離して再配置する設計力が、価値毀損を抑えつつ再成長につながりました。
