はじめに
株式会社うるるのえんフォト事業部でフロントエンジニアをしている坂本です。
AIの進化が凄まじい中、フロントエンジニアとして働いていると
- この先もフロント一本で戦えるのか
- バックエンドも触っておいた方がいいのか
- マネジメントに寄せるべきなのか
など、将来への不安や迷いが頭をよぎる夜もあります。年次の近いフロントメンバーとも、同じような話をすることがあります。
そんな中、これからもフロント領域で価値を提供し続けるための武器を増やすべく、
今年の1月から7月にかけて業務と並行しながら、デザイン専門学校に通い、UX/UI 専攻コースを受講しました。
この記事では
- どんな背景で学校に通うことを決めたのか
- 実際にどんな学校で、どんなことを学んだのか
- その学びが業務にどう繋がっているのか
といった内容を、実体験ベースでまとめています。
フロントエンジニアのキャリアに関心がある方や、採用視点での参考になれば嬉しいです。
🏃♂️ 学校に通うまでの背景
私のキャリアは営業からスタートしました。その後、未経験でエンジニアに転職。SESで経験を積みながら、市場価値を上げるためにフロントエンドを軸にしつつ、バックエンドの実装やGCPの資格取得など、いわゆるフルスタック寄りの動きをしていた時期もありました。
しかし、どこか中途半端なスキルセットになってしまう気がしたこと、単純にフロントの実装が好きだったこと(当時のチームメンバーにも「フロントやってる時の方が楽しそう」と言われました笑)もあり、フロント専⾨で転職活動を行い、ご縁があって うるる に入社しました。
ただ、AIの進化により
- 最新のReactに精通している
- CSSが得意でゴリゴリ書ける
- E2Eテストの導入・運用経験がある
といった、ひと昔前まで評価されやすかった表層的なスキルだけでは、差別化が難しくなりました。
「言われたものを実装するだけ」の役割は、今後ますます厳しくなっていくと感じています。
Claude Code をはじめとしたエージェント型コーディングツール、Figma や Playwright の MCP、V0 や Bolt.new など、AIの進化をフロントの開発プロセスに組み込むことで、開発自体は確実に効率化しています。
一方で、開発者としてのアイデンティティが揺らぐ場面も増え、「この時代にフロントエンジニアとしてどう価値を発揮するのか」は、これまで以上に問われていると感じています。
フロントの技術を、組織や事業のミッションと結びつけ、ユーザー体験の向上や売上への貢献までつなげてこそ、エンジニアとしての価値を示せる
そう考えたときの一つのアプローチが、「UI/UXを武器にする」ことでした。
いろいろ考えた結果、より体系的で実践的なスキルを身につけるため、最終的にデザイン専門学校へ通うことを決めました。
🏫 通った学校とカリキュラム
私が通ったのは、渋谷にある 東京デザインプレックス研究所 の UX/UI 専攻コースです。
半年間のクラスで、毎週土曜の朝〜夕方まで行われる完全オフライン授業でした。
私の通った学校・コースの特徴は以下の通りです。
- 経産省「第四次産業革命スキル習得講座(ITSSレベル4相当)」認定
- 厚生労働省の専門実践教育訓練給付の対象
- クラスは18名ほどで、コンサル・ビジネス職・Web未経験・エンジニア・デザイナーなど社会人が中心
- 講師は現役デザイナーで、理論だけでなく実務に基づく知見も豊富
Webやエンジニアリングの知見を持つメンバーは多くありませんでしたが、受講している人たちの学習に対する熱量はとても高く、かなり刺激を受けました。
📚 なにを学んだか
授業は、インプットとアウトプットのセクションがあり、「講義 → 実践」という流れで進んでいきました。
インプット(基礎・理論)
講義パートでは UI/UX に関する理論を体系的に学びました。
主に学んだ内容
- UIデザイン概論
- デザイントレンド
- HCD(人間中心設計)
- OOUI(オブジェクト指向UI)
- UXリサーチ
- デザインシステム
- UXライティング
- ペルソナ作成
- カスタマージャーニー
- Figma基礎
- HIG(Human Interface Guidelines)
- ブランディング
- アクセシビリティ
特に、企画や要件定義などの上流工程の考え方と、UI の理論的な背景を体系的に学べたことが大きな収穫でした。
アウトプット(実践)
インプットと並行して、4〜5名でチームを組み iOS アプリ制作に取り組みました。
- テーマ設定
- コンセプト企画
- ペルソナ作成
- デザインシステム構築
- Figmaで画面設計 & プロトタイプ作成
- ユーザーテスト
- 発表
普段はフロントとして「Figma を受け取る側」なので、Figma に至るまでのプロセスを一通り体験できたのは、非常に価値のある経験でした。
成果物
実際の成果物として、自炊をサポートするための「めしスタ」というアプリを作成しました。
以下は発表資料の一部です。
😇 大変だったこと
個人的に大変だったポイントは3つです。
-
iOS の UI 慣習とオリジナリティの両立
HIG や既存のメガアプリでユーザーが慣れた振る舞いを守りつつ、競合との差別化のために独自性も出す必要があり、そのバランスを取るのが難しかったです。 -
エンジニア思考が入り込む
どうしても- この UI にするならデータ構造は…
- この遷移を作るなら実装コストは…
と考えてしまい、純粋なデザイン思考に制限をかけてしまう場面がありました。
-
時間が足りない
平日業務後に- 授業で終わらなかった課題
- チームミーティング
- 発表資料作り
を進める必要があり、正直かなりハードでした。(我ながらよく頑張った…!)
💻 業務にどう繋がっているか
学校に通ったことで、ディレクターやデザイナーの方が、限られた工数や制約の中で最適な情報設計や UI を考える難しさを実感し、これまで以上にメンバーへの感謝とリスペクトの気持ちが強くなりました。
同時に、フロントエンドとしてどのように連携し、価値を発揮していくべきかという視点の解像度も、以前よりクリアになりました。
実際の業務では、Pdm やデザイナーの方と一緒に以下の取り組みを進めています。
- デザインシステム構築の推進
- Figma × AI のワークフロー開発
- GA4 × AI の分析基盤づくり
- 園の先生やフォトグラファーのペルソナ制作
「なんとなくの改善」ではなく、ユーザーに刺さる施策をファクトベースで実装し、顧客満足度を定量的に測定して向上につなげる体制づくりを目指しています。
事業部の目標達成を目指すのはもちろんのこと、未来に向けた基盤づくりも地道に進めていきたいと考えています。
まとめ
フロントエンドにとって UI/UX の理解は、今後のキャリアの中で価値を発揮し続けるための、一つの武器になると感じています。
- Figma のさらに上流にある「考え方」がわかる
- デザイナー・ディレクターと圧倒的に連携しやすくなる
- UX の根拠を持った提案ができる
- AI 時代の価値提供にも直結する
今回のように専門学校に通う選択肢は、時間も費用もかかります。
それでも、私にとっては「長期的に効く投資」になったと実感しています。
とはいえ、UI/UX もフロントエンドも、学びに終わりはありません。
今回の経験はあくまでスタート地点で、まだまだ学び続けないといけないことばかりだと感じています。
もし社内で同じような関心を持つ人が多ければ、カジュアルな勉強会をやるのも良きですね!




