はじめに
本記事は、プライベートで雇った AI 秘書(Claude Code)を、前回の記事から 2 週間(2026-10-04〜10-17)かけて育てた記録です。
前回の記事「仕事が忙しいので、プライベートに AI 秘書を雇ってみた」の続編です。
前回は、エージェントに「何をさせないか」の仕組みと、コンテキストを複利で積み上げる考え方を紹介しました。
今回は、その考え方で 2 週間使い続けた結果です。
この記事では、
- 2 週間でできるようになったこと
- 作業のたびにレポートを作り、振り返りと「育てる提案」を出させるループ
- 使ってみて分かった、サブエージェントとキャッシュのコスト
- 業務への持ち込みのその後
といった点を中心に書いています。
環境
前回とほぼ同じです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| エージェント | Claude Code(デスクトップアプリと CLI) |
| プランとモデル | Claude の Pro プラン、モデルは Claude Opus 5.5 |
| PC | Windows 11、コマンドは Git Bash で実行 |
| 自宅サーバー | Proxmox 上の LXC コンテナ(写真ストレージ・ファイルストレージなど) |
| 外部サービス | Gmail・Google カレンダー(コネクタで接続)、LINE と Discord(通知用) |
2 週間で増えたもの
まずは数字で、作業場所(ワークスペース)の中身を 10/3 の終わりと 10/17 で比べました。
| 項目 | 10/3 の終わり | 10/17 |
|---|---|---|
| コミット | 150 件 | 565 件 |
| スキル | 7 | 13 |
共通の道具(tools/) |
5 | 10 |
| サブエージェントの定義 | 0 | 4 |
| 恒久レポート | 9 本 | 43 本 |
2 週間のコミット 415 件のうち 118 件(およそ 4 件に 1 件)は、指示書・ルール・スキル・hook を書き足したり直したりしたコミットでした。
前回の 5 日間(119 件中 36 件)と、ほぼ同じ割合です。
モノレポの構成も、任せる作業に合わせて育ちました。
主なフォルダを並べると、次のようになります(★ がこの 2 週間で増えたもの)。
workspace/
├── AGENTS.md エージェント共通の指示書
├── .claude/ ルール・スキル・hook
│ ├── agents/ サブエージェントの定義 ★
│ └── scheduled-tasks/ 定期タスクの手順の原本 ★
├── family/ 家族まわり ★
│ ├── benesse/ 子どもの学習の記録 ★
│ ├── mitene/ 家族アルバムの候補選び(photos/ から移した)
│ └── outings/ 出かけ先のストック ★
├── finance/ お金
│ ├── cashflow/ 家計簿の取り込み ★
│ ├── reports/ 家計簿の月次・年次レポート ★
│ ├── sbi/ 証券・銀行の定期振込
│ └── tax/ ふるさと納税(一番上の tax/ から移した)
├── google/ Gmail とカレンダー(gmail/ から広げた)
├── personal/ 料理・お菓子作りのレシピ ★
├── monitor/ 自宅サーバーの毎朝の見回り ★
├── todo/ あとでやること ★
├── knowledge/ 調べてまとめた知識 ★
├── tools/ 共通の道具(5 個から 10 個に)
├── reports/ レポートサイトの原本と生成スクリプト
├── articles/ 技術記事の原稿
└── servers/ 自宅サーバーの構成
最初は gmail/・tax/・photos/ のように作業ごとに並べていたフォルダを、家族・お金といった暮らしの分け方にまとめ直しています。
できるようになったこと
この 2 週間で任せるようになった作業を、画面と一緒に紹介します。
学校からの配信の要約
子どもの小学校からは、学校の連絡サービスでお便りが届きます。
添付の資料を自宅のファイルストレージ(Seafile)に置き、要約を家族の LINE グループへ送るところまでを毎日の定期タスクにしました。
行事や締め切りは Google カレンダーに入れ、手を動かす必要があるものは TODO の候補にしています。
子どもの学習の記録
子どもが使っている通信教育のタブレット(チャレンジタッチ)から、前日の学習記録を毎朝取っています。
その日のノルマを終えたかと、月号の進み具合をレポートにして、家族の LINE グループへ送ります。
家計簿のレポート
家計簿アプリ(Money Forward ME)の入出金を月ごとに取り込み、12 か月分を分析した年次レポートと、毎月の月次レポートを作るようにしました。
月次レポートは毎月の定期タスクで、先月の収支・固定費・大きな支出・分類の直し候補を 1 枚にまとめます。
自宅サーバーの見回り
自宅サーバー(Proxmox と LXC)の状態を毎朝集め、グラフ付きのレポートにしています。
異常があれば Discord に知らせます。
あわせて、バックアップを入れ、パッケージの更新も自動にしました。
暮らしの記録と TODO
作っておいしかった料理やお菓子のレシピは、スマホからメモと写真を送ると、1 品 1 ページにまとめてくれます。
あとでやることは TODO タブに置き、期限が近いものはレポートサイトのホームにも出します。
エージェントが、私にしかできない作業(ログインや、PC の前での操作)を頼んでくるときも、「今すぐやる」か「TODO に残す」かを選べるようにしました。
レポートの振り返りで環境を育てる
この 2 週間でいちばん良かったのは、作業のたびにレポートを作り、その中で振り返りをさせる流れでした。
作業のたびにレポートにする
レポートは、用途で 3 種類に分けています。
| 種類 | 使いどころ | 置き場所 | 残す期間 |
|---|---|---|---|
| その場のまとめ | 比較や調査の結果を、その場で整理して見せる | チャット | 残さない |
| 一時レポート | 調べ物など、サイトで読みたいが管理は要らないもの | レポートサイト | 14 日で自動で消える |
| 恒久レポート | 作業の報告や定期タスクの結果など、後から読み返すもの | 自宅サーバーのレポートサイトと Git | ずっと残す |
どれもエージェントが作り、私は読んで判断します。
レポートの最後に「育てる提案」を書かせる
10/7 からは、恒久レポートの末尾に「振り返りと育てる提案」という節を必ず置くことにしました。
今回の作業で同じ手順を繰り返した、訂正された、承認待ちで止まった、といった出来事を根拠に、道具・スキル・ルール・設定の直し方を多くても 3 件提案させます。
私が OK を出した提案は反映し、元のレポートに「反映した(日付)」と追記させます。
後からレポートを読み返したときに、提案が済んだかどうかが分かるようにするためです。
提案が仕組みになった例
定期タスクが、確認用に書いた python -c のコマンドで止まったことがありました。
許可の設定に入っていないコマンドだったため、無人の実行が承認待ちのまま進まなくなったのです。
振り返りで「定期タスクの手順に python -c を書かない」というルールが提案され、反映しました。
さらに、手順を書いた時点で気づけるよう、ワークスペースの検査スクリプトでも見つけるようにしました。
別の日には、タブで切り替える長めのレポートを、2 回続けてゼロから書いていました。
振り返りでこの繰り返しを指摘され、次からは写して使える HTML のひな形を用意しました。
同じ失敗が続いたら、ルールを足す前に見直すこと
提案のたびにルールを足すと、ルールが増えるばかりです。
同じ指摘が再発したら、ルールを足す前に 3 点を見直します。
ルールが読まれたか、書いた位置が遅くないか、機械で止められないかです。
時間の幅を変えて振り返る
振り返りは、レポートのほかにも時間の幅を変えて回しています。
| いつ | 何をする |
|---|---|
| その場 | 指摘・失敗・確定した好みを、指示を待たずにルール・スキルへ反映する(学習ループ) |
| 作業の節目 | レポートで作業を振り返り、道具・スキル・ルール・設定の見直しを提案する |
| 毎週 |
/insights の提案と、1 週間の記録を突き合わせる(週次レポート) |
| 月 2 回 | ワークスペース全体の設定・ルール・スキル・定期タスクのずれと、不要なものを検査して直す |
その場の学習ループは前回の記事でも紹介しました。
今回加えたのは、作業の節目・毎週・月 2 回の 3 つです。
月 2 回の見直しは、ルールやスキルが増えて互いに食い違っていないか、使われなくなったものがないかを、定期タスクが検査します。
週次レポートで /insights と突き合わせる
Claude Code の /insights は、最近のセッションを分析して使い方の傾向やつまずきをまとめるコマンドです。
ただ、見ているのは会話なので、提案が実際にルールへ入ったかまでは分かりません。
そこで毎週日曜の夜に、/insights の提案と、ワークスペースの 1 週間の記録(コミット・レポート・定期実行・使用量・TODO)を突き合わせる週次レポートを作っています。
提案ごとに「反映済み」「一部」「未対応」「保留」を判定し、初回は 13 件中 6 件が反映済みでした。
作業のたびにレポートを残しているので、提案が反映されたかをレポートとコミットから確かめられます。
育ったと実感した場面
いちばん分かりやすかったのは、似たような定期タスクを作るときです。
通知の送り分けや無人で止まらないための決まりがルールとして残っているので、2 つ目以降はすぐに形になりました。
定期タスクを直している途中で、ワークスペースの別の場所への影響に気づいて提案し、直してくれたこともあります。
手順の直しがアプリ側の写しにだけ入っていて、ワークスペースの原本に入っていなかったのを見つけた件で、私は気づいていませんでした。
家計簿のレポートを作ったときは、ふるさと納税や家族のことを改めて説明しなくても、会話の流れで理解してくれました。
ふるさと納税の記録も家族の情報も同じワークスペースに置いてあるためで、モノレポにまとめた効果を実感しました。
提案が毎回出てしまう
一方で、振り返りの節を置いた恒久レポート 27 本のうち、「提案なし」で終わったものは 1 本もありませんでした。
毎回何かしら提案が出るので、反映しても次の作業があまり楽にならないものも混ざっていると思います。
次は、その提案が本当に役に立つのかをエージェントに検討させるところまで、試してみるつもりです。
使ってみて分かったコスト
サブエージェントは出番がなかった
コストを抑えるため、作業に合わせて安いモデルに任せられるよう、サブエージェントを 4 つ定義しました。
判断役(Opus)、実装役(Sonnet)、決まったコマンドの実行役(Haiku)、Gmail の読み取り役です。
ところが 2 週間で起動したのは、実行役が 2 回と Gmail の読み取り役が 1 回で、判断役と実装役は一度も呼ばれませんでした。
使われなかった理由は 2 つあると考えています。
1 つは、各セッションがそこまで長くならなかったことです。
サブエージェントは、長い作業や重たい作業を分担させるときに向いているのだと分かりました。
もう 1 つは、任せても思ったほどコストが下がらないことです。
サブエージェントはこれまでの会話の流れを引き継がずに起動するので、任せるたびに、作業に必要な指示書やファイルを読み直します。
単発の作業では、この読み直しの分で、安いモデルに任せて浮く分が打ち消されてしまいます。
セッションの再開はキャッシュで高くつく
Claude Code は、それまでの会話をキャッシュ(プロンプトキャッシュ)に書き込んでおき、次の呼び出しでは安く読み直します。
2 週間の使用量を種類ごとに数えると、次のようになりました1。
| 種類 | 割合 |
|---|---|
| キャッシュの読み込み | 56.5% |
| キャッシュの書き込み | 35.5% |
| 出力 | 8.0% |
キャッシュの書き込みは、出力の 4 倍以上ありました。
私の環境では、キャッシュの持ち時間は 1 時間でした。
1 時間を過ぎてから長いセッションを再開すると、それまでの会話をまるごと書き込み直すことになります。
間が空いたら、長いセッションを再開するより、新しいセッションで始めたほうが安く済みます。
作業の途中を次のセッションへ渡す
ただ、レポートは作業が終わってから作るので、途中で切り上げたセッションの状態は残りません。
業務では、途中の状態をファイルに残して次のセッションへ引き継ぐ steering スキル2を使っているので、今度はそれをプライベートにも持ち込むつもりです。
業務への持ち込みのその後
前回の記事で業務に置き換えたと書いた、学習ループと HTML のレポートは、業務で次の形に広げました。
1 つ目は、ワークスペースを育てる取り組みです。
プルリクエストのレビューで受けた指摘を記録し、毎回のセルフレビューで確かめるようにしました。
同じ指摘を繰り返さないようにして、コードの品質を上げています。
2 つ目は、作業の状況を把握しやすくする取り組みです。
レポートサイトのように、ワークスペースやプロジェクトごとの作業状況を HTML で見られるようにしました。
作業の終わりにエージェントが更新するので、自分がどこまで進めたかを把握しやすくなりました。
この記事の主軸の、レポートの振り返りと育てる提案も、業務で試しています。
プライベートで得た知見を、プロジェクトごとに合った形で組み込めるよう、これからも考え続けていきます。
おわりに
2 週間で、エージェントにできることは大きく増えました。
ただ、いちばんの収穫は、作業のたびにレポートにして振り返りと提案を出させ、私は OK を出すだけで環境が良くなっていく流れができたことです。
私が意識してルールを書き足さなくても、次の作業が少しずつ楽になっていきました。
前回の記事では、みのるんさんの書籍を参考に、コンテキストを複利で積み上げる考え方を紹介しました。
振り返りで出た提案を反映し続けることが、その具体的なやり方になると感じています。
書籍や SNS で語られていた「この作業、Claude Code に任せられないか?」も、常に考えるようになりました。
これから始めるなら、まずはエージェントに作業の報告を書かせ、その最後に「今回の作業で、次を楽にするために直すとよいこと」を書かせるところから始めるのがおすすめです。
ぜひ取り入れて、コンテキストの複利を育ててみてください。
参考
- 仕事が忙しいので、プライベートに AI 秘書を雇ってみた
- Claude Code のサブエージェント(公式ドキュメント)
- Claude Code のコスト管理(公式ドキュメント)
- [みのるん式]ビジネスパーソンのためのClaude Code仕事術(技術評論社)
- 実践Claude Code入門 ―現場で活用するためのAIコーディングの思考法(技術評論社)





