はじめに
この記事では、AIX を勉強し始めたばかりのエンジニアに向けて、AIX のシステムバックアップコマンド mksysb (エムケーシスビー) の基本から実践的な使い方をかんたんに解説します。
ご参考:
ご参考動画
(2026/3/17 動画を修正しました)
環境
HW: IBM Power
OS: AIX
AIX の mksysb とは?
mksysb (エムケーシスビー)は、AIX オペレーティングシステム自体(rootvg)を丸ごと保存し、ブート(インストール) 可能なファイルとして保管する強力なバックアップ・ツールです。
サーバーを稼働させたまま(オンラインで)バックアップの取得が可能です。
mksysb が守る領域・守らない領域
| 対象 | ボリュームグループ | 内容 |
|---|---|---|
| ✅ バックアップ対象 | rootvg | OS、設定ファイル、ソフトウェア |
| ❌ 対象外 | datavg など | ユーザーデータ、データベース |
ユーザーデータは savevg などの別の仕組みで保護します。
mksysb の 3 つの重要ファイル
mksysb イメージには、以下の 3 つの重要なファイルが含まれます。
-
/image.data
ボリュームグループやファイルシステムの構造情報を記録するファイルです。-iオプションを付けることで常に最新化できます。リストア時の容量エラーを防ぐため、原則として-iは常に付与することを推奨します。- AIX docs: image.data ファイル
-
/bosinst.data
リストア時のインストール手順や設定を制御するファイルです。存在しない場合は自動生成されます。- AIX docs: bosinst.data ファイル
-
/etc/exclude.rootvg
バックアップから除外したいファイルやディレクトリ(/tmpなど一時ファイル)を指定するリストです。
mksysb 基本の使用方法
コマンドは非常にシンプルです。用途に合わせて出力先を指定するだけで、安全にバックアップが開始されます。
ファイルとして保存する場合
# 基本のコマンド(-i で構成情報を最新化)
mksysb -i /mnt/backup/myserver.mksysb
覚えておきたい mksysb コマンド・オプション
| オプション | 説明 |
|---|---|
-i |
/image.data を最新の状態に更新します。リストア時の容量エラーを防ぐため、原則として常に付与をおすすめします |
-e |
/etc/exclude.rootvg に記載されたディレクトリやファイル(/tmp など)をバックアップから除外して軽量化します |
-X |
バックアップ処理中に /tmp の空き容量が不足した場合、自動的にファイルシステムを拡張して処理の失敗を防ぎます |
-p |
ソフトウェア圧縮を無効化します(後述) |
稼働中のアプリを守る「-p」オプション
デフォルトではソフトウェア圧縮が行われますが、特定の環境では圧縮を無効にする -p オプションの利用が推奨されます。バックアップのサイズは大きくなりますが、より確実な保存が可能です。
-p を使うべき場面は次の 2 つです。
アプリケーションを停止せずに取得する場合
バックアップ中にファイルが更新されると圧縮エラーになることがあるため、-p でパッキングを無効化します。
ハードウェア圧縮対応のテープを使う場合
ドライブ側(rmtX)の圧縮機能と競合してリストア時にエラーになるのを防ぎます。
mksysb のバックアップ取得先パターン
mksysb は、システムの規模や復旧(リストア)のスピードに合わせて、いくつかの保存先を選択できます。
代表的な 3 つのパターンをご紹介します。
1. ローカルファイルシステム(ディスク)
同一サーバー内の別ディスクや、マウントした領域にイメージファイルとして保存します。
- 特徴: 最も手軽で、バックアップ・リストア共に高速です。
- 注意点: サーバー自体の故障に備え、取得後は別環境へコピーしておくのが一般的です。
2. NIM (Network Installation Management) サーバー
ネットワーク経由で管理サーバーにバックアップを集約する、エンタープライズ環境で最も推奨される方法です。
- 特徴: 複数台の AIX を一元管理でき、リストアもネットワーク経由で一斉に実行可能です。物理メディアの入れ替え作業が発生しません。
3. 物理メディア(USB・テープ・DVD)
外付けUSBメモリ、LTO テープドライブや外付け DVD への書き出しです。
- 特徴: ネットワークから切り離して保管(オフサイト保管)できるため、サイバー攻撃対策や物理的な災害対策(DR)に非常に有効です。
保存先による比較表
| 取得先 | 復旧スピード | 管理のしやすさ | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| ディスク | 非常に速い | 中 | 作業直前の簡易バックアップ |
| NIM サーバー | 速い | 高い(推奨) | 日次の自動バックアップ、一括管理 |
| DVD/USB/テープ | 遅い | 低い(手動) | オフライン保管、災害対策 |
ISO イメージを作成する場合(AIX 7.3 以降)
# 直接ブート可能な ISO を作成
mksysb_iso -m /testvm_mksysb -o /myserver.iso
- mksysb_iso コマンド
Tips: AIX 7.2 以前では mkdvd コマンドが利用可能です。
- mkdvd コマンド
実行前のチェックポイント:ファイルサイズ制限
バックアップファイルのサイズが数 GB になることはよくあります。途中で止まらないよう、事前に 2 つの設定を確認しておくと安心です。
ファイルシステムの属性
lsfs -q コマンドで対象ディレクトリの bf(Large File Enabled)属性が true であるか確認します。false の場合は 2GB 以上のファイルが作成できません。
lsfs -q /mnt/backup
JFS(Journal File System) の制約であるため、遭遇するケースは少ないと考えられます。
参考:Support of Large Files in AIX
ユーザーの fsize 制限
lsuser -a fsize コマンドで上限を確認します。制限なし(-1)になっていることが理想です。最小値のままだとエラーになることがあります。
lsuser -a fsize root
スパース(疎)ファイル
スパースファイルとは、データが書き込まれていない「空の領域」を持つファイルです。mksysb はこの空き領域を認識し、賢くバックアップとリストアを行います。
たとえば、ls コマンドで 16MB と表示されるファイルが、実際の使用量(du コマンド)では 4KB だったりします。
| コマンド | スパースファイルの扱い |
|---|---|
tar コマンド |
空き領域を「0」で埋めてしまうため、リストア時にファイルサイズが肥大化します |
mksysb コマンド |
リストア時に連続した「0」を空き領域として正しく復元します(※バックアップイメージ自体は0で埋められるため、取得時は想定よりサイズが大きくなることがあります) |
NIM によるバックアップ
サーバーの台数が多い環境では、NIM(Network Installation Manager) を活用することで、ネットワーク経由で複数台の mksysb を一括管理できます。
nim -o define -t mksysb -a source=client01 ...
NIM を使うことで、ポリシーの一元管理やリストアの自動化が可能になります。
mksysb 取得後の確認
lsmksysb コマンドで、mksysb の中身を確認することが可能です。
# ヘッダー情報と整合性を確認
lsmksysb -lf /path/to/my_mksysb
- lsmksysb コマンド
取得した mksysb ファイルから個別ファイル抽出
設定ファイルを誤って上書きしてしまった場合でも、システム全体をリストアする必要はありません。
mksysb イメージから、特定のファイルだけをピンポイントで抽出できます。
# /etc/hosts ファイルだけを現在のディレクトリに抽出
restore -xvqf /path/to/mksysb ./etc/hosts
- restore コマンド
Note: mksysb は相対パスでバックアップを取得するため、抽出時は必ずパスの先頭にドット(.)を付けることで、カレント・ディレクトリ下での展開を行い、既存ファイルへの上書きを防ぎます。
リストア手法
mksysb は障害復旧だけでなく、新しい環境への展開時にも活躍します。状況に応じて最適なリストア方法を選択できます。
標準リストア(障害復旧)
ブートメディアや NIM から起動し、SMS メニューからリストアします。
代替ディスクへのリストア(ダウンタイム最小化)
alt_disk_mksysb コマンドを使用します。現在のシステムを稼働させたまま、別の空きディスクに展開・検証が可能です。
- alt_disk_mksysb コマンド
iso 化ファイルの利用
mksysb_iso コマンドで mksysb から作成した iso ファイルで VIOS 仮想メディア・リポジトリを使用してリストアが可能です。
異なるハードウェアへの移行(クローニング)
古いサーバーから新しいサーバーへシステムを移行する場合も、1 つの設定を変更するだけでスムーズに対応できます。
/bosinst.data ファイル内の RECOVER_DEVICES=no に設定してバックアップを取得します。これにより、旧ハードウェアのデバイス情報(MAC アドレスやディスク構成)を引き継がず、新しいハードウェア上でデバイスをクリーンに再認識させることができます。
Note: NIM を使用する場合は、NIM 側のリソース設定で上書き可能なため、バックアップイメージ自体の編集は不要です。
また、プロンプト付きのリストアの場合には、インストール・メニューの「Recover Devices」でも指定できます。
まとめ
AIX の mksysb は、シンプルなコマンドで強力なシステム・バックアップを実現するツールです。
- rootvg(OS 領域)を丸ごとオンラインでバックアップできる
-
-iオプションで構成情報を常に最新化する -
-eオプションで不要ファイルを除外して軽量化する - 実行前に ファイルサイズ制限(
lsfs -q、lsuser -a fsize)を確認する - バックアップ後は
lsmksysb -lfで整合性を検証する - 個別ファイルの救出には
restore -xvqfが使える - 大規模環境では NIM で一括管理できる
ご参考 Technote
- How to perform a mksysb to mksysb migration
- How to take mksysb of client from NIM ?
- Creating a mksysb backup to DVD in AIX V5, V6 and V7
- Utilizing NIM to create a mksysb
- Extract mksysb image from tape
- Creating a mksysb backup to tape in AIX
- Restoring specific file from mksysb
- Introduction to Alt_Cloning on AIX 6.1 and 7.1
- Supported Methods of Duplicating an AIX OS Instance
- Mksysb and/or alt_disk_copy hang - must gather
- NIMADM and alt_disk on DLPAR disks
以上です。