2
2

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

今時の仮想化環境(OrbStack)でFileMaker Serverの快適なローカル開発環境

Last updated at Posted at 2025-12-25

はじめに

FileMaker Server (以下 FMS) の開発・検証環境ですが、
macOS(windows)上で開発を行う場合、基本はローカルにあるファイル単体をそのまま開いて開発するわけですが、サーバー上のスクリプトを実行など、どうしてもクライアント == サーバー環境でしか実現できない事があります。今はコールバックでサーバーからの返答を受け取れるようになったので尚更です。
ローカルマシンに直接FMSをインストールしたり、AWSなどのクラウドを利用したりと選択肢はいくつかありますが、コストや手軽さの面で一長一短があります。

本記事では、Vagrant、AWS EC2、Docker、そしてApple純正コンテナなどを一通り使ってみた上で、最近話題の OrbStack を利用したFMS運用のメリットについて、技術的な考察を交えてまとめます。

続編:OrbStack上のFMSをTailscaleで安全に外部アクセスさせる(SSLも対応)

これまでの課題:FMSの開発環境における迷走

1. 従来型仮想化(Vagrant等)の重さ

かつては仮想化環境というと、Vagrant(VirtualBox等)が主流でしたが、設定ファイルの管理が煩雑であり、何よりPCのリソース(メモリ・CPU)を大量に消費するのがネックでした。FMSを動かすためだけに、ホストマシンの動作が重くなるのは開発効率を下げてしまいます。

2. AWS EC2のコスト問題

AWS EC2は本番環境に近いテストができますが、コストが課題です。
近年のFMSは要求スペックが上がっており、特にストレージに関してはパフォーマンスを確保しようとするとI/O性能が求められます。100GB単位のEBSを用意し、十分なインスタンスタイプを選択すれば、検証用としては無視できない金額になります。停止忘れによる課金リスクもつきまといます。

3. ホストOS(macOS)への直接インストールは避けたい

「手元のMacに直接FMSを入れれば良いのでは?」という意見もありますが(実際そうやっている方は多いと思いますが)、サーバーアプリケーションとしての運用を考えると、それはやっぱり異質なものだと思います。

  • 環境の汚染: 開発機には様々なツールが入っており、ポート競合や依存関係のトラブルが起きやすい。

  • 再現性の欠如: 本番環境(Linux等)とOSが異なるため、OS依存のトラブルを検知できない。まあ、FMSではホストとの致命的トラブルはあまり聞きませんが、ここは基本的な部分でもありますし。

Docker運用に対する違和感

軽量な仮想化といえばDockerが筆頭に上がります。私もFMSのDockerイメージ作成や運用を試みましたが、**「FMSとDockerの相性は本質的に良くない」**と感じています。

Dockerは本来、ステートレスなマイクロサービスを疎結合に組み合わせる設計思想です。対してFMSは、データベースエンジン、Webサーバー、Javaプロセス、スクリプトエンジンなどが密結合した「フルパッケージなモノリシックアプリケーション」です。

これを無理やり1つのコンテナに押し込む構成は、Dockerの本来のメリット(軽量さ、インスタントさ)を享受できない。もちろん技術的には可能ですが、永続化データの扱いや、initプロセス(systemd等)の挙動を含め、そこまでして導入するメリットはないと感じました。実際FileMakerServerに付随してくるDockerフォルダの中にあるコンテナ立ち上げ用shellスクリプトを見ても、複雑で、とても私には手に負えない。かつあのスクリプトはLinux用に書かれているので、Mac上で実行するには一部書き直しが必要です(最初何も考えずに実行して結構ハマりました)。

Appleシリコンネイティブコンテナへの期待と課題

そんな中、WWDCで発表されたAppleシリコンに最適化されたコンテナ技術(Apple Container)。
「AppleシリコンMacに最適化されており、省メモリで動作する」という点に、"おっ、これはFMS運用の本命になるのではないか"と期待しました。

実際にDockerで作成したFMSイメージを用いてAppleコンテナ上で動かしてみたのですが、結果としては**「時期尚早」**でした。
単純なプロセスを立ち上げる分にはDocker同様に簡単ですが、Docker Composeのようなオーケストレーションツールや周辺エコシステムがまだ成熟しておらず(今のところない)、FMSのような複雑なアプリケーションを運用するにはハードルが高いと感じました。あくまでもこの分野への知識が浅い私の所感ですが。

Linux界隈の動向(Incus)からOrbStackへ

次に目を向けたのが、Linux環境における Incus です。
これは仮想マシンとコンテナ環境のどちらにも対応しており、ネットワーク周りもDockerより洗練されています。実際に使ってみると起動も速く、メモリ効率も良い素晴らしいツールでした。しかし、Macでこれを動かすには「仮想Linuxの上にIncusを立ち上げる」という二重構造になり、どうしても無駄が生じます。

そこで知ったのが OrbStack です。割と最近出たのですね。今まで聞いた事なかったです。
OrbStackは内部アーキテクチャこそ異なりますが、ユーザー体験としては「macOS上で手軽にIncus(システムコンテナ)を使う」感覚に非常に近いと感じました。

OrbStackとは

macOS向けの、DockerおよびLinuxマシンの実行環境です。
Apple Silicon専用と思われがちですが、Intel / Apple Silicon 両対応のUniversalアプリ です。

Docker Desktopの代替機能だけでなく、特筆すべきは 「軽量なLinux仮想マシン(Linux Machines)」 を爆速で立ち上げられる点です。

FMS運用におけるOrbStackのメリット

1. 圧倒的な軽さと省メモリ設計

OrbStackの最大の特徴は、動的なメモリ管理です。
従来のVMのように「確保したメモリ(例えば8GB)を常に占有する」のではなく、実際に使用している分だけを消費します。アイドル時はメモリ消費が極小になるため、開発機のリソースを圧迫しません。これは仮想化環境でもコンテナ環境でも同様です。CPU占有も然り。

2. 「Linux Machines」という選択肢

OrbStackでは、Dockerコンテナだけでなく、独立したLinux環境(Ubuntu等のディストリビューションそのまま)をコマンド一つで作成できます。
これはDockerコンテナというよりは「超軽量なVPS」に近い感覚です。

  • 完全なOS環境: systemdなどのinitシステムが標準で動作するため、FMSのようなインストーラー形式のアプリを、FileMaker公式ドキュメント通りの手順でLinux版としてインストールできます。

  • Dockerファイル不要: Dockerfileの職人芸を駆使する必要がなく、apt コマンド等で普通にセットアップ可能です。

3. ネットワークの抽象化

ネットワーク周りの設定が非常に洗練されています。
立ち上げた仮想環境には自動的に *.orb.local といったドメインが割り当てられ、ホストのMacから直接アクセス可能です。ポートフォワーディングの設定に悩まされることなく、Admin ConsoleやWebDirectの検証が行えます。

4. 使い捨て可能な実験場(Sandbox)

AWSをこれから導入する人には、EC2にデプロイする前の「練習」に最適です。
スナップショット的な使い方はもちろん、環境を壊しても数秒で新しいOSを立ち上げ直せます。「ゴミ箱に捨てる」感覚でサーバーをスクラップ&ビルドできるため、インストールの自動化スクリプトのテストなどにも向いています。この辺の使い勝手はDocker以上です。

実践:OrbStackでのFMS構築イメージ

Dockerコンテナとして動かすのではなく、OrbStackの「Linux Machine」としてUbuntuを立ち上げ、そこにFMSをインストールする方法。
具体的な手順は以下の通りです。マシン内部での操作は、通常のLinuxサーバーへのインストールと同様です。

マシンの立ち上げはGUIでサクッとできます。
image.png

image.png

sshターミナルもそのまま使え、
image.png

フィルへもここから直接アクセスできる(ホスト側も見えてしまうという仕様ですが、、、)
image.png

以下、コマンドラインで記述していますが、

# 1. OrbStackでUbuntu 24.04のマシンを作成はGUIで行ったとします。
# (FMS 21以降はUbuntu 22/24対応。最新の動作要件を確認してください)
# コマンドラインで作成するには↓
# orb create -a arm64 ubuntu:24.04 fms-test


# 2. マシンに入る. GUIアプリ上のターミナルでも可
orb -m fms-test

# --- ここからは仮想マシン内での操作 Claris公式blogそのまま書いています ---

# 3. システムの更新と必須ツールのインストール
sudo apt update
sudo apt install wget unzip -y
sudo apt upgrade -y

# 4. 作業用ディレクトリの作成と移動
mkdir fminstaller
cd fminstaller

# 5. FileMaker Server (ARM版) のダウンロード
# ※URLは記事執筆時点のものです。最新版を確認してください。intelMacの場合はAMD版に置き換えて下さい。
wget https://downloads.claris.com/esd/fms_22.0.2.204_Ubuntu24_arm64.zip

# 6. 解凍
unzip fms_22.0.2.204_Ubuntu24_arm64.zip

# 7. インストール実行
# 重要: ローカルファイルを指定するため、必ずパスの頭に ./ を付けます
sudo apt install ./filemaker_server-22.0.2.204-arm64.deb
# (※ファイル名は解凍結果に合わせて調整してください)

# --- インストーラーの対話プロンプト入力例 ---
# ライセンス契約書の同意: Y
# インストールタイプ: 0 (Primary Machine)
#
# [アカウント設定] ※任意の値に変更してください
# Username: [yourname]
# Password: [pass]
# PIN: [pincode]
# ----------------------------------------

# 8. 動作確認
ps -A | grep fm
ps -A | grep nginx

これだけで、Mac内の独立した仮想環境でLinux版FMSが稼働します。拍子抜けするほど簡単です。

まとめ

FMSのような重量級かつモノリシックなアプリケーションの開発環境として、OrbStackは現状のmacOSにおけるベストプラクティスの一つだと思います。

  • AWS EC2のような完全性 を持ちながら、

  • Dockerのような手軽さと起動速度 を実現し、

  • Vagrantのようなリソース浪費がない仮想環境

特にローカルで本番(Linux)に近い環境をサクッと用意できる利点は計り知れません。高価なクラウドでテストや開発している方は、是非。しかも個人利用は無料という太っ腹。

また、windowsマシンやmac osでサーバー運用してこられた方は、今後安定したLinuxサーバーの導入テスト用として手軽に試せます。

続編:OrbStack上のFMSをTailscaleで安全に外部アクセスさせる(SSLも対応)

2
2
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
2
2

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?