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【オンプレ→AWS移行】インフラ構築者が押さえるべきAWSストレージ完全ガイド

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Last updated at Posted at 2026-03-11

はじめに

オンプレミスのRHELサーバ運用経験を持つエンジニアがAWSへ移行する際、最初につまずきやすい領域のひとつがストレージである。

fdisk によるパーティション設計、mount によるマウント管理、NFS構築といったオンプレの知識はAWSにおいても対応する概念が存在する。しかし、「どのAWSサービスが既存の概念に対応するのか」を整理しないまま作業を進めると、設計ミスやコスト過多に陥りやすい。

本記事では、以下の2軸でAWSストレージを整理する。

  1. 各サービス(EBS / EFS / S3 / FSx / Instance Store)の特性と選択基準
  2. オンプレの概念とAWSサービスの1対1マッピング

1. まず「ストレージの分類」を頭に入れる

AWSのストレージサービスは大きく3種類のインターフェースで分類できる。まずはオンプレとの対応関係を俯瞰する。

オンプレの概念 AWSサービス I/F 主な用途
ローカルディスク (SAN/iSCSI) EBS Block OS・DB・アプリ
NFSサーバ (共有ストレージ) EFS / FSx File 共有ファイル
オブジェクトストレージ S3 HTTP API 静的資産・バックアップ
インスタンス直付けSSD Instance Store Block 一時キャッシュ

RHELで /dev/xvda にマウントしていたのが EBS/mnt/share でNFSマウントしていたのが EFS という対応関係で整理できる。


2. EBS (Elastic Block Store) — サーバの「ディスク」

基本特性

EBSはEC2インスタンスにアタッチするブロックストレージだ。最も重要な制約は以下の2点である。

オンプレと同様、mkfsmount/etc/fstab の設定はEC2上でそのまま使用できる。OS側の作業は変わらない。AWSが提供するのは「マネージドなブロックデバイス」である。

ボリュームタイプの選択

タイプ 用途 最大IOPS 備考
gp3 汎用(推奨) 16,000 IOPS・スループットを独立設定可。コスト効率◎
gp2 汎用(旧世代) 16,000 容量に比例してIOPSが変動 ← 設計の落とし穴
io2 Block Express 高性能DB 256,000 Oracle/SQL Server等のミッションクリティカルDB向け
st1 スループット重視 - ログ収集・Hadoopなどシーケンシャルアクセス向け
sc1 コールドデータ - アクセス頻度が低いアーカイブ向け

設計基準: 新規構築では gp3 を選択する。gp2 は容量に比例してIOPSが増加する仕様のため、必要以上のコストが発生しやすい点に注意が必要だ。

スナップショット

EBSスナップショットはRHELでのddバックアップやLVMスナップショットに相当するが、I/Oへの影響なしに取得できる点がクラウドの強みだ。

RAIDを自前で組む必要はない

オンプレではRAID5/6でディスク障害を吸収していたが、AWSでは不要だ。

これはクラウドネイティブ設計における最大のパラダイムシフトのひとつである。


3. EFS (Elastic File System) — 共有ファイルシステム

オンプレとの対比

マウント方法もNFSv4.1に準拠しており、mount -t nfs4 コマンドがそのまま使える。

EBSとの決定的な違い

EBS EFS
同時アクセス 原則1台 数千台まで
AZ跨ぎ 不可(同一AZのみ) 可(リージョン全体)
容量管理 固定(要拡張作業) 自動スケール
単体コスト GB単価が安い GB単価が高い

選択基準: 複数のEC2から同じファイルを読み書きする要件(Webサーバのコンテンツ共有、バッチ処理の共有ワークスペース等)があればEFSを選ぶ。それ以外はEBSが基本だ。

パフォーマンス・スループットモード

設定 選択肢 推奨
パフォーマンスモード General Purpose / Max I/O General Purpose(レイテンシ優先)
スループットモード Elastic / Provisioned Elastic(自動スケールでコスト効率◎)

4. S3 (Simple Storage Service) — AWSの中核

「ファイルシステムではない」という認識の転換

S3を扱う上で最も重要な概念の転換がこれだ。

これを理解していないと、大量小ファイル処理やパーティション設計で問題が生じる。

ストレージクラスの選択(コスト最適化の核心)

S3はデータのアクセス頻度に応じてストレージクラスを選択することで、コストを大幅に最適化できる。

クラス 用途 取り出しコスト 特徴
S3 Standard 頻繁アクセス 無料 デフォルト
S3 Standard-IA 月1回程度 有料 保管コスト↓・取り出しコスト↑
S3 Glacier Instant Retrieval 四半期に1回 有料・即時取り出し アーカイブだが即時参照が必要な場合
S3 Glacier Flexible Retrieval 年1回・DR 有料・数分〜数時間 コスト重視のアーカイブ
S3 Glacier Deep Archive 7年保管等 有料・最大12時間 最安。コンプライアンス保管向け

オンプレでテープ媒体にアーカイブしていた運用が Glacier に相当する。ライフサイクルポリシーで自動移行を設定するのが実践的な設計だ(例: 90日後にIA、1年後にGlacier)。

セキュリティ設計(必須知識)

S3の情報漏洩事故のほとんどは設定ミスが原因だ。以下を徹底することが基本となる。

1. Block Public Access : 全プロジェクトでデフォルトON(オフにする場合は意図を文書化)
2. バケットポリシー     : リソースベースのアクセス制御
3. IAMポリシー         : アイデンティティベースの制御
4. ACL                : 旧世代につき原則使用しない
5. 暗号化(SSE-KMS)  : 保存データの暗号化をデフォルト化

オブジェクトロック(WORM)

一度書いたら変更・削除不可にできる機能。金融・医療等のコンプライアンス要件に対応する。

  • Governance mode: 特定権限を持つユーザは解除可能
  • Compliance mode: 誰も解除できない(保持期間の短縮・削除不可)

5. FSx — 特定ユースケース向けマネージドファイルシステム

EFSはLinuxのNFSに特化しているが、FSxはより多様なプロトコルに対応したマネージドファイルシステム群だ。

サービス 対応プロトコル 主な用途
FSx for Windows File Server SMB Active Directory連携、Windowsアプリ
FSx for Lustre Lustre HPC、機械学習、大規模並列処理
FSx for NetApp ONTAP NFS / SMB / iSCSI オンプレNetAppからの移行
FSx for OpenZFS NFS ZFSからの移行

RHEL環境からの移行では、FSx for NetApp ONTAP が既存のNFSマウント構成をほぼそのまま移行できる選択肢として有力だ。マルチプロトコル対応でWindowsとLinuxの混在環境にも対応できる。


6. Instance Store — 落とし穴に注意

物理ホストに直付けされたNVMe SSDで、超高速・低レイテンシが特徴だ。しかし致命的な制約がある。

用途は一時ファイル・キャッシュ・バッファに限定する。永続データを絶対に置かないことが鉄則だ。この特性を知らずにデータを保存すると、インスタンス停止時にデータが消える事故につながる。


7. オンプレ概念 × AWSサービス 1対1マッピング

ここからが本記事の核心だ。RHELで「当たり前にやっていたこと」がAWSではどのサービス・機能で実現されるかを整理する。

ストレージ操作

オンプレでやっていたこと AWSでの実現方法 ポイント
fdisk / parted でパーティション作成 EBSボリューム作成・アタッチ サイズ変更はオンラインで可能
mkfs.xfs でフォーマット EC2上で同じコマンドを実行 OS側の作業は変わらない
mount /dev/sdb /data EBSアタッチ後、同じコマンド /etc/fstab も従来通り
LVMでオンライン拡張(lvextend EBSサイズ変更 → growpart + resize2fs 手順は微増するが考え方は同じ
NFSサーバ構築・クライアントマウント EFS(マウントターゲット経由) mount -t nfs4 で同様にマウント
SAN / iSCSI EBS or FSx for ONTAP ほぼ同等の体験
テープバックアップ S3 Glacier Deep Archive コスト・保管期間の考え方が同じ
rsync でバックアップ転送 AWS DataSync ネットワーク最適化・差分転送対応
dd / tar でフルバックアップ EBSスナップショット 増分・整合性保証・I/O影響なし
RAID1(ミラーリング) マルチAZ構成で担保 AWSではRAIDが不要なケースがほとんど
RAID5/6(冗長化) EBS内部で3重冗長済 自前でRAIDを組む必要なし
ファイルサーバ(Windows SMB) FSx for Windows File Server AD連携もそのまま移行可能
df -h でディスク監視 CloudWatch メトリクス アラームで自動通知も可能

OS・サーバ管理

オンプレでやっていたこと AWSでの実現方法 ポイント
物理サーバの電源ON/OFF EC2の起動・停止 APIまたはマネジメントコンソールで操作
サーバのハードウェア増強 インスタンスタイプ変更 停止→タイプ変更→起動
OSインストール + キックスタート AMI(Amazon Machine Image) カスタムAMIで何度でも同一環境を展開
ゴールデンイメージの保管 AMI スナップショットベースで保存・共有
yum update / パッチ管理 AWS Systems Manager Patch Manager 複数台を一括スケジュール管理
cron でバッチ処理 EventBridge + Lambda / SSM サーバレスで実行可能
内部DNSサーバ Route 53 プライベートホストゾーン /etc/hosts の一元管理代替
firewalld / iptables セキュリティグループ + NACL ステートフル vs ステートレスの違いに注意
SSHログイン Systems Manager Session Manager ポート22開放不要・セキュリティ向上
ジャンプサーバ(踏み台) Session Manager or Bastion Host Session Manager推奨
Zabbix等による監視 CloudWatch + CloudWatch Agent メトリクス・ログを一元収集
rsyslog / syslog CloudWatch Logs /var/log のログをリアルタイム転送

セキュリティ・権限管理

オンプレでやっていたこと AWSでの実現方法 ポイント
Linuxユーザ・グループ管理 IAM ユーザ・グループ AWSリソースへのアクセス制御
visudo でsudo権限管理 IAMポリシー 操作単位でAllow/Denyを設定
Active Directory認証 IAM Identity Center(SSO) 組織全体のシングルサインオン
chmod / chown でACL管理 S3バケットポリシー / IAMポリシー リソース単位の細粒度制御
ディスク暗号化(LUKS) EBS暗号化(KMS) キー管理はAWS KMSに委譲
SSL証明書の管理・更新 ACM(AWS Certificate Manager) 自動更新・無料
秘密情報の管理 Secrets Manager / SSM Parameter Store 認証情報のハードコーディングを撲滅
監査ログ AWS CloudTrail 誰がいつ何の操作をしたか全記録

8. ストレージ選択の判断フロー

設計時の判断を整理すると以下のようになる。


9. 移行設計で意識すべき思想の転換

① 「サーバは使い捨て」設計(Immutable Infrastructure)

② 容量を「事前確保」しない

③ ネットワークはソフトウェア定義

④ 移行期間中は Storage Gateway を活用する

オンプレとAWSを同時並行で運用する移行期間中は、AWS Storage Gateway がオンプレのファイルシステムとS3を橋渡しする。既存アプリに変更を加えずにバックアップ先をS3へ切り替える、といった段階的移行が可能だ。


10. 設計・移行で特に重要なポイント

テーマ 押さえるべき内容
gp2 vs gp3 IOPSの計算方式の違い・コスト比較
S3ストレージクラス ライフサイクルポリシーの設計、移行コストとトレードオフ
EFS vs FSx for ONTAP マルチプロトコル要件時の選択基準
スナップショットのクロスリージョンコピー DR設計のコスト・RPO/RTO
S3 Transfer Acceleration グローバル展開時の転送速度最適化
Storage Gateway オンプレとAWSの橋渡し、移行期間中の役割
AWS DataSync 大量データ移行・差分同期

おわりに

オンプレミスからAWSへ移行する際、ストレージの選択判断は設計品質とコストに直結する。本記事で整理した各サービスの特性を以下にまとめる。

サービス 用途 主な特性
EBS 単一EC2のブロックストレージ gp3推奨・内部3重冗長で自前RAID不要
EFS 複数EC2の共有ファイルシステム マネージドNFS・自動スケール
S3 オブジェクトストレージ ライフサイクルポリシーによるコスト最適化
FSx 特定プロトコル対応ファイルシステム SMB / Lustre / iSCSI等に対応
Instance Store 一時データ専用 高速だが永続性なし

移行設計においては、データの永続化先を明確に分離し、EC2インスタンス自体はステートレスに設計することがクラウドネイティブな運用の基本原則となる。オンプレとAWSの概念は多くの部分で1対1にマッピングできるため、既存の運用知識を土台としてAWSサービスへ置き換えていくアプローチが有効である。


参考

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