AIと人間で記事の公開前チェックを分担するとき、自動化してよい項目とHuman Approvalの境界
記事の公開前チェックには、数えれば分かる項目と、意味を読まなければ決められない項目があります。
画像が4点あるか、タグが5個以内か、仮置きの文字が残っていないかは、機械でも確認できます。一方で、引用が発言の意味を変えていないか、公開してよい情報か、今日この内容を出すべきかは、人間の判断が必要です。
この2種類を分けずにAIへ「全部確認して公開して」と頼むと、検査が成功したことを公開承認と取り違える危険があります。逆に、すべてを人間が毎回目視すると、単純な数え間違いや見落としに時間を使い、重要な判断へ集中できません。
そこで私は、公開前チェックを「自動で判定できるもの」「AIが整理できるもの」「人間だけが承認するもの」に分けます。
この記事では、どこまで自動化し、どこで止め、Human Approvalに何を含めるかを、初心者でも再現できる形で整理します。
自動化と承認を同じ言葉にしない
最初に、3つの言葉を分けます。
検査:決めた条件に合っているか確認する
レビュー:内容や差分を読み、問題候補を整理する
承認:外部へ公開することを人間が決める
検査が成功しても、承認されたことにはなりません。
たとえば、公開用Markdownが存在し、タイトルが管理表と一致し、画像URLがすべてHTTP 200でも、記事内の人物名が誤っている可能性はあります。技術的に投稿できる状態と、公開してよい状態は別です。
私は状態も分けます。
reviewing:内容を確認している
ready:技術的な公開条件を満たした
approved:人間が今回の公開を承認した
published:公開後のURLと状態を確認した
ready から approved へ進めるのは、自動検査ではなく人間です。
自動化してよいのは、答えが1つに決まる確認
自動化に向いているのは、入力と判定条件が固定でき、同じ入力なら同じ結果になる確認です。
| 確認項目 | 自動化しやすい理由 |
|---|---|
| 本文ファイルが存在する | 有無で判定できる |
| 先頭見出しと管理表のタイトルが一致する | 文字列比較で判定できる |
| 文字数が基準内にある | 数値で判定できる |
| 画像URLが必要数ある | 件数を数えられる |
| 画像URLがHTTP 200を返す | 応答コードで判定できる |
| タグが上限以内にある | 件数を数えられる |
| 執筆中の仮置き文字が残っていない | 全文検索できる |
| 同じ日に候補が複数ない | 管理表を比較できる |
| 直前の記事が公開済みである | 状態を確認できる |
この種の検査は、AIに毎回文章で尋ねるより、スクリプトへ固定した方が再現しやすくなります。成功と失敗の条件が同じだからです。
ただし、自動検査は確認した範囲を出力するだけです。
画像URL:4件、すべてHTTP 200
これは「画像の内容が正しい」という意味ではありません。古い日付が描かれていても、URLは正常に表示されます。自動化の結果を、確認していない意味まで広げないことが大切です。
AIに任せるのは、候補の整理と差分の発見
AIは、単純な真偽判定だけでなく、複数の資料を比較して問題候補を整理する作業に向いています。
- 本文と事実表で数字が違う箇所を列挙する
- 前回原稿との差分を要約する
- 同じ内容を別の表現で繰り返している箇所を示す
- 「予定」「検討」「決定」「実施済み」の表現を分類する
- 記事に含まれる人物名、団体名、日時、料金を抽出する
- 公開前チェックリストの未確認項目をまとめる
ここでAIへ求めるのは、最終判定ではなく、人間が見る場所を絞ることです。
本文と事実表を比較し、差分だけを表にしてください。
差分がある場合は、どちらが正しいか推測しないでください。
根拠資料の場所と、Human Approvalが必要な項目を示してください。
公開やファイル更新は行わないでください。
AIが「問題ありません」と答えても、それだけで公開しません。使った資料、確認した範囲、見つけられなかった可能性を人間が確認します。
Human Approvalに残す5つの判断
人間に残すのは、「AIが苦手そうなこと」ではなく、結果の責任や外部への影響を伴う判断です。
1. 事実の採用
資料間で数字や日付が違うとき、どちらを採用するかは人間が決めます。必要なら取材先や公式窓口へ確認します。AIに多数決で決めさせません。
2. 意味の確認
文章が読みやすくても、引用の意味、予定の確度、発言者の意図が変わっていないかを確認します。言い換えによって断定が強くなっていないかも見ます。
3. 公開可否
個人情報、未公開情報、撮影許可、取材先との合意、クライアント情報など、公開してよいかの判断は人間に残します。自動検索で見つからなかったことを、情報が含まれていない証明にはしません。
4. 公開範囲と投稿先
全体公開か限定公開か、どのアカウントから出すか、SNSへ同時共有するかを確認します。投稿先を間違えると、本文が正しくても影響が広がります。
5. 実行
外部サービスへの新規投稿、更新、削除は、対象と差分を示して承認を受けてから実行します。「公開してよい記事」と「今からこの操作をしてよい」は、同じようで別の確認です。
「問題なし」ではなく検査結果を見せる
AIやスクリプトから人間へ渡すとき、「問題ありません」だけでは判断できません。
最低限、次を表示します。
対象:Vol.83 公開用Markdown
確認日時:2026-10-24 JST
自動検査:9項目中9項目成功
画像URL:4件、HTTP 200
タイトル:管理表と一致
タグ:5件
禁止マーカー:0件
同日候補:1件
未確認:本文の事実、画像内文字、公開可否
次の操作:Qiitaへ全体公開、X共有なし
「成功したこと」と「まだ確認していないこと」を並べると、人間は承認の範囲を理解できます。
承認依頼も具体的にします。
公開資産リポジトリのmainへ画像4点を追加し、
Qiitaへ全体公開してよいですか。
X共有は行いません。
「進めてよいですか」だけでは、原稿の保存、画像の公開、Qiita投稿のどこまでを含むか曖昧です。対象、変更先、公開範囲を明記します。
AIが止まる条件を先に決める
安全な分担では、AIが何をできるかだけでなく、どこで止まるかを決めます。
私は次の場合に公開処理へ進めません。
- 同じ日の公開候補が0件または複数ある
- 管理表と本文タイトルが一致しない
- 画像URLが必要数に満たない、または表示できない
- 仮置き文字や確認待ちが残っている
- 直前記事の公開状態を確認できない
- 同名記事がすでに存在する
- 投稿先アカウントを確認できない
- Human Approvalがない
- 承認後に本文や画像が変わった
最後の項目は特に重要です。人間が承認したあとで本文が変更された場合、その承認は変更後の本文へ自動的には引き継ぎません。差分を示し、必要なら再承認を受けます。
公開後の確認も分担する
投稿APIが成功を返しても、作業は終わりではありません。
自動確認できることがあります。
- HTTPステータスが成功か
- 記事IDとURLが返ったか
-
private=falseか - タイトルとタグが一致するか
- 投稿した本文と取得した本文が一致するか
- 公開ページと画像URLが表示できるか
一方、人間は実際の見え方を確認します。
- アイキャッチや本文図が意図どおりか
- 見出しや表が読みにくくなっていないか
- 重要な注意書きが埋もれていないか
- 公開範囲と投稿者表示が想定どおりか
- 訂正が必要な違和感がないか
公開後に問題が見つかった場合も、AIが勝手に更新や削除をしません。差分と影響範囲を整理し、人間が修正方法を承認します。
実際に使う役割分担表
# 公開前チェックの役割分担
## 自動検査
- [ ] ファイル、タイトル、文字数、画像数、タグ数
- [ ] 禁止マーカー、重複候補、直前記事の状態
- [ ] 公開画像URLのHTTP応答
## AIレビュー
- [ ] 固有名詞、数字、日時、引用を抽出
- [ ] 事実表と本文の差分を列挙
- [ ] 予定・決定・実施済みの表現を分類
- [ ] 不明点を推測せず確認待ちとして提示
## Human Approval
- [ ] 採用する事実と表現を決定
- [ ] 個人情報・未公開情報・公開可否を判断
- [ ] 投稿先、公開範囲、共有範囲を確認
- [ ] 外部サービスへの実行を承認
## 公開後
- [ ] API結果、URL、記事ID、本文一致を自動確認
- [ ] 人間が公開ページの見え方を確認
- [ ] 管理表をpublishedへ更新
この表で大切なのは、AIと人間の作業量を半分ずつにすることではありません。判定できることは機械へ、比較と整理はAIへ、責任を伴う判断は人間へ置くことです。
まとめ
AIと人間で公開前チェックを分担するときは、検査、レビュー、承認を分けます。
- 答えが1つに決まる確認は自動化する
- AIには差分と問題候補を整理させる
- 事実採用、意味、公開可否、公開範囲、実行は人間が決める
-
readyとapprovedを分ける - 成功した項目と未確認項目を同時に示す
- 承認依頼には対象、変更先、公開範囲を書く
- 差分、不明点、未承認があれば止まる
- 承認後に変更があれば再確認する
- 公開後もAPI結果と実際の表示を分けて確認する
自動化の目的は、人間を公開工程から外すことではありません。数えられる確認を任せ、人間が意味と責任の判断へ集中できるようにすることです。
AIが「投稿できる」と確認し、人間が「公開してよい」と決める。この境界が残っていれば、公開作業を速くしても、最終判断まで自動化せずに運用できます。
次回は、Human Approvalを受けたあとに本文が変わったとき、どの差分なら再承認が必要かを整理します。



