はじめに
専門学校ではPythonとJavaを学び、入社後の研修ではC#を使っていました。
そんな自分が、初めて“Delphi”という名前を聞いたのは入社してからです。
正直な第一印象は──
「え、それ何……?」
でも2ヶ月触ってみた今は、
「古いけど、意外と便利。むしろ好きになってきた。」
この記事では、そんな“偏見から実感への変化”を、新卒エンジニアの視点で振り返ります。
1. 「Delphiって何?」から始まった不安
「Delphiで開発」と聞いた瞬間、正直、頭が真っ白になりました。
プログラミングに詳しい友人に聞いても
「恥ずかしくないの?みたいな記事が一番上に来たよ」と言われ、さらに不安に。
同期も誰も知らず、ネットで調べても情報は少ない。
「Pascalの派生?」「Windows専用?」そんな断片的な情報しか出てこない。
完全に“化石言語”のイメージでしたが、配属された以上、逃げるわけにはいきません。
「とりあえず慣れるしかない」と、覚悟を決めました。
2. UI構築の速さに驚いた
最初に驚いたのは、UI構築のスピード感です。
- フォームにコンポーネントをドラッグ&ドロップ
- イベントをダブルクリックしてコードを書く
- すぐ実行して動作確認
これだけで画面が動く。
C#やJavaでUIを組むときのように、XMLや設定ファイルを編集する必要もなく、
作る → 動かす → 直すが数秒で回せるのは新鮮でした。
この体験で初めて、「RAD(Rapid Application Development)」という言葉の意味を実感しました。
UIを置いてイベントを書いたらすぐ動く──その開発体験の速さこそが、RADそのものでした。
3. 「古いけど使いやすい」の正体
Delphiを使ってみて気づいたのは、
古い=使いにくい ではないということです。
見た目はレトロですが、構造が整理されていて、イベントの流れも明快。
特に印象的だったのは以下の点です:
- コードが比較的シンプル:Pascal由来で几帳面な構文ですが、UIまわりの記述は少なくて済む
- 実行が速い:ネイティブコンパイルで動作が軽快
- デバッガが安定:IDEとの統合が強力
- イベント設計が直感的:UIとコードの結びつきが明確
例えば、ボタンを押したときの処理を書くときは
Button1Click(Sender: TObject); のような関数を自動生成してくれます。
自分でイベントを紐づけたり設定をいじる手間がなく、
UIとコードの関係が一目で分かるのは本当に快適でした。
MVCのような抽象的な設計に慣れていた自分にとって、
「コードがUIに直結する」感覚はシンプルで、逆に分かりやすかったです。
4. 正直、つらいところもある
もちろん、Delphiにもつらい部分はあります。
- 情報が少ない:日本語・英語どちらでも記事が少ない
- 構文や型の癖が強い:Genericsや継承などの扱いが独特
- Webとの相性が弱い:基本はデスクトップ開発向け(VCL / FMX)
- ドキュメントが読みづらい:内容は更新されているが、構成やUIが古め
- AIのサポートがない:DelphiのIDEにAIのサポート機能が統合されてない
特に「エラー文で検索してもヒットしない」のは痛かったです。
Stack Overflowでも解決策が見つからず、最終的にソースを読んで推測するしかない場面もありました。
ただ、そのおかげで「コードを読む力」や「仮説を立てて検証する力」が自然と鍛えられた気がします。
5. Delphiの魅力とは何か?
2ヶ月触って感じたDelphiの魅力を一言で言うなら、
「古いけれど、よくできた開発環境。」
設計思想は20年以上前のものですが、
イベント駆動やRADの考え方は今でも十分通用します。
特に業務アプリケーションでは、
安定性・保守性・開発効率のバランスが非常に良いと感じました。
Delphiは最新技術とは言いにくいし、
派手さはないけれど、現場で信頼できるツールだと思います。
つまり、モダンではないけれど、
「ソフトウェアを効率よく作る」という本質には、今も応えてくれる言語だと思います。
6. 少しだけ“好きになった”理由
最初は「仕方なく触っている」だけでした。
でも、バグを直したりUIを改善したりするうちに、
不思議と手に馴染む存在になっていきました。
- 試したことがすぐ反映される
- UIの動きを想像しやすい
- IDE(RAD Studio)が意外と快適
まだ2ヶ月ほどですが、最近はDelphiのフォームエディタを開いても、
前ほどの抵抗はなくなってきました。
あの独特な雰囲気も、ちょっとだけ好きになってきた気がします。
おわりに
最初は「Delphi=古くてヤバそうな言語」と思っていました。
でも実際に触ってみて感じたのは、
「思ってたよりずっと良いじゃん。」
ということです。
専門学校ではPythonのような自由な書き方が好きでした。
でも、C#やDelphiのように型や構造がしっかりしている言語のほうが安心できると自然に思うようになりました。
Delphiは見た目こそ古いですが、手を動かすと案外快適で、
“作る楽しさ”を思い出させてくれる言語でした。
最初は避けたくなる存在でも、触れてみると案外居心地がいい。
そんなギャップこそが、Delphiの一番の魅力なのかもしれません。
まとめ
- 「古い=使えない」ではない
- RAD開発は今でも十分速い
- 情報は少ないけど、学びは深い
- 触ると意外とハマる
Delphi、思ってたよりずっと悪くない。
これからもお世話になります。