2025年10月29日、株式会社コドモンさん・株式会社ウエディングパークさんと共催で「生成AIと共に、長期運用プロダクトのさらなる成長を加速させるための実践知」というイベントを開催しました!
3社ともPHPカンファレンス2024/2025のスポンサーで意気投合し、「長期運用している自社プロダクトがある」「AIツール導入期である」という共通点があるため、今回のイベント開催につながりました。
イベントのテーマ
導入でも書いてあるとおり、「長期運用プロダクト」×「生成AI」。
複雑な仕様、肥大化したコード、度重なる改修によって生じた技術的負債、ドキュメントがない等、生成AIを活用しづらい状況でどう生成AIを活用してきたか実践例をLTやパネルトークで共有し、懇親会では参加者含めて情報交換や学びを深める場となりました。
オープニングトーク
本日の司会はウエディングパークの多田さん。
最近SNSを始めたけど運用方法がパッとしないので生成AIに相談してみたというお話で、場がぱっと和やかになりました!
LT発表
AI爆速開発の副作用:チームの理解が追いつかない現実と対策(コドモン 岡村亮太)
LT1番手はコドモンの「絶対に諦めない男」岡村さんで、Claude Codeを積極的に使ってみての学びが発表されました。
Claude Code導入初期の期待値と実績の乖離が大きく「AIにお願いするの面倒だな」という気持ちも芽生えたが、それでも諦めずに試行錯誤しAIを活用できるまでの経験を語られていました。
過程としては、
- 「AIに実装よろしくと指示」から「AIとペアプロする」ことで開発速度が向上
- しかし、自分でコード書いていないから忘れてしまう
- 記憶ではなくプロンプトを記憶に残す
- プロンプトだとコンテキストが長く、人とAIともに扱いづらい課題感がある
- 人・AIともに扱いやすいドキュメントを残すようにする
というものでした。
一度生成AI使えないなという印象を持つとそれ以降使うことを敬遠する人もいると思いますが、そこで諦めず活用するために思考し行動されたのは素敵ですね!
長期運用プロダクトこそ効くコンテキスト管理の妙(コドモン 友野敬大)
2番手はコドモンの友野敬大さん。
1クラスが肥大化している、様々なアーキテクチャが混在しているなど、長期運用プロダクトならではの課題から「いい感じによろ!」といった曖昧な指示ではうまくいかないので、
- 指示を細かく明確にする
- 暗黙知を教える
- タスクごとにふりかえりしてコンテキストを育てる
という解決策で開発生産性を向上された事例の発表でした。
この発表を聞いて、生成AIは経験の浅いメンバーと同じように接するのが良いのだなと強く感じました!
生成AIは魔法じゃない!現場で直面した壁とチームでの乗り越え方(クイック 坂井駿介)
3番手はクイックの坂井さん。
社内の人材紹介コンサルタント向けに、蓄積されたデータから職務経歴書や履歴書を自動生成するツールを開発した際の知見を発表。
「精度が低く使い物にならない」「AIをどこまで信用していいか分からず、チェック工数が増加」という2つの課題をそれぞれ、
- 精度が低く使い物にならない
- 入力データを前処理で標準化する
- 「書類を作るAI」と「評価するAI」にフローを分ける
- AIをどこまで信用していいか分からず、チェック工数が増加
- 「AIは100%の精度は出せない」とチームで認識をあわせる
- AIの「得意領域」と「苦手領域」を把握し、人間が担保すべき点を明確にする
ことで解決されました。
長期運用プロダクトのデータを生成AIで活用するために、誰が何をどこで担保するかを生成AIと人がうまく手を取り合って実践した良い事例だと思います!
AIは技術的負債の"返済"を加速できるのか?(クイック 屋ヶ田浩平)
4番手はクイックの屋ヶ田さん。
Devinで技術的負債の返済を加速できたかの実績を発表。
結論
-
活用できた
- スクレイピング等ビジネス要件が伴わない簡単なコード修正
- リファクタリング
-
活用できなかった
- 複雑なシステム間連携
- ビジネス要件が伴う修正
とのことでした。
私は長期運用プロダクトでDevinに指示した経験がないため、非常にためになるお話でした!
課題解決のためにGitHub Copilotを導入してみて(ウエディングパーク 片桐菜美)
5番手はウエディングパークの片桐さん。
事業成長をリードしたいが開発に時間が取られていて上流に手がまわらないチーム状態を改善するための一手段としてGitHub Copilotを活用された事例を発表。
GitHub Copilot活用だけでなく、チームの内情やプロセス改善についても踏み込まれており、オフラインイベントならではの血の通ったリアルな話が聞けました!
リプレイスPJへAIコーディング導入で若手主体のチームでの進行を高速化させてみた(ウエディングパーク 東 和樹)
LT最後はウエディングパークでSREをされている東さん。
長年運用してきたシステムほど言語等のバージョンアップは大掛かりで時間がかかります。
また、システム運用経験の少ない若手主体のチームが、仕様やテストコードがない・影響範囲の把握が困難な長期運用システムのバージョンアップを対応するとなると、バージョンアップ実行への心理的ハードルは高いです。
それら2点の課題を解決するために、AIコーディングツールを活用された事例の発表。
具体的には、
- バージョンアップ作業
- 仕様書作成
- テスト仕様書作成
- テストコード作成
をAIコーディングツール(今回の場合、Cline×Amazon Bedrock)で実施するプロセスやガイドラインをSREで整備し、プロダクトチームに展開することで、バージョンアップ実行の心理的ハードルをなくしつつ、全体で約35%の工数を削減されました。
またこの活動により仕様書やテストコードが整備されたため、以前より実装ハードルも下がり、果敢に挑戦するチームへと変化したとのこと。
AIツールを起点に開発生産性だけでなくカルチャーも変わったという、素敵な事例の発表でした!
パネルトーク
LTから休憩を挟んで、次はパネルトーク!
モデレーターは、ウエディングパークの小山さん。
まずは3社で用意したテーマ
- AI活用文化を育むためにやっていること
- 長期運用プロダクトならではのリアルな失敗談
で各社回答。
会場からの質問はSlidoで募り、「QAでどのように生成AIを活用しているか」「生成AIの効果検証や経営層への説明をどうしているか」といった質問に対して回答していました。
モデレーターの小山さんが要所要所で登壇者の回答を整理・要点をまとめて進行されていたため、参加者もパネルトークの内容が入ってきやすかったのではと思っています!
懇親会
「絶対に諦めない男」岡村さんの乾杯の音頭で懇親会は始まりました!
「うちは開発生産性を上げるために、どこの開発プロセスに生成AIを組み込んでいる」等、どの卓も話が盛り上がっていました!
さいごに
運営をしながら発表やトークを見ていたのですが、まとめると「生成AIはツールではなく仲間。人と同じように文脈も含めて依頼しよう」と強く思った会でした。
長期運用しているプロダクトだからこそある複雑な文脈もあり、すぐに活用が難しい場面が多々あると思いますが、愚直にがんばっていこうと思った次第で、この会を開催できて非常に満足度は高いです!
運営観点では、3社ともカルチャーが似ているのもあってか、イベント準備や当日まで大きな問題もなく運営をスムーズにできました!コドモンさん・ウエディングパークさんに感謝です!
またいそがしい中登壇・司会・モデレーターを担当していただいたみなさま、そして参加者のみなさまにも感謝 ![]()
イベント準備はENG業務では使わない筋肉を使うこともあり大変ではありますが、何より楽しいので、また何かイベント企画〜運営したいです![]()








