プロジェクトの企画書に「背景・目的・目標を書いてください」と言われるものの、意外とうまく書けないという悩みをよく聞きます。
- なんとなく毎回適当に書いてしまう
- 途中で“そもそも論”が出て企画が迷走する
- 目的が手段になっていて、軸がブレている
- 言葉は埋まるけど、論理が通っていない
「大事なのは中身でしょ!」と、ここを適当に済ませてしまいがち。でも、背景・目的・目標はプロジェクトの土台となる、プロジェクトで最重要と言ってもいい代物です。ここが「しっかり」することで、プロジェクト自体も安定します。
この記事では、どうすれば「しっかり」した背景・目的・目標を作れるのか?を、「しっかり」というあいまいな言葉ではなく、論理と手順にもとづいた再現性のある方法で解説していきます!
この記事でわかること
- 背景・目的・目標の構造と関連性
- 再現性のある背景・目的・目標の作り方
- よくあるNGパターン
なぜ、背景・目的・目標を書くのか?
プロジェクト計画書や企画書の冒頭に置かれているのが、背景・目的・目標のページです。では、なぜわざわざ冒頭にこれを書く必要があるのでしょうか?
結論から言うと、これらがプロジェクトの土台になるからです。
通常、プロジェクトの序盤、課題や対応方針など企画の中身がまだ固まっていない段階で、この背景・目的・目標を書きます。そして、この背景・目的・目標を土台に、プロジェクトの中身を作っていきます。
だからこそ、土台となる背景・目的・目標が適当だと、プロジェクトの中身を作るときに困ってしまうわけです。
- 「そもそも、なぜこのプロジェクトをやるのか?」
- 「どこを目指してるんでしたっけ?」
といった、根本を揺るがす問いが後から何度も出てきてしまいます。
一方で、具体的かつ論理的に背景・目的・目標が書かれていれば、プロジェクトの中身もそれに従って安定していきます。いつでもそこに立ち返れば、プロジェクトの根本がわかるからです。
背景・目的・目標は、プロジェクトの要約とも言えます。
- 背景=なぜやるのか(原因)
- 目的=何を実現したいのか(結果)
- 目標=どう測るか(指標)
本来、この3つを見るだけで、プロジェクトの要点が一瞬で伝わります。言い換えると、この3つだけでプロジェクトの全体像を伝えることすらできるのです。
(特にレビューをする立場の人は共感いただけると思います)
ということで、ここからは背景・目的・目標の「構造と関係性」をお伝えしたうえで、どのように設定していけばよいのかという手順を解説していきます。
背景・目的・目標の構造と関係性
まず最初に、背景・目的・目標の構造と関係性を解説します。この3つはそれぞれ独立しているわけではなく、因果関係をもって関係しあっています。
すなわち、3つセットで初めてプロジェクトの全体像が伝えられるという構造になっています。
背景・目的・目標の役割は次の通りです。
背景・目的・目標の役割
- 背景(原因): 前提・課題を要約したもの
- 目的(結果): 課題が解決されて到達したい状態を要約したもの
- 目標(指標): 目的を測るためのKGI/KPIを要約したもの
そして、この3つは次のように因果関係をもって関係しあっています。

- 背景(原因)があるから
- 目的(結果)を目指し
- その達成度を目標(指標)で測る
「うーん、よくわからん」という感じだと思うので、具体例をもって説明します。
NGパターン:論理構造がない
まずは、具体例としてNGな背景・目的・目標を見てみましょう!次のような背景・目的・目標はNGです。
NGパターン
- 背景:現行システムが古くなってきたので、新しいシステムにしたい
- 目的:最新のシステムを導入して業務効率化を図る
- 目標:システムの運用コストを昨対比30%削減
まずは、背景と目的の関係から見ていきます。背景と目的は、原因と結果の関係性です。つまり、
背景に書かれた課題があるので、目的に書かれた状態を目指します!
という論理展開ができるか?がポイントになります。この場合だと…
現行システムが古くなってきて、新しいシステムにしたい(背景)ので、
最新のシステムを導入して業務効率化を図る(目的)ことをプロジェクトで目指します!
となります。
まず、背景と目的に原因と結果の関係があるか?を見てみましょう。背景では「システムが古くなってきた」という課題を伝えていますが、目的では「システム刷新をして業務効率化を目指す」と言っています。
ここに因果関係はありません。「業務効率化」は、刷新したいがための“それっぽい理由付け”になっている印象です(あるあるですね)
次に、目的と目標の関係性も見てみます。ここは、
目標が達成されたら、目的も達成される
という関係性ができているか?がポイントです。この場合だと…
システムの運用コストを昨対比30%削減(目標)できたら、
業務効率化(目的)も達成できたといえる。
となります。
運用コスト削減は業務効率化の一部かもしれませんが、これだけで「業務効率化」が達成されたとは言えないですよね。
このように、背景・目的・目標はそれぞれのつながりがあるかどうか?が非常に重要です。この場合だと、目標が達成されても目的が達成されないということになってしまうのでNGです。
OKパターン:論理構造がある
では、次に先ほどの例をアップデートして、論理構造を作ってみましょう。
OKパターン
- 背景:現行システムが古くなり、運用コストが増加し続けている
- 目的:最新のシステムを導入して運用コストを削減する
- 目標:システムの運用コストを昨対比30%削減
まずは、背景と目的の関係性から見ていきます。ここは、原因と結果の関係が成立しているかがポイントでした。今回だと…
現行システムが古くなり、運用コストが増加し続けている(背景)ので、
最新のシステムを導入して運用コストを削減する(目的)ことをプロジェクトで目指します!
となります。
背景に書かれた課題(運用コストの増加)を解決するために、目的に書かれたこと(運用コスト削減)を目指す、という論理が成り立っていますね。
次に、目的と目標の関係も見てみます。今回だと…
システムの運用コストを昨対比30%削減(目標)したら、
運用コストの削減(目的)も達成できたといえる。
となります。ここにもつながりがあり、目標を達成すれば、それに連動して目的も達成されるという構造になっています。
このように、背景・目的・目標の間に論理的なつながりを持たせることで、プロジェクトの全体像を端的に示すことができます。
ここからは、背景・目的・目標それぞれの具体的な設定の仕方を解説していきます。
STEP 1:背景の作り方
背景とは、ひと言でいうと 「プロジェクトをやる理由」 です。
なぜこのプロジェクトをやらないといけないのか?
という問いに対する答えが書かれていることが重要です。そのため、背景には次のようなことを記載します。
背景に書くこと
- 前提事項の要約
- 課題の要約
プロジェクトが発足するには、何らかの困りごとがあるはずです。それを要約して書くイメージです。例えば、
- 会社として大幅なコストカットを計画したという前提事項
- 営業の生産性が伸び悩んでいるという課題
など、そういったことを要約して書きます。
手段が先行しがちなツール・システム導入系のプロジェクトの場合、ここの背景が具体的に書けているかが重要なポイントです。「なぜやるのか?」が明確に答えられないプロジェクトは、多くが失敗してしまいます。
背景は次の手順で考えていきます。
① 現状を整理する
最終的には「課題の要約」をまとめ上げるのですが、その課題が発生している現状について整理します。ポイントは、「事実」をそのまま記載することです。
課題はその人の主観や解釈が入りますが、現状はそれらを排除して「事実」をそのまま書くことが重要です。先の例で言うと、
現行システムが古くなり、運用コストが増加し続けている
というのは事実をもとにした表現です。これを、
現行システムが非常に使いにくくなっており…
のように、人の解釈を交えるのはNGです。使いやすさ・使いにくさは人それぞれだからです。
② 現状から課題を抽出する
現状を見たときに、事業に悪影響を与えている「課題」を抽出します。
先の例で言うと、「運用コストが増加し続けている」ことを課題視しています。現行システムが古くなったという事実から引き起こされる困りごとは、他にもいろいろ考えられます。
- 開発に時間がかかる
- 動作が重くなる
- 障害が増える
などなど。
その中でも、事業に悪影響を与えている課題は何か? を考え、抽出します。
では、どうやってそれを見極めるか?というと、
事業の目指す理想に対して、阻害要因になっているかどうか
がポイントです。
例えば、事業が「利益率を伸ばすこと」を志向しているなら、運用コストの増加は利益率向上の阻害要因になります。そのため、これは課題とみなせます。
もし、事業が「ITによる事業効率化」を志向しているなら、運用コストではなく「開発に時間がかかること」が課題となるかもしれません。
このように、課題とは事業が目指す方向性によって変化するものです。
課題の見つけ方はこちらの記事も参考に!
STEP 2:目的の作り方
目的とは、背景にある課題が解決された結果として実現したい「望ましい状態」のことです。
すなわち、目的は、
❌ 手段(〜を導入する、〜を構築する)
❌ スローガン(業務効率化を図る)
ではなく、
✔ どんな状態になっていれば成功といえるか?
を表現したものです。
目的を定めるときに重要なポイントは次の3つです。
目的設定のポイント
- 目的は「状態」で書く
- 背景と因果関係がある
- 目的に「手段」を書かない
このポイントを押さえつつ、次の順番で考えていきます。
① 背景から“理想的な状態”を考える
背景には「課題の要約」が書いてあります。
なので、それが解決された理想的な状態を考えます。先の例でいえば、背景は
現行システムが古くなり、運用コストが増加し続けている
でした。なので、それが解決された理想的な状態とは?を考えます。
といっても、そんなに難しく考えることはなく、背景の裏返しが目的になることがほとんどです。この場合も同様で、「コストが増加している」のが課題なので、「コストが削減されている」ことが理想状態です。
② 手段になっていないかチェックする
目的にありがちなのが「手段が目的化している」パターンです。
例えば、次のようなものがあります。
- システムを刷新すること
- SFAを導入すること
- AIの利活用を促進すること
これらはすべて手段です。本来は、この手段の先にある「結果」が目的として設定されるべきなのですが…。なので、改めて手段が目的化していないかをチェックすることが大事です。
先の例で言うと、背景は
現行システムが古くなり、運用コストが増加し続けている
でした。
これに対して、目的が「現行システムの刷新」となっていたらNGです。手段が目的化しています。そうではなく、刷新の先にあるコスト削減を目的に据えることが重要です。
(ただし、セキュリティ対応や経営判断などで、手段が目的化することもあります。例えば、緊急対応として「セキュリティソフトを刷新すること」自体を目的にしてしまう場合など。なので、そこはケースバイケースで判断が必要です)
STEP 3:目標の作り方
目標とは、目的が達成されたかどうかを判定するための測定指標のことです。
目標を立てるにあたって、重要なポイントは次の3つです。
目標設定のポイント
- 目標が達成されれば、目的も達成されること(=因果関係がある)
- 測定可能な指標であること
- プロジェクトの努力で達成可能であること
このポイントを押さえつつ、次の順番で考えていきます。
① 何が達成されれば、目的が達成されるか考える
まず、目的と目標の因果関係を作ることが最も重要です。目標を立てて、それを達成したのに、「目的は達成されなかった」となってしまっては元も子もないからです。なので、
目的を達成するには、どのような指標を置けばよいか?
を考えてみます。先の例で言うと、目的は
最新のシステムを導入して運用コストを削減する
でした。
ここから、「どうすれば運用コストが削減できたといえるか?」を考えます。この場合は既に「運用コスト」という指標が入っているので、それをどれだけ削減できるかという定量値で表現すればOKです。
② 測定可能かチェックする
目標にした数値を本当に測定できるかは、非常に重要なポイントです。目標として置いても、その後計測ができなかったら、達成可否の判断ができません。例えば、
- 売上高
- PV
など、デジタルに自動取得できるものは目標として好ましい指標です。一方、
- 社内工数
- アンケート結果
など取得難易度が高いものは、目標としては少し扱いづらい指標です(もちろん、どうしても必要な場合は設定してもよいですが、その場合は計測方法まで含めて設計が必要になります)。
③ プロジェクトの努力で達成可能かチェックする
目標は達成したものの、「それがプロジェクトの成果かどうか判断が難しい」というケースがあります。
例えば、営業の提案支援ツールを導入するプロジェクトで、目標を「売上高の増加」と設定しているようなケースです。結果として売上高が増加したとしても、本当にツールの影響なのかを判断しにくいのです。市況感やその他の外部要因で上がっている可能性も捨てきれません。
なので、こういったケースの場合は、もっとプロジェクトに近い指標を目標に置くのが正解です。例えば、「ツールの利用率」などです。売上高などは参考指標として取得するほうが、プロジェクトの成果を正しく評価できます。
まとめ
適当に書かれがちな背景・目的・目標ですが、実は非常に重要なプロジェクトの土台であることが分かったと思います。
プロジェクトの序盤で作成するものだからこそ、その後の工程に大きな影響を与えます。プロジェクトの作業は基本的に、前工程の成果物を受けて後工程が進みます。
そういう意味では、この背景・目的・目標はすべての作業の起点です。これがうまく書けるかどうかで、プロジェクト全体の品質に影響が出るのも、納得いただけるのではないでしょうか。
最後に、この背景・目的・目標が後工程にどうつながっていくのか?をまとめます。
このように、背景・目的・目標を詳細化・具体化していくことで後工程につながっていきます。だからこそ、背景・目的・目標は超重要なんです!
おまけ:よくあるNG例(アンチパターン)
見かけたら注意しましょう・・・!
❌ ① 手段が目的化している
・背景:システムが古くなってきたので、新しい技術を使って刷新したい。
・目的:最新技術を導入すること。
・目標:新システムをリリースする。
✋ イケてないポイント
- 背景が主観・希望のみで、課題や影響が書かれていない
- 目的が完全に手段化(技術導入=目的)してしまっている
- 目標が達成されても、「何が解決されたか」が分からない
- 背景 → 目的 → 目標の 論理構造がない
❌ ② 主観が強くふわっとしている
・背景:業務が非効率なので改善したい。
・目的:業務効率化を実現する。
・目標:生産性を向上させる。
✋ イケてないポイント
- 背景の課題が主観のみで、事実・影響がない
- 「効率化したい」という 願望だけで具体性がない
- 目的=スローガン で、状態が定義されていない
- 目標が 何を測るか分からず行動につながらない
❌ ③ 背景と目的がズレている
・背景:顧客データが分散しており分析しづらい。
・目的:マーケティング施策を自動化する。
・目標:メール配信数を増やす。
✋ イケてないポイント
- 背景の課題と目的がズレている → 論理破綻
- 目標を達成しても、背景の「分析しづらい」という課題は解決されない
❌ ④ 目標がプロジェクトと無関係
・背景:承認フローが紙で運用されており、処理に時間がかかっている。
・目的:効率よく承認できるようにする。
・目標:年間売上を2倍にする。
✋ イケてないポイント
- 目標が プロジェクトでコントロール不可能(売上2倍)
- 目的と目標に因果関係がない
❌ ⑤ べき論・必要性が強すぎる
・背景:業務効率化が必要で、デジタル化すべきだと考えている。
・目的:デジタル化を推進する。
・目標:社内でDXの意識を高める。
✋ イケてないポイント
- 事実や課題ではなく、思想(こうあるべき論)を書いている
- 目的が手段になっている
- 目標が測定不可能
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