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MicroPython x Web Serial APIで構築する、Raspberry Pi Pico Wのエンドユーザー向けWiFi初期設定(1)

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まずは GitHub 公開リポジトリの URL を貼っておきます。
すぐに動くものを見たい方はこちらをご確認ください。
GitHubリポジトリ
※サンプルコードも同梱されていますので、実行時はご注意ください。


開発動機

前回も述べたとおり、Raspberry Pi Pico W をはじめとする無線LAN機能搭載の IoT 機器では、エンドユーザーが自身の WiFi 接続情報を機器に設定する必要があるという課題があります。

近年では WPS のような規格も存在しますが、Raspberry Pi Pico W のようなリソースの限られたデバイスでは実装が困難です。

現実的な解決策として、以下のような手法があり、Qiitaでも多くの記事が公開されています。

  1. 初回起動時に Pico W をアクセスポイントとして動作させ、HTMLフォームを通じて接続情報を入力させる
     → その1その2

  2. Bluetooth 経由で接続情報を書き込む

  3. Raspberry Pi Pico W を USB ストレージとして認識させ、情報を書き込む

これらは有効な手法ですが、それぞれに以下のような課題があります。

  • 手法1には「設定中に外部との通信ができない」という制限がある
  • 手法2・3では、利用者にもある程度の IT スキルが求められる

「Raspberry Pi Pico W(を組み込んだIoT機器)を実用的に使うには、これらの課題を解決する必要がある」と考えていたところ、次の情報を目にしました。

Raspberry Pi Pico の MicroPython 開発環境で利用する REPL(Read-Eval-Print Loop)は、単なるシリアル通信である

この情報をきっかけに、

「Web Serial API を使えば、ブラウザと USB ケーブルだけで、外部通信を維持したまま、安全に設定ファイルの書き換えができるのでは?」

というアイデアが浮かび、今回のツールキット(と呼ぶのは少し大げさですが)を作成しました。


従来手法に対する利点

今回のアプローチが、既存の手法と比較して優れていると考える点は以下のとおりです。

  • USB接続とブラウザだけで設定可能
     → 利用者に専門知識は不要。「機器とPCをUSBで接続し、指定されたURLを開く」と伝えるだけで完了。

  • 即時に接続確認が可能
     → 設定直後にネットワーク接続の成否を確認できます。

  • 汎用的な設定内容の受け渡しが可能
     → WiFi情報に限らず、クラウド接続用のトークンなどの認証情報も同時に保存できます。

  • 情報の安全な保存
     → 接続情報は暗号化して保存。.mpy化や暗号処理の工夫により、盗難・解析リスクを大きく軽減できます。

これらの利点により、「Raspberry Pi Pico W + MicroPython」を活用した IoT 機器の実用的かつ安全な運用が現実のものになったと考えています。


使用技術

このツールキットでは、以下の技術を使用しています。

  • MicroPython REPL(Raspberry Pi Pico W 側)
  • Web Serial API(ブラウザ → Pico W 通信)
  • Bootstrap 5(UI の整形)
  • Vue.js(CDN版、クライアント側の状態管理・再利用)

なお、Vue.js に関しては補足があります。

近年の Vue 解説では .vue ファイルを用いた SFC(Single File Component)形式が主流ですが、本プロジェクトではCDN版 Vue.js をクライアントサイドのみに限定して使用しています。

SSR(サーバーサイドレンダリング)との併用や、既存Webアプリへの部分的な導入など、再利用性や柔軟性を重視した Vue の使い方として、同じ考えを持つ方の参考になれば幸いです。


次回の予定

次回は、GitHub に公開しているソースコードをベースに、Web Serial API の基本的な使い方や動作原理について解説する予定です。

どうぞよろしくお願いします。

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