本記事はLITALICO Advent Calendar 2025のシリーズ2の22日目の記事です。
はじめに
はじめまして、LITALICOのブランドエクスペリエンスデザイン室(通称 BXデザイン室)に所属している @ayami_n です。
障害福祉領域の転職サイトLITALICOキャリアのデザインを担当しています。
プロダクトが成長する過程で、いつの間にか「なぜこのデザインなのか?」を説明できる人がいなくなってしまうことがあります。私が担当するプロダクトでも、立ち上げ時のデザイナーが不在となり、リリース当初のデザインコンセプトがロストしている状態でした。
本記事では、過去の資料がほぼない状態から、どのようにコンセプトを再定義したかを振り返りも書き残せればと思います。
💭 デザインコンセプトって?
デザインコンセプトとは、一言で言うと『そのデザインが目指す方向性や、根底にある考え方』のことです。
家づくりで例えるなら、間取りや壁紙を決める前に「家族が自然と集まる、温かい家にしたい」という基本方針を決めるようなものです。これがあることで、デザインに一貫性が生まれ、関わる人全員の認識を合わせることができます。
💬 デザインコンセプトがないことで起きる問題
デザインコンセプトとは、単なるスローガンではありません。細かな意思決定を束ねる「共通言語」です。これが失われると、以下の問題が発生します。
1.意思決定の軸が失われ、フィードバックが属人化する
共通言語がないため、フィードバックが個々の主観に基づく「らしさ」に終始し、人によって内容がブレやすくなります。
2.デザインの許容範囲や表現の広げ方が判断しづらく
「どこまでが許容範囲か」の判断基準がないため、新しい提案がしづらくなり、表現の幅を広げることが難しくなります。
3.ブランドの一貫性を担保できず、認知向上に影響が出る
プロダクト、広告、SNSなど、異なる接点でブレが生じ、ブランド認知を損なうリスクが生じます。
🎨 プロダクトから「らしさ」を逆引きする
資料がほぼ残っていなかったため、コンセプトは「ゼロから作る」のではなく、現状のプロダクトから「発掘(逆引き)」するアプローチで策定を進めました。
1.過去と現状の比較分析
リリース当時のデザインと、数年の改善を経て辿り着いた現在のUI、ロゴや営業資料を並べ、その変遷から感じ取れる「LITALICOキャリアらしさ」をデザイナー・PdMで言語化し、キーワードとして抽出しました。
2.各チームへのヒアリング
デザイナー・PdMだけでなく、エンジニアやマーケティングチームにもヒアリングを実施しました。異なる視点から出されたキーワードを収集し、組織全体が潜在的に持っているプロダクト像を整理しました。
📃 デザインコンセプトとデザイン原則の策定
すでにプロダクトのブランドコンセプトが定義されているため、そこからブレイクダウンする階層構造でデザインコンセプトとデザイン原則を策定しました。

デザインコンセプトの策定
ブランドコンセプトを起点に、「LITALICOキャリアらしさ」を深掘りしながら、プロダクトで実現したいことや具体的な提供価値を整理していきました。
言語化のプロセスでは、特に「言葉のニュアンス」に対する議論が非常に印象に残っています。
例えば「道標」という言葉一つとっても、強力にリードするような立ち位置ではなく、ユーザーの意思や理想を尊重し「併走する」存在でありたい。こうした議論を通じて、私たちが目指すべきユーザー体験のあり方をチーム全員で共有することができました。
デザイン原則の策定
デザイン原則は「基本姿勢」「機能的価値」「情緒的価値」の3つの軸で策定をしました。
デザイン原則の再定義にあたって最も意識したのは、一貫性と柔軟性の両立です。
LTIALICOキャリアは利用するユーザー属性が複数存在しているため、一つの原則ですべてをカバーしようとせず、3つの軸を核としてユーザーの状況に合わせて枝分かれする形で強調するべき価値とデザイン上での表現を整理していきました。
コンセプトの策定によって変わったこと
デザインコンセプトという「言語化された指針」が確立されたことで、検討において、迷う時間が削減され、具体的な表現の深掘りにリソースを割けるようになりました。
現在は、このデザインの軸を活用しプロダクトに反映していくためにグロース施策を検討中です。単なる見た目の刷新に留まらず、一貫したブランディングを通じて「障害福祉の採用・転職ならこのサービス」という地位を確立し、さらなる事業成長へと繋げていければと思います。
終わりに
今回の策定は、単にルールを言語化するだけでなく、チームが潜在的に持っていたプロダクトへの想いをあらためて再認識し、全員が同じ方向を向くための機会になったと感じています。
デザインコンセプトを作って終わりにしないためにも立ち帰る場所として今後もブランドとしての世界観を大切にしながらデザインしていければと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました!



