はじめに
go.opencensus.io/traceは、分散トレーシングのためのGo言語向けのオープンソースライブラリOpenCensusのトレースパッケージの一部です。トレースは、分散システム内で複数のサービスが相互作用する際に、特定のトランザクションやリクエストがどのように処理されているかを理解するために使用されます。
OpenCensusトレースは、アプリケーションのインストゥルメンテーション(計測コードの追加)に依存して、分散システム内の各リクエストに対して一意のトレースIDを作成し、そのトレースを構成するすべての要素(リクエスト、サブリクエスト、レスポンスなど)を関連付けます。トレースのデータは、分散トレーシングシステムによって集約され、可視性の高い視覚化やトラブルシューティングを支援するために使用されます。
コード説明
下記はOpenCensusトレースを使用してHTTPリクエストをトレースするGo言語のサンプルコードです。
このコードは、クライアントがWebサイトにリクエストを送信するときに、リクエストの処理時間とエラーをトレースします。
package main
import (
"fmt"
"net/http"
"go.opencensus.io/plugin/ochttp"
"go.opencensus.io/trace"
)
func main() {
// OpenCensusトレースを有効にする
trace.ApplyConfig(trace.Config{DefaultSampler: trace.AlwaysSample()})
// HTTPクライアントを設定
client := &http.Client{
Transport: &ochttp.Transport{},
}
// HTTPリクエストを作成
req, _ := http.NewRequest("GET", "https://example.com", nil)
// リクエストを送信し、レスポンスを受信
resp, err := client.Do(req)
if err != nil {
fmt.Printf("Error: %v", err)
return
}
// レスポンスを処理する
fmt.Printf("Response status: %v", resp.Status)
}
このコードでは、go.opencensus.io/plugin/ochttpパッケージを使用して、HTTPリクエストをトレースするために必要なHTTPトランスポートを設定しています。トレースを開始するには、trace.ApplyConfig関数を使用して、トレースのサンプリングを有効にする必要があります。この例では、trace.AlwaysSample()を使用して、すべてのリクエストがトレースされるように設定されています。
HTTPリクエストを作成し、client.Do()メソッドを使用して送信し、レスポンスを受信して処理します。このプロセスで、ochttp.Transportは、HTTPリクエストとレスポンスをトレースするために必要なデータを収集します。
trace.AlwaysSample()とは?
trace.AlwaysSample()は、OpenCensusトレースのサンプラーの一種であり、常にすべてのトレースをサンプリングするために使用されます。トレースサンプラーは、トレースを生成するために収集するデータの量を制御するために使用されます。サンプリングを有効にすることで、トレースのすべての側面を観察できますが、データ収集のオーバーヘッドが高くなる可能性があります。一方、サンプリングを無効にすると、トレースを生成するのに必要なデータが欠落する可能性がありますが、データ収集のオーバーヘッドを最小限に抑えることができます。
trace.AlwaysSample()は、開発やデバッグ中のシステムトラブルシューティングなど、トレースのすべての側面を常に観察する必要がある場合に特に便利です。ただし、本番環境で使用する場合は、より効率的なサンプリングストラテジーを使用することを検討する必要があります。
go.opencensus.io/plugin/ochttpとは?
go.opencensus.io/plugin/ochttpは、OpenCensus Goライブラリの一部であり、HTTPクライアントとサーバーをトレースするためのパッケージです。ochttpは、HTTPリクエストとレスポンスを処理するために必要なデータを収集し、トレースに関連付けます。具体的には、以下のような機能が含まれます。
-
HTTPクライアントのトレースをサポートするTransport型 -
HTTPサーバーのトレースをサポートするHandler型 -
HTTPリクエストとレスポンスのステータスコードやエラーメッセージなどの詳細をトレースするための拡張機能 -
ochttpは、HTTPトラフィックをトレースするための簡単な方法を提供するため、分散システムのデバッグやトラブルシューティングに役立ちます。また、HTTPリクエストとレスポンスをトレースするために、OpenCensusのトレースAPIを直接使用することができますが、ochttpを使用することで、HTTPの特定の機能に関連する詳細をより簡単に収集できます。