ストーリーテリングを活用したスクラム開発
はじめに
ストーリーテリングという技術をご存じでしょうか。これは、情報を単に伝えるのではなく、「物語の形」にすることで、相手の共感を得やすくし、記憶に残りやすくする技術です。歴史に残るプレゼンの達人達もこの手法を駆使しています。
1. ストーリーテリングの要素
ストーリーテリングには、以下の要素が含まれます。
- 登場人物(Characters) - 物語の中心となる存在。主人公や対立者、協力者など。
- 課題や問題(Conflict) - 物語の核心となる課題や試練。これが関心を引き、展開が生まれます。
- 行動と変化(Action & Change) - 課題に対する行動と、それによって生じる変化。
- 結末(Resolution) - 課題が解決されたり、新たな気づきが生まれる部分。
- 感情(Emotion) - 感動や共感が生まれることで、印象に残りやすくなります。
スクラム開発においても、このストーリーテリングの手法は役立つ場面が多いです。本記事では、スプリントプランニングとスプリントレビューの場面で、どのようにストーリーテリングを活用できるかを紹介します。
2. スプリントプランニングでの活用
スプリントプランニングでは、ストーリーチケットの説明を行う場面があります。ただ単に「この機能を追加する」と説明するのではなく、なぜこの機能が必要なのか、どのような背景があるのかをストーリーとして伝えることが重要です。
実践例
例: ユーザープロフィール編集機能の追加
- 現在の課題:「現在、ユーザーがプロフィールを編集する機能がなく、名前を変更するだけでもカスタマーサポートに問い合わせる必要があります。このため、ユーザーの手間が増え、運営側も問い合わせ対応に時間を取られています。」
- 新機能による改善:「この新機能を追加することで、ユーザーが自分でプロフィールを編集できるようになり、問い合わせ件数が削減され、運営の負担も軽減されます。」
- デモを活用:「現在のアプリの動作をデモし、新機能追加後の改善点を具体的に説明します。」
このようにストーリーテリングを意識することで、
- 開発チームとステークホルダーの仕様認識のズレが軽減されます。
- 実装者がイメージしやすくなります。
- テストケースの洗い出しが直感的にできるようになります。
3. スプリントレビューでの活用
スプリントレビューでは、今回のスプリントで実装された機能をお披露目します。この際も、単なる機能紹介ではなく、ストーリーテリングの手法を用いることで、ステークホルダーにとって分かりやすいデモとなります。
実践例
例: 商品のお気に入り機能の追加
- これまでの課題:「ECサイトのユーザーが気に入った商品を簡単に保存する方法がなく、毎回検索し直す必要がありました。そのため、購入機会を逃してしまうことが多かったのです。」
- 新機能による変化:「今回の新機能では、ワンクリックで商品をお気に入りリストに保存できるようになりました。これにより、ユーザーがスムーズに商品を管理でき、購入率の向上が期待できます。」
- デモを活用:「実際の操作画面を見せながら、どのように使うのかを説明します。」
このアプローチにより、
- ステークホルダーが新機能の価値を直感的に理解できるようになります。
- 仕様の認識のズレが減り、フィードバックが的確になります。
- 次のスプリントに向けた改善点がスムーズに洗い出せるようになります。
おわりに
スクラム開発では、単に仕様を説明するのではなく、「なぜこの機能が必要なのか?」をストーリーとして伝えることが重要です。
ストーリーテリングをスクラムに組み込むことで、開発チームとステークホルダー間の認識が統一され、プロダクトの付加価値を最大限に伸ばすことができます。
スプリントプランニングでは、背景や課題を明確に伝えることで、開発者が仕様の意図を理解しやすくなり、実装やテストの質が向上します。スプリントレビューでは、ストーリーを用いたデモにより、新機能の価値が直感的に伝わり、より良いフィードバックを得ることができます。
ストーリーテリングを活用することで、開発の方向性が明確になり、ユーザー視点での価値が伝わりやすくなります。 ぜひ、次のスクラムイベントでストーリーテリングを試してみてください。
参考