__前回__から引き続き、AEの基礎知識覚書。
今回はアニメーションの発展編ならびにエフェクトついて執筆する。
##アンカーポイント
__アンカーポイント__は、レイヤー(オブジェクト)の中心となる点のこと。前回の「位置」の座標の基準点や「回転」の回転軸はすべてこのアンカーポイントを基準に行われる。初期状態ではアンカーポイントはすべてそのレイヤー(オブジェクト)の中央に設定されている。
アンカーポイントを変更するには、そのレイヤーのアンカーポイントプロパティの数値を書き換えるか、アンカーポイントツールに持ち替えてポイントをドラッグ移動させる。
▲初期状態では星の中央にあるアンカーポイントを上側に移動させたときの回転の違い
##親子
2つ以上のレイヤーをいっぺんに変形させたり、別のレイヤーの変形に追従しつつ個別に変形したりさせるための機能として「親子」機能というものがある。
例として人間の腕を模したイラストを用意した。肘や手首などの関節で曲げることができるように左から「二の腕」「前腕」「手」の3つのレイヤーに分けている。そしてアンカーポイントの位置を、「二の腕」は肩付近、「前腕」はひじ付近、「手」は手首付近に設定した(画像ではわかりやすいように青い点で示している)。
手首を軸に「手」レイヤーを回転させるには「手」の回転プロパティの数値を変更するだけで良い。
しかし、肘の部分で同様に回転させようと「前腕」レイヤーの回転プロパティの数値を変更すると、「手」がそれに追従せず置いてきぼりになり「前腕」だけが回転してしまう。「二の腕」も同様に回転させても「前腕」「手」の両方がその回転に追従しない。
これを解決するための機能が__親子__設定である。
電車を「親」、乗客たちを「子」としたら、電車(親)の中で乗客(子)たちはそれぞれ自由な方向に動き回ることができるが、その乗客(子)がどれだけ動き回っても電車(親)の進行方向に影響しない(乗客(子)が電車(親)の進行方向に歩いても電車(親)はその分スピードアップしない)。一方で電車(親)が動けば乗客(子)たちも一緒の方向に動き出すことになる。これが親子間の影響の関係性である。
また、上の例えからもわかる通り、親に対して子は複数関連付けることができる一方、子は一つの親しか持つことができない。ただしその親のさらに親であれば設定することができ、電車の例で言うなら「地球の自転」が電車の親と言える。「乗客」から見れば「地球の自転」は親の親(祖父母世代)となる。
つまりここでは、「手」を乗客(子)、「前腕」を電車(親)、「二の腕」を地球の自転(親の親)に当てはめて親子の紐づけをする。
まずレイヤーパネル上の「手」レイヤーの右側にある「親」と書かれた項目を参照する。初期設定では「なし」と書かれているが、このプルダウンメニューから「前腕」レイヤーを選択する。
同様に「前腕」レイヤーも、プルダウンから「二の腕」に設定する。
この操作によって、上図のように「手」の親が「前腕」、「前腕」の親が「二の腕」となった。
親子として紐づけられたレイヤーは、親の動きに合わせて子も追従するようになる。
逆に、上で電車の例えに出した通り、「手」レイヤーの回転プロパティ数値を変更しても、親の「前腕」の回転には影響せず子の「手」だけが回転することがわかる。
親子設定を駆使し上のように複雑なアニメーションが完成した。
右は親子設定を解除した様子。3つのレイヤーがそれぞれの関節部分を軸とした異なる回転をしているが、「二の腕」の動きに合わせて「前腕」が、「前腕」の動きに合わせて「手」が一緒に動くことで、関節部分で接合し左の動きになっている。
##エフェクトの追加
「After Effects」というツール名からもわかる通りAEで最も重要な要素が__エフェクト__と言える。Photoshopと同様に、レイヤーごとにエフェクトをかけたり、調整レイヤーを作成したりすることができる。
動画にエフェクトをかけることができるのはもちろん、前回解説したキーフレームを使用すれば再生時間によってエフェクトの強弱等が次第に変化していくような演出も可能になっている。
前回作成した星のコンポジションにエフェクトをかけた動画を作成する。
まず雲にブラー(ぼかし)をかけてみる。
「雲.ai」レイヤーを選択した状態で「エフェクト > ブラー&シャープ > ブラー(ガウス)」をクリック、レイヤー下に現れた「エフェクト」プロパティからブラー強度の数値を30に変更した。すると雲がぼやけて奥行き感ができ、主役の星に焦点が合いより目立つようになった。
次に「調整レイヤー」を作成しコンポジション内全体にエフェクトをかける。調整レイヤーとは、そこから下にあるすべてのレイヤーに対しエフェクトをかけるためのレイヤーである。
「レイヤー > 新規 > 調整レイヤー」を選択し、現れた調整レイヤーを一番手前側に移動させる。この調整レイヤーに先ほどと同様今度は「エフェクト > カラー補正 > 自然な彩度」を適用した。
前回キーフレームアニメーションを作成した要領で、0秒地点の数値が0(初期値)、1秒地点の数値が-100(彩度最少)となるようにキーフレームを打つ。こうすることで、1秒かけて画面全体がだんだんくすんでいくアニメーションができた。
##動画の書き出し(レンダリング)
ここでは__「レンダーキュー」を使用した書き出し__を解説する。
- 書き出したいコンポジションがタイムラインパネルのタブで選択されていることを確認する。
- 「ファイル>書き出し>レンダーキューに追加」もしくは「コンポジション>レンダーキューに追加」を選択する。ショートカットキーはcommand+shift+/
- レンダリング設定・出力モジュール・出力先 各種設定を必要に応じて変更する。
- 右端の「レンダリング」をクリックしてレンダリング(動画書き出し)開始。
複数のコンポジションを同時に書き出す場合は、上記の手順1~3を必要分だけ繰り返してレンダーキューに追加していき「レンダリング」を押すことでまとめてレンダリングされる。動画のレンダリングにはものによってはかなりの時間がかかるので、複数まとめてレンダリング設定をし休憩する、といったことができる。
また、ひとつのコンポジションから、「原寸の動画」「サイズ縮小した動画」「静止画」などいくつかの出力形式を同時に書き出したい場合は、「出力モジュール」の右側にある「+」のクリックで増やし、複数の出力設定を登録すれば良い。
上の画像では、「sampleコンポジション」と「armコンポジション」の書き出しがキュー(書き出し予約)されている。さらに、armコンポジションでは出力モジュールが増やされ、サイズを変更した動画2種類と、連番JPG画像書き出しを行おうとしている。この状態で右上の「レンダリング」ボタンをクリックすれば合計4種類の書き出しが一度に行われる。
以上、全3回にわけAEの基礎知識・書き出しまでの基本操作を解説した。