re:Invent2025のセッションで、面白い話があったのでまとめます。
特に、AWSのエコシステムでAIを使うとなるとこういう感じになるんだな、というのがよくわかる話でした。
ちなみにセッションはこんな感じの会場でした。
100名くらい入れる会場に、2つ大きな画面がある状態です。(写真の右側に登壇者がいます)
セッション:[DEV323] AI Native Development:Strategies and Impact across Amazon and AWS
概要
ソフトウェア開発サイクルの中で、どのようにしてAIネイティブな開発ができるかという話。
AIネイティブ開発とは
① AI Assisted(2024年までのAIの使い方)
-
タスクごとのアドホックなツールを使い分ける
-
オートコンプリートやチャットの活用に留まる
-
人が都度コンテキストを切り替えながら作業
-
生産性は「個人単位」「タスク単位」で限定的
これらをAmazonQを使って実現していました。
つまり、「AI を使ってはいるが、開発プロセスに統合されていない状態」 でした。
② AI Native(AIが前提の開発)
AIが完全にワークフローに組み込まれ、各ステップを代理で進める状態のことです。
例えば...
- AI がワークフロー全体に自然に組み込まれている
- エージェントが複数ステップのタスクを自律実行
- コンテキストがエンドツーエンドで共有される
- 生産性は個人ではなく「組織全体」で向上
→キーワードは 「エージェント化」 と 「コンテキスト共有」 です。
AI Native開発を組織に根付かせるための基本
AIシニシズム(失望の悪循環)
AI導入で失敗する企業にありがちなサイクルとして、以下が挙げられていました。

好奇心/期待
↓↓↓
試してみる
↓↓↓
期待外れ・失望
↓↓↓
懐疑的になる
→ 再び期待せず使わない
AIネイティブ開発を根付かせるためには、この「失望サイクル」を抜け出す必要があります。
AI Native Learning Flywheel(健全な成長サイクル)
成功するチームは、以下の正の循環を回しているということです。

好奇心/期待
↓↓↓
試してみる
↓↓↓
期待外れ・失望
↓↓↓
懐疑的になる
→ 再び好奇心へ
個人の意見ですが、「AIは実務では(まだ)使えない」、と判断するだけでなく
「他に方法やサービスはないのか?新しいアップデートはどうか?」と積極的に調べていく気持ちが、AIを根付かせる上で大事、という風に受け取りました。
AIが関与する開発プロセス(AI across SDLC)
現在AIは SDLC(要件 → 設計 → 開発 → テスト → デプロイ → 運用 → 学習)
の全工程に入ってきている。
AWSのサービスで対応すると以下のようになる。

| 工程 | 役職(人) | AIサービス |
|---|---|---|
| Idea(企画) | PM/全員 | Kiro, Quick Suite, AIライティングアシスタント |
| Design(設計) | UXデザイナー/エンジニア | Kiro, AmazonQ Developer, 設計AIツール |
| Code(開発) | エンジニア/データサイエンティスト | Kiro, AmazonQ Developer, AIコードレビューエージェント |
| Test(テスト) | エンジニア/品質管理者 | Kiro, AmazonQ Developer, AIテストエージェント |
| Deploy(デプロイ) | エンジニア/品質管理者 | Kiro, デプロイエージェント |
| Operate(運用) | エンジニア/運用者 | Kiro, AIオペレーションエージェント |
| Learn(学び・分析) | データサイエンティスト/PM | Kiro, QuickSuite |
※各AIサービスの概要は以下
| AIサービス | 説明 |
|---|---|
| Kiro | 開発者向けAIエージェントプラットフォーム(IDE)。Claude Codeとかと同じカテゴリ 要件定義から設計までを、質問に回答していきながら作成することができる また、作成した設計書をもとにコードを作成することができる。 さらに、re:Invent2025 で以下のアップデートがあった。 "各サービスがライブラリをどのように使用しているかを分析し、パターンに従ってコードを更新し、テストを実行し、プルリクエストまで作ってくれる プルリクエストにフィードバックすると、それをずっとコンテキストとして覚えており、以降のコード作成などに役立ててくれる"、Kiro Autonomous Agent が誕生した https://kiro.dev/blog/introducing-kiro-autonomous-agent/ |
| AmazonQ Developer | 生成AIを活用したAIアシスタントサービス。コード生成、コードレビュー、テスト作成、バグ修正、ドキュメント生成など幅広く行うことができるAIツール https://docs.aws.amazon.com/ja_jp/amazonq/latest/qdeveloper-ug/what-is.html |
| QuickSuite | データ分析、レポート生成、ダッシュボード作成など、従来のQuickSightに生成 AI を融合させた、包括的なデータプラットフォーム https://aws.amazon.com/jp/quicksuite/ |
また、これらを下支えする基盤として
MCP、Knowledge base(RAG)、Bedrock(AI) モデル & エージェントがあります。
AI活用のスタック
企業がAWSを使用してAIネイティブ化するための、4層アーキテクチャについて解説しています。
1. Foundational Infrastructure(基盤)
AIが安全・安定して動く土台で、以下のようなサービスが挙げられます。
- AWS コンピューティング系(例:EC2, ECS, Lambda)
- IAM
- オブザーバビリティ系のサービス(例:CloudWatch, X-Ray)
2. AI Model & Capability Layer(モデル層)
AIモデルとエージェントの能力を提供するサービスについて、以下が挙げられます。
-
Bedrock(Nova, Claude等)
-
SageMaker
-
AgentCore
3. Shared Context Layer(文脈共有層)
全エージェントと人が同じ情報を共有するレイヤーです。
大企業で「AIが正しく働くための最重要レイヤー」になります。
ポリシー・アクセス制御・データリネージもこの層です。
-
MCPエコシステム
-
ナレッジベース
-
プロンプトテンプレート
-
コンテキストファイル
4. Experience & Tool Layer(体験層)
開発者・PM・Opsが日常で触るUI/UX層です。
- Kiro CLI
- チームごとのカスタムエージェント
- AIアシスタント
また、全体としては 認証、ガードレール、監査、容量管理 が統合されている状態が前提です。
ニュースレターサービス の、AI活用による Before/After による変化
例えばということで、このような事例が挙げられていました。
Before
・世の中のAI関連情報を検索
・手動で下書きし、編集
・合計 2〜3 時間かかっていた
After
・QuickSuite が世の中のAI関連情報を自動取得
・Kiro のエージェントが記事執筆、HTML生成まで自動で行う
Upskilling Everyone(開発者だけでなく全社員がAIを使う時代へ)
組織全員が AI でスケールする世界観では、以下のような状態になります。

| 役職(人) | 役割 |
|---|---|
| エンジニア | Spec駆動開発(Kiroで設計書を作成する) エージェントによるエンドツーエンド自動化 MCPでDev/Opsデータを統合 |
| PM & デザイナー | AIプロトタイピング、生成的探索、顧客理解のためのMCP活用 |
| データ管理/運用者 | AIダッシュボード生成、root cause分析のAI支援、MCPの調整 |
| リーダ | AIによる意思決定支援、目標管理の自動化、戦略ドキュメントのMCP自動生成 |
まとめ
AIネイティブ開発とは…
-
AI がタスクを補助するのではなく、タスクを "主体的に遂行" する世界
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コンテキストが組織全体で共有され、AIエージェントが連携して働く
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すべての職種(PM, エンジニア, 運用者, デザイナー, リーダ)がAIで強化される
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AI活用の成功は、技術より 「学びの循環」 を作れるかで決まる

