最近、AI技術の進歩により、特にソフトウェア分野では、開発スタイルに大きく変化が起きています。
一方で、ハードウェア開発におけるAIの活用はまだ限定的です。本記事では、電子工作におけるAI活用の現状を評価するために各種ベンチマークを実施し、現在地を認識してみました。
代表的なモデルとして以下の2つのモデルで評価しました!!
- Gemini 3 pro(以下、Gemini)
- GPT5.1(以下、ChatGPT)
1. アートワークをさせてみる
やっぱり、電子工作で一番めんどくさいのはアートワークといっても過言ではないのでしょうか?
もし、AIがアートワークできたら、、、、、もっともっと電子工作が手軽になります。
テキスト生成アプローチ ✖️
KiCadのファイルをそのままテキストとしてLLMに読み込ませた上で、ネット情報をテキストで教えて、配線をさせてみました。
| Gemini ✖️ | ChatGPT ✖️ |
|---|---|
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両者、同じミスで結線情報を間違えています。
kicadの設計ファイルをプロンプトとして入力しているためコンテキストが長くなり、性能が低下した可能性があるかなと考察しています。
画像生成アプローチ ⭕️
このアプローチは、テキストで指定したネット情報をもとに配線のパスをテキストで生成するのではなく、画像生成AIに配線ぽい画像を生成させるといったアプローチです。
コンデンサーの1ピンとICの2ピン
コンデンサーの2ピンとICの3ピンに配線した画像を生成して
| Gemini ⭕️ | ChatGPT ✖️ |
|---|---|
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) |
こちらはスクリーンショットではなく、AIが生成した画像です。
Gemini:正直驚きました、きちんとテキストからネット情報を読み取り配線の接続も正しくできています。画像生成も細部まで意味を持った画像が生成できるのかと驚いています。
ChatGPT:こちらは従来通り、とりあえず配線ぽいものを書いてみたという印象でした。
※ 以下のフットプリント画像は、生成AIにより作成したイメージ図です。
特定のメーカーや実在する製品のデータシートを再現したものではありません。
2. 画像からIC部品のフットプリントを生成させてみる
フットプリントを1から手動で作成するのは時間がかかりますし、作業ミスも起こりやすいです。
そこで、データシートの画像から、AIを使ってフットプリントを自動生成できないか試してみました。
対象:QFNのようなシンプルなフットプリント ⭕️
プロンプト
この画像からkicad9で使えるフットプリントファイルをあなたが生成して
[データシートの寸法画像]
QFN系は大半のCADで既存のライブラリあるので、基本的に作り直すといったことはないですが、基礎的な図面として評価してみました!
この図面の難しい点は、図面上の寸法記号と、表の中の寸法値を正しく認識して正しく寸法を認識できるか、矢印の始点と終点などを正しく認識することができるかという点です。
結果
| Gemini ⭕️ | ChatGPT ✖️ |
|---|---|
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Gemini: 完璧なフットプリントが生成できています。
1ピンの位置なども間違ってなく完成度の高いフットプリントが生成されてます。各寸法を確認したところ、図面通りに生成されています。
すごい。。。。。。
ChatGPT: 図面上ではパッド33ピンの寸法が3.7mm X 3.7mmであるのに対しして、CAD上では3.3mm X 3.3mmと小さく生成されてしまっています。
おそらく、表の寸法表と図面の寸法位置を正しく認識できていないのではないかと予想しています。画像から大体の雰囲気でフットプリントとを生成している印象でした!
※特定メーカーの図面や寸法値をそのまま出力させる目的ではなく、 あくまで構造理解の補助として使用しています。
3. ドキュメントに使う図を生成させる
論文など、ドキュメントに使う回路図、概略図をAIで生成して、パワポをぽちぽちする作業をなくせないか試してみました。
回路図を書いてみる ⭕️
latexで回路図を書くのは、テキストで記述するため、慣れていないと大変です。そこで、AIに回路図をlatexで書いてもらうことができないか試してみました!
プロンプト
Hブリッジの回路図をlatexで書いて
| Gemini ⭕️ | ChatGPT ⭕️ |
|---|---|
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Gemini: ハイサイド側はPchMOS、ローサイド側はNchMOSで構成されており、きちんとした回路図が書けていますね
ChatGPT: こちらもハイサイド側はPchMOS、ローサイド側はNchMOSで構成されており、きちんとした回路図が描けています。
ただ、負荷の配置の意図が不明です。
ブロック図を書いてみる ⭕️
ドキュメントなど、回路の概略図を生成したいときに、AIで生成できないか試してみました。
プロンプト
マイコンにCO2センサー、温度センサーを繋いで、マイコンとそれぞれのセンサーはUSBポートから電源を取っているシステムのブロック図をSVGで生成して
| Gemini ⭕️ | ChatGPT ✖️ |
|---|---|
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Gemini: 位置関係、矢印の方向など全て完璧にできています。
ただ、テキストが図に被っている箇所が多々あり、軽微な修正は必要ですが、実用的な印象です。
ChatGPT: 位置関係、矢印の方向などが少しおかしい箇所があり、あまり実用的ではありません。
まとめ
本記事では、電子工作におけるAI活用の現在地を「アートワーク」「フットプリント生成」「ドキュメント図生成」の3つの観点から評価しました。
特に印象的だったのは、画像生成AIを用いたアートワーク生成です。この手法には大きな可能性を感じました。
以前から同様の検証を行ってきましたが、これまでは満足のいく結果が得られませんでした。
しかし、直近のモデルでは空間認識能力などが飛躍的な向上を感じました。
今後も継続的にベンチマークを実施し、技術の進化を追っていきたいと思います。
電子工作においてAIをどのように活用していけるか、ぜひ皆さんも一緒に考えていきましょう!
生成AI活用の際の注意点
本記事では、生成AIを用いたフットプリント作成の可能性を検証しています。
一方で、他社のデータシートや設計資料をそのまま入力した場合、
生成されるアウトプットが意図せず転載に近い状態になる可能性があります。
そのため、生成AIを設計補助として活用する際には、
特定メーカーの図面や寸法値をそのまま再現することを目的とせず、
構造や考え方といった抽象的な情報を与える形で利用することが重要です。
なお、本記事で紹介している生成結果は、
特定メーカーの設計データや実在する製品にそのまま利用できることを保証するものではありません。
あくまで、生成AIが設計検討の補助としてどこまで活用できるかを示す参考例です。











