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企画・プロジェクトをやっていると必ず実施するのが課題分析。

でも現場で、課題分析をきれいにやれている例は意外と少ないものです。そして、こういった悩みもよく聞きます。

  • 現場の困りごとを集めることに終始してしまう
  • 結局のところ「本質的な課題」がわからない
  • 整理・分類に時間がかかりすぎて、次のアクションに進めない

これらの原因はシンプルで、「課題」の定義が曖昧なまま、議論が始まるからです。「課題とは何か?」に納得感のある回答を出せる人は、ほとんどいません。だから、実態のつかめない課題の特定と整理に時間がかかってしまうのは当然のこと。

なので、この記事では再現性のある課題の見つけ方を解説していきます。

この記事でわかること

  • 課題の定義がわかる
  • 課題の構造がわかる
  • 再現性のある課題の見つけ方がわかる

課題の定義と構造

まず、「課題とは何か?」から解説します。

課題の定義
課題とは、理想の実現を妨げている“困りごと”のこと

多くの現場では「困っている声」や「要望」がそのまま課題として扱われますが、それは単なる困りごとです。それが課題かどうかは、「理想の実現を妨げているかどうか?」で判断します。

すなわち、課題を見極めるには必ず「理想」が必要になります。これが、課題を見つけるために最も重要なことです。

では、次に課題の構造を見てみましょう。

image.png

このように、課題は単体で存在しているのではなく、理想と現状の違いから導き出されるものです。現場から集めた困りごとのうち、この「違いの原因」になっている困りごとこそが、本質的な課題です。

では、この課題を見つけるにはどのような手順を踏めばよいのか?を次に解説していきます。

課題の見つけ方

ここからは、4つのSTEPに分けて課題の見つけ方を解説します。

「営業の提案活動を効率化したい」というテーマを使って、課題の見つけ方を解説していきます。

STEP 1:現状を可視化する

よくある企画の進め方だと、いきなり現場に課題をヒアリングすることからスタートします。でも、本質的な課題を見つけるには、一度立ち止まって現状の可視化からスタートします。

image.png

「営業の提案活動を効率化したい」という場合だと、まずは営業がどのような提案活動を行っているのか?という「事実」を確認します。(この段階では、いま現場が困っていることは、特に拾いません)

では、現状をどういった観点で可視化すればいいかというと、今回は次のような観点で見ていきます。

  • 業務プロセス
  • 指標(KPI・成果)

まず、提案活動はどのようなプロセスで行われているのか?を可視化します。多くは業務フローをベースに確認します。(なければ、作ります)あわせて、そこで使っているツールやシステム、関係者なども洗い出しておきます。

また、結果指標については、提案数や受注率など、提案に関わる指標を確認します。

こうして、現状の「営業の提案活動」は事実としてどうなっているのか?を可視化します。

まとめ方のイメージとしては、以下のような感じです。

image.png

STEP 2:理想を可視化する

次に、理想の状態を可視化します。ここが課題の見つけ方における最重要ポイントです。

この理想がないままに課題を整理しようとすると、困りごとの寄せ集めのようになってしまい、「本質的な課題とは何か?」にいつまでも答えられません。

理想のない課題発見は存在しません。では、どのように理想を可視化すればいいかを解説します。

image.png

先の「営業の提案活動を効率化したい」でいうと、効率化された状態を理想として可視化します。STEP1で現状を可視化しているので、それぞれに対して理想の状態を追記すればOKです。

理想を考えるうえで、ポイントになるのは「何をもって理想とするか?」ということです。

人それぞれ理想像は異なります。プロセスが整うことを理想と感じる人もいるし、それよりも結果を重視する人もいます。

なので、理想状態を関係者で揃えることができれば、共通の理想を追うことができます。そのためのINPUTとなるのがプロジェクトの目的です。ここで掲げている目的が理想状態なので、これをベースに話を進めれば軸がぶれません。

image.png

目的の定義の仕方はこちらの記事で解説しています。

目的をベースに理想を考えることができたら、最後に可視化していきます。イメージはこのような感じです。

image.png

STEP 3:現状と理想の「違い」を可視化する

当たり前ですが、現状と理想の間には必ず違いがあります。(違いがなければ同じですから)

ここでは、どのような違いがあるのか?を可視化していきます。

image.png

違いを見つけるには、シンプルですが次のような問いを立てると考えやすいです。

「現状と理想でどのような違いがあるか?」

例えば、先の例の「顧客情報の収集」の観点で解説してみます。現状は「顧客データが複数システムに分散し、検索に30分以上」かかっています。でも理想的には「必要情報が1つの場所に集約され、5分で検索が終わる」と考えています。

では「現状と理想でどのような違いがあるか?」と問うと…

  • 現状は顧客データが複数に分散しているが、理想では1つに集約されている
  • 検索時間が現状は30分だが、理想は5分である

という違いが考えられます。

このように、何が違っているのか?を事実ベースで確認していきます。

ここでは「なぜ違うのか(Why)」ではなく、「何が違うのか(What)」にフォーカスを当てるのがポイントです。なぜこの違いを生んでいるのか?何が原因なのか?は次のSTEPで検討することだからです。

このSTEPでは、そのための材料を整理することがゴールです。OUTPUTは次のようにまとめるとよいでしょう。

image.png

STEP 4:違いの“原因=課題”を特定する

いよいよ課題の特定を行っていきます。

ここでは、先のSTEPで可視化した「違い」の原因を考えます。現状と理想の違いを生んでいる原因は何か?を見つけることこそが、課題の特定です。

image.png

では、なぜこの「違いの原因」を特定することが課題の特定と同義になるのでしょうか?
まずは改めて課題の定義を確認してみましょう。

課題とは、理想の実現を妨げている“困りごと”のこと

先のSTEPで見つけた現状と理想の違いは、すなわち理想の実現を妨げている「違い」といえます。その「違い」を生んでいる原因は、当然ですが“困りごと”といえます。その“困りごと”が「違い」を生んでいて、その「違い」があるから理想が実現できていないわけです。

ということで、この「違い」の原因を探っていくことが、単なる困りごとではなく、本質的に解決すべき困りごと=課題になるわけです。

では、どのように原因を特定すればいいか?を解説します。といっても、やり方はシンプルで次の問いに答えていくだけでOKです。

この「違い」を生んでいる原因は何か?

先の例でいくと「現状は顧客データが複数に分散しているが、理想では1つに集約されている」という違いがありました。では、この違いを生んでいる原因は何か?

考えていくと、次のような原因がありそうです。

  • システムとデータが分かれてしまっている(状態)
  • 統合のための施策が検討されていない(アクション)

今回は、状態とアクションという観点から原因を検討しています。違いを生んでいる原因は何か?という問い自体はシンプルなものですが、どういった観点で原因を見ていくかはプロジェクトごとに考えていく必要があります。

最後に、まとめるとこんな感じです。
image.png

まとめ

課題を掘り下げるには「なぜなぜ分析」をしましょう、などとよく言われます。が、実践されてるところはほぼ見たことがないですよね。

そうするよりも、こういった課題の構造を理解し、段階的に課題を探り当てていくことで、確実に・再現性高く課題を発見することができます。

image.png

ちなみに、本質的な課題を「イシュー」と呼んだりもしますよね。イシュー度が高いものを選んで対応するのが良いと、名著『イシューからはじめよ』でも言われています。何を解決するかを見誤ると時間の無駄(=犬の道)になってしまいます。

だからこそ、「そもそも課題とは何か」といった定義、課題の構造を理解したうえで、再現性のあるSTEPで課題を見つけていくことが重要なのです。

おまけ:よくあるNGパターンとその対処法

現場で起こる課題分析のよくあるNGパターンと、その対応策を解説します。

❌ NG1:課題分析に時間がかかる
課題の精査・優先度付けに時間がかかり、肝心の要件定義になかなか進めないケースが多くあります。

✔ 対処
手順に従って課題を見つけることで、多くの時間をカットし、イシューを抽出できます。

❌ NG2:現場の不満を全部“課題”と扱う
「〇〇が工数だ」とか、「ツールが使いにくい」といった不満をすべて課題として扱っているケースです。それらは、ただの困りごとです。課題とは言い切れません。

✔ 対処
理想を考え、「違い → 原因の特定」の順で整理する。

❌ NG3:理想が曖昧なまま議論を始める
足元の困りごとばかりにフォーカスし、理想がないまま困りごとの解決策だけを議論しているケースです。現状分析は簡単ですが、理想の検討は難しい。そもそも、理想がないケースも多いです。だからこそ、理想を可視化するのが最重要なわけです。

✔ 対処
プロジェクトの目的を確認する。それが曖昧であれば、目的の定義からやり直す。

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