はじめに
この記事はQiita Advent Calendar 2025 / ひとりアドベントカレンダー 分野における ふぐおの配信関係多めひとり Advent Calendar 2025 の23日目記事となります。
こんにちは! AI Tuberなどの開発をしているふぐおです。
今日は、私が作っているパートナーAI Tuberはどのようなことを考えて制作し、今に至るのかをお見せします。
AI Tuberを知ったきっかけ
NeuroSama
私はosu!という音ゲーが大好きなのですが、そんな中で「NeuroSama」というAIが世界チャンピオンを倒してしまうという事件が起こりました。
これが私がNeuroSama、そしてAI Tuberを知ったきっかけです。
紡ネン
ChatGPTが登場する前から活動しているAI Tuberです。
まだChatGPTが無い時代に、人の言葉を学習して会話できるAIがいると話題になったタイミングで知りました。
AI Tuberを作ろうと思ったきっかけ
楽しんでもらえる人が居たから
AI Tuberを始める前は、Webアプリ制作をしていました。
公開までこぎ着け、1ヶ月くらい運営してみましたが、残念ながら使ってくれる人はほとんどいませんでした。
私は作る過程そのものを楽しむタイプではありますが、同時に「どう使ってもらえるか」を想像しながら作っているので、実際に使ってもらえないことには寂しさを感じました。
当時から配信活動をしており、視聴者数は多くないものの、一定数の方が見に来てくれていました。
「この配信上でAI Tuberを運用すれば、必ず誰かの目に留まり、楽しんでもらえるはずだ!」
そう思い、AI Tuberを作ろうと決心しました。
当時はAI Tuberと人間が会話する配信は珍しかった
そもそも2024年春頃は日本にAI Tuberがあまり居なかったこともあり、「AI Tuberと人間が会話する配信」自体が珍しいものでした。
AI Tuber自体は居ても、AIが一方的に話すだけの配信が多かったです。
それこそ、NeuroSamaくらいしか私は知りませんでした。
そんな中、人とAI Tuberがお互い対話する日本のAI Tuberをリリースすれば、そこそこウケるかなと思っていました。
市場調査
市場調査に関しては、以下の記事でまとめています。
調査をして固まった方針は以下の通りです。
- 対話にこだわってAI Tuberを作る
- 既存のコンテンツには無い新しいコンテンツを作る
- ニコニコで配信し、ニコニコにあったコンテンツを作る
AI Tuber制作(第一段階)
市場調査や方針策定をしつつ、まずはコメントや人と対話できるAI Tuberを作らないと土俵にすら立てないと感じていたので、そのシステム開発に着手しました。
ここらへんの工夫などは、アドカレに結構上げています。
だいたい制作を始めて7ヶ月くらいで、基本的なシステムは完成しました。
めざす方針の決定
制作と並行して、キャラクターの方針を決めていきました。
AIらしさを反復横飛びするキャラにする
AIキャラクターにとって、「AIであること」が最大の特徴であり武器になると考えています。
だから、コッテコテのAIらしさをなぞったキャラにしても面白いし、そこからちょっとはみ出ても面白いなと思いました。
例えば、AIには「論理的で真面目」みたいなイメージがありますが、そこから壊れて急に変なことを言い出すとギャップが生まれます。
こういうギャップから、AIずんだもんやNeuroSamaが注目されていったのかなと思います。
普段はAIらしいキャラクターなんだけど、AIが言わなそうなことを急に言い出すと面白いのかなと思いつきました。
ニコ生主のノリを取り入れる
ニコニコの面白い特徴として、生主がキラキラしていない配信が、他サイトと比べて多いことが挙げられます。
YouTuber、特に登録者が多い方は、視聴者から尊敬されていたり、憧れの目で見られていることが多いと思います。
ところが、ニコニコはそういった方ばかりではありません。親しみやすさで売っている方も多いです。
私も、プログラミングが天才的だとか、AIツールに関して最先端の発信を続けられるわけではないので、キラキラした感じではなく、親しみやすさで売っていくことにしました。
AIと漫才をする
対話型AIが普及してきて、AIを絡めたコンテンツを出す人が増えました。
中にはAIと漫才のような掛け合いをする人も出始めました。
自分もこういう方向性かな、と思いはじめました。
最終的に出したプロダクト
進捗管理をしてくれる、AIずんだもんです。
進捗を出さないとキレられる、という仕様にしました。
キレられることで、AIが言わなそうなことを言うギャップを出しつつ、ニコニコならではの親しみやすさが出るかなと思ったのです。漫才もできますし。
普段私はソフトウェア開発配信などをしているので、その中でAIが強い感情を持ってなにかをしてくれることといえば「進捗管理」かなと思い、この機能を選びました。
プロダクトを出してどうだったか
あんまり使いませんでしたw
下に理由を書きます。
よくなかったところ
アバターがある強みを活かせなかった
アバターにこだわることができず、画面に出す意味が薄かったです。
「ずんだもんが話していることがわかって、かわいいね」くらいのメリットしかありませんでした。
その割に、設定や立ち上げにコストがかかるため、毎日配信するたびにアバターを出すのが面倒だと感じるようになりました。
結果として、
アバターを出すメリット < アバターを立ち上げる労力
という状態になってしまい、モチベーションが下がってしまったのです。
「AI Tuberと打ち出しているんだから、アバターは出さなきゃいけない」という義務感と、実際の労力の板挟みになり、どんどんモチベが削がれていきました。
私がAIと対話することに慣れが必要だった
普段、私は一人で壁に向かって喋っているのですが、それに慣れすぎてしまって、AIとの会話を配信の中で絡めていくことに難しさを感じました。
AI自体は話題を提供してくれるわけではなく、私もコーディング中に話題を振るリソースがないため、会話として成立させるのが難しかったです。
慣れたらできるのかもしれませんが、そこまでの道のりが遠く感じました。
進捗管理機能の作りが甘かった
進捗管理機能といっても、定期的に進捗を聞いてきて、進捗が出ていないとキレるというシンプルなものです。
しかし、「仕事を割り当てる」ことはできたものの、「なぜそのAIは進捗をそんなに急かすのか」というバックグラウンド(動機)の設定が薄かったのです。
その結果、ただ理不尽に怒るだけの、絶妙にウザい存在になってしまいました。
よかったところ
今後も続けていこうと思ったことは以下です。
AIに仕事を割り当てたこと
AIには意志がありません。
意志や目的がないAIと会話すると、Twitter(X)に生息する「インプレゾンビ」のような、中身のない返答が出来上がります。
インプレゾンビは人気のあるポストにぶら下がってインプレッションを稼ぐのが目的なので、何かを伝えたいという意志があってツイートしているわけではないのです。

対して人間は、「このポストめっちゃ共感できる!」とか「俺のポストで誰かを笑わせたい!」といった意志を持ってポストをします。
このように、会話の中で「意志」というのはとても大事なのです。
そこで、AIにこの「意志」を持たせるために、仕事を割り当てました。すると、AIは仕事を全うするという意志を持つようになります。
こうすることで、AIの発言に一本芯が通り、中身のある会話が生成されるようになります。(それを私が配信で捌ききれるかは別として…)
AI Tuberを作ってわかったこと
AIは本当に意思がない
人間っぽさを追求していけば、意思がない感じを抜け出せるかもしれません。
しかし、私はAIっぽさを活かしていきたいと思っています。その結果、どうしても意思が欠落してしまうのです。
意思がないのに無理やり会話させようとするとインプレゾンビ化し、会話に中身が生まれないため、対話相手の人間側が情熱をもって会話に力をいれる必要が出てきます。
意思がないことの対策案1:仕事を与える
AIに「仕事を全うする」という意識を与えると、行動に骨ができます。
アシスタントに寄らせるなら「ご主人様を助ける」、人間に寄せるなら「生存本能を与える」といったアプローチです。
AIに生存本能を与えるとどんなストーリーが生まれるかについては、以下のアニメーションを貼っておきます。
意思がないことへの対応2:受け身のキャラクターに振り切る
最近私が考えているのが、受け身のキャラクターに振り切ってしまうという考えです。
今のChatGPTやスマートスピーカーのようなイメージです。
少しキャラ付けするなら、「AIメイド」といった感じでしょうか。
仕事を頼まれたり、呼ばれた時だけ登場するようにします。
ChatGPTとほぼ同じような「道具としての存在」にすることで、私が配信中の対話に慣れていないという課題への解決策にもなるのかなと考えています。
わかったことから、次はどんなものを作る?
少し整理
わかったことを整理しましょう。
- アバターは私にとって、そこまで重要ではなかった
- AIに仕事(目的)を与えることが重要
- 自律して行動するキャラクターより、アシスタント的な受け身なキャラクターの方が私には合っている
これらを踏まえると、次に作るべきものが見えてきます。
作りたいものはAI Tuberではなく、ただのAIアシスタント
アバターもいらなくて、ただ仕事をやってもらう存在。それはAI Tuberよりも、ChatGPTやスマートスピーカーのような存在の方が近いでしょう。
私が真に作りたいものを追求していったら、結果としてAI Tuberではなくなってしまったのです。
ということで、今後は**「キャラ付けしたAIアシスタント」**を開発していこうと思います!
まとめ
みんなもAI Tuberのことを四六時中考えて、ドツボにはまろう!
たのしいぞ!