はじめに
PCの入れ替えやキッティング時に限らず、IT部門にとってAdobe Acrobatの種類(Reader / Standard / Pro / Premium)を都度意識して配布・管理するのは煩雑で悩ましい作業です。
Acrobat 64bit版 Unified Installer1 を使えば、企業のPDFアプリケーションを統一し、Acrobatの種類を区別することなく、1つのインストーラで一括展開・管理が可能になります。ライセンスの有無に応じて自動的に機能が有効化されるため、運用の手間を大幅に軽減できます。
本記事では、Unified Installerの導入手順と、展開時に押さえておくべきポイントについて解説します。
なぜPDFアプリケーションの統一が必要?
企業内でPDFアプリケーションが部門ごとにバラバラに導入されているケースは少なくありません。特に、各部門が独自にPDFツールを選定・運用しているような環境では、以下のような課題が生じやすくなります:
- アプリケーションごとに操作画面や機能が異なり、ユーザの混乱や教育コストが発生する
- IT部門のサポート対象が多岐にわたり、トラブル対応や問い合わせ対応が煩雑になる
- アプリごとにPDFの生成品質やセキュリティ設定が異なり、文書の一貫性やコンプライアンス対応に支障が出る
- 非承認のアプリや古いバージョンが使われることで、情報漏洩やマルウェア感染などセキュリティリスクが増大する
- ライセンスやアプリケーション資産の管理が煩雑化し、重複投資や未活用ライセンスが発生しやすくなる
こうした課題を解決するためには、PDFアプリケーションを世界標準のAdobe Acrobatに統一し、会社全体で一元的に管理することが効果的です。これにより、ユーザの操作性を標準化し、IT部門の運用・サポート負荷を軽減するとともに、PDF文書の品質やセキュリティポリシーを統一できます。
さらに、Admin Consoleでアプリケーションの割り当て状況を可視化できるため、企業としてのアセット管理を最適化し、ライセンスの有効活用にもつながります。
このような運用の統一を実現する手段として、Acrobat Unified Installer は非常に有効です。
Admin Consoleは法人向けプラン(グループ版、エンタープライズ版)の契約が必要です。
Acrobat Unified Installerとは?
Adobe Acrobatの64bit版インストーラはUnified Installerと呼ばれ、Acrobat ReaderとAcrobat Pro/Standard/Premium(以下有償版とします)を統合した1つのインストーラです。
主な特徴:
- 企業のIT管理者が Acrobat Readerと有償版を別々にインストール・管理する必要がありません
- ユーザのサブスクリプション状態に応じて自動的にReaderまたは有償版機能が起動します
- AcrobatをデフォルトのPDFアプリケーションとして設定可能です
公式ドキュメント:
64-bit Unified App Installer
導入前の注意点
導入にあたり、以下の制限事項にご注意ください。
項目 | 内容 |
---|---|
シリアル番号 | 非対応(アカウントベースのライセンスのみ) |
Acrobat Reader 32bit | アンインストールが必要 |
サードパーティ製プラグイン | Readerモードではサポートされません |
共有デバイスライセンス | 非対応 |
サポートされない変換形式 | AutoCAD (ODA), Visio, Project, XPS, EMF |
メール連携 | Lotus Notesは非サポート |
同一PCでのReader/Pro併用 | 64bit版では別々のインストールは不可 |
導入ステップ
STEP 1: Acrobatのダウンロード
Acrobat Pro 64bit (Windows)版を下記ページからダウンロードします。
Acrobatダウンロードページ
STEP 2: Customization Wizardの準備
Acrobat Customization Wizardをダウンロードします。
Customization Wizard ダウンロード
使い方の詳細はこちらもご覧ください: Acrobat Customization Wizard
STEP 3: インストーラのカスタマイズ
Acrobat Customization Wizardを起動します。そしてSTEP 1で解凍したインストーラの中にある AcroPro.msi
を指定して開きます。
STEP 4: レジストリ設定の追加
左側のメニューから「Registry」を選択して、右側パネルの「Destination Computer」(下側)で以下のレジストリキーと値を追加します。
HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Policies\Adobe\Adobe Acrobat\DC\FeatureLockDown:"bIsSCReducedModeEnforcedEx"=dword:0000001
追加後、設定を保存します。
これで、インストーラができました。このインストーラを使ってAcrobatをインストールします。
STEP 5: インストールの実行
解凍フォルダ内の setup.exe
を実行して、アプリケーションをインストールします。
動作確認
ログインしていないユーザ、またはAdmin Consoleにユーザ登録されているが、Acrobatの有償版を割り当てられていないユーザ
Acrobat Readerの機能としてご利用いただけます。ただし、PDFの作成や編集などの有償版の機能は使用ができなくなっています。
サブスクリプションが割り当てられているユーザ
ログイン後、有償版で利用できる機能が有効になります。AIアシスタントなどの追加機能が割り当てられていた場合には、こちらも利用が可能です。
おわりに
Acrobat Unified Installerを使えば、1つのインストーラでAcrobat Reader/Standard/Pro/Premierをシンプルに展開、管理が可能です。多くのユーザPCに対する展開や共用PC環境にも適しており、IT管理者の負担を大きく軽減できます。
現在Acrobat Readerを利用しており将来的に有償ライセンスの導入を検討している企業ユーザ様にとっても、まずはUnified Installerを用いた環境整備を行うことで、ライセンス移行や機能拡張もスムーズに進めることが可能です。