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本記事は 生成AIセキュリティ by ナレコム Advent Calendar 2024 の10日目の記事です。

本Advent Calendarは、国内で唯一の技術領域 責任あるAIMVP受賞者 を中心に、生成AIを含めたAIやデータを企業が利活用するときに気をつけるセキュリティやガバナンスを中心に紹介します。

はじめに

近年、生成AI技術の進化により、コンテンツの作成方法が大きく変わりつつあります。文章、画像、音楽など、さまざまなコンテンツがAIによって自動的に生成され、従来の制作手法とは異なる新たな価値が生まれています。しかし、これらのコンテンツに関する著作権の問題は、まだ十分に整理されていない部分が多く、企業やクリエイターにとっては重要な課題です。

文化庁著作権課が発表した「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス(令和6年7月31日)」は、生成AIが作成するコンテンツに関して、著作権をどのように扱うべきか、またそのリスクをどう管理するかについての指針を提供しています。本記事では、このガイダンスの要点を分かりやすく紹介します。

第1部「AI開発・提供・利用のチェックリスト」

主に生成AIを開発、提供、または利用する企業や個人が、著作権リスクを軽減するために実行すべき措置を示したものです。このチェックリストは、文化庁の「考え方」や内閣府、総務省、経済産業省のガイドラインを踏まえ、ステークホルダーごとに必要な対応策をわかりやすく紹介しています。

1. ステークホルダーの分類

第1部では、AIに関わるステークホルダー(関係者)を以下のように分類し、それぞれに適したリスク低減策を提供しています。

  • AI開発者(AI Developer): AIの基盤となるモデルやアルゴリズムを開発する者
  • AI提供者(AI Provider): 開発したAIをサービスとして提供する者
  • AI利用者(AI Business User): AIサービスを業務で使用する者
  • 業務外利用者(一般利用者): 個人的にAIを使用する者

これらのステークホルダーは、AI開発・提供・利用の過程で直面する著作権リスクを軽減するために、それぞれ異なる対策を講じる必要があります。

2. リスク低減策のポイント

主に以下のようなリスク低減策が提案されています:

  • データの収集と使用に関する留意点: 生成AIの開発において、学習データの収集が著作権法に抵触しないようにするための方策が記載されています。例えば、著作物を学習データとして使用する際には、権利者の許可を得るか、著作権法第30条の4を適用する必要がある場合があるため、これを回避するための注意点が挙げられています。
  • 海賊版や不正データの利用を避ける: 著作権を侵害する恐れのある海賊版や不正アップロードされたデータを学習データとして使用することは厳禁です。これにより、AI開発者が法的責任を問われるリスクを回避できます。
  • 学習データに依存しないAIの開発: 学習データに基づいた著作物をそのまま出力するような学習方法は避けるべきです。過度に学習データに依存することで、生成される内容が著作物に類似し、著作権侵害に繋がる可能性があるためです。

3. 技術的措置と推奨手段

生成AIの開発段階で、著作権侵害を防ぐための技術的措置(例えば、生成された内容が学習データに類似しないようにする技術)を採用することが推奨されています。これにより、AIの出力が著作物に依存しすぎないようにし、著作権侵害のリスクを低減させます。


第1部 解説

第1部は、AIを開発または利用する際に注意すべき著作権の問題について、企業や開発者が法的リスクを回避するために必要な具体的な行動を提案しています。例えば、AI開発者が著作権侵害を避けるためには、学習データを収集する際にそのデータの権利者に許可を得ることが基本です。また、海賊版データや不正にアップロードされたデータを使ってはいけませんし、AIが出力する内容が学習したデータと類似しないようにする技術的工夫も必要です。

このように、AIの開発や利用において著作権法を遵守するための実務的な手順が、各ステークホルダー別に整理されています。AIに関わるすべての関係者がこれらのチェックリストを活用することで、著作権リスクを低減させることができるのです。

この資料の目的は、生成AIが引き起こす可能性のある著作権問題に対する理解を深め、リスクを管理するための実践的なガイドラインを提供することにあります。

第2部「権利者のためのガイダンス」

「第2部」は、著作権者や実演家などが自らの著作物の利用に関する権利をどう守るか、AIが生成したコンテンツに自分の著作物が関わる場合にどう対応すべきかに焦点を当てています。以下のポイントを説明しています:

  • 自分の著作物が生成AIでどのように利用される可能性があるのか
  • 著作権侵害を立証する方法と、その場合の対抗措置
  • 権利を守り、適正な報酬を得るためにできること

1. 前提知識の把握

著作権は、複製や公衆送信など、著作物を法的に利用される行為に対して適用されます。著作権者は、AIが自らの著作物をどのように利用するか、どの段階で権利行使ができるかを理解しておくことが重要です。具体的には、生成AIの開発・提供・利用において以下の行為が問題になります:

  • 生成AIへの指示や入力
  • AIが生成するデータの利用や生成物の出力
  • AI学習のために著作物を使用すること

2. 自身の作品に類似したAI生成物への対応

もしAIによって生成されたコンテンツが、自分の著作物に類似している場合、著作権侵害が成立するかを検討する必要があります。これには、生成物と自分の著作物との間に「類似性」や「依拠性」があるかを確認することが重要です。

  • 類似性:他者が見たときに、既存の著作物の本質的な特徴が感じ取れるか
  • 依拠性:AIが自分の著作物に基づいて生成されたかどうか

侵害が確認できた場合、権利者は差止請求や損害賠償請求を行うことができます。

3. 著作権侵害への対応

著作権者は、侵害が確認されれば、以下の措置を取ることができます:

  • 生成されたAI生成物の利用停止
  • 侵害物の廃棄
  • 侵害行為の予防措置の要求

また、侵害者が故意や過失であれば、刑事罰を求めることも可能です。

4. 自身の作品がAI学習に利用されることへの対応

著作物がAI学習に使用されることを防ぐためには、いくつかの事前措置が考えられます。例えば:

  • 技術的措置:ウェブサイトに「robots.txt」を設定し、クローラによるデータ収集を防ぐ。
  • 販売措置:自分の作品をAI学習用データベースとして販売することで、無断で利用されるのを防ぐ。

これらの対応により、著作権者は自分の権利を守るための手段を講じることができます。


第2部 解説

著作権者がAI技術とどのように向き合うべきかを非常に実務的に説明しています。生成AIが関わる著作権問題は、「自分の作品がどう使われるか」「AIによって作られたものが自分の作品に似ている場合、どう対応するか」といった具体的な事例に基づいています。著作権者は自分の作品が無断で利用されないように予防策をとり、もし侵害があれば、法律に基づいた対応を検討する必要があります。また、AIが自分の作品を学習データとして使うことを防ぐための方法や、問題が発生した場合に取るべき措置を知ることが、権利を守るうえで重要なポイントです。

まとめ

生成AIの利用と著作権の問題は、今後ますます重要になります。企業や開発者は、AI開発時に適切なデータ収集と技術的対策を講じることが求められます。また、著作権者は、自身の作品が無断で使用されないように予防策を取り、侵害時には法的措置を講じることが必要です。
「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」では、AIによる著作権リスクを管理し、適正な利用を進めるための指針が示されています。

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