執筆:あきらパパ / 確認日:2026-10-29(JST)/ 実機検証:2026-10-28
この記事では次の4つを区別しています。
- メーカー発表:Liquid AIの説明と、Liquid AI自身の測定。筆者は再現していません。
- ローカル観測:筆者の1台の環境で確認したこと。
- 独自調整:本検証で使った通常会話専用テンプレート。BionicやLiquid AIの公式推奨ではありません。
- 未検証:確かめていないこと。
1. LFM3の新しい点(メーカー発表)
- 共通基盤LFM3-1.7B-Baseから、用途別の6モデルを構成(Baseは6つに数えない)
- 文字・視覚・音声・統合に加え、生成しない判定モデル(d1系)を同じファミリーに含む
- 旧2.6Bモデル比でパラメータ35%減、事前学習22Tトークン
- 文字モデルの文脈長は256K
公式ブログは2026-10-27表記です。公式Xの発表投稿は2026-10-28に確認しました(反響の量は調べていません)。
2. 用途別6モデル(メーカー発表)
| 正式型番 | 実パラメータ | 入力 | 出力 | 役割 | 文脈長(仕様) | 本記事での検証 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| LFM3-1.7B | 1.73B | 文字 | 文字 | 文章、ツール呼び出し | 256K | 通常会話・単回長文生成(Q8_0) |
| LFM3-VL-2B | 1.92B | 文字・画像・動画 | 文字 | 視覚入力の理解 | 128K | 未検証 |
| LFM3-Audio-2B | 2B(総数) | 文字・音声 | 文字・音声 | 音声対話(18言語の音声) | 32K | 未検証 |
| LFM3-Omni-2B | 2.17B(総数) | 文字・画像・動画・音声 | 文字・音声 | 複数モーダルの統合 | 32K | 未検証 |
| d1-2B | 1.92B | 文字・画像・動画 | 型付き判定・抽出、確率 | 判定・抽出 | 128K | 未検証 |
| d1-Omni-2B | 2.17B | 文字・画像・動画・音声 | 型付き判定・抽出、確率 | 判定・抽出(会話モデルではなく、音声出力なし) | 128K | 未検証 |
- 型番の2Bは厳密な総数ではありません(Bは10億)。
- 文脈長はトークン上限(入力+出力)です。256Kは日本語256,000文字の保証でも、完全な記憶でもありません。
- d1系の確率は、モデルの判定の寄り具合を示す値で、正解の保証ではありません。
- 公式は文字モデルをagentic codingや複雑な多段推論には推奨しておらず、知識に依存するタスクは検索との併用を案内しています。
3. アーキテクチャ(メーカー発表)
24層の内訳は、gated short convolution 13層(近くの並び)、sliding-window attention 5層(256トークンの窓内の関係)、global attention 6層(全体の関係)です。
4bitで文字モデル約1GBというのもメーカー説明です。約1GBは必要RAMの総量ではなく、KVキャッシュとランタイムの分が加わります。本記事で使うQ8_0(1.85GB)とも別の数字です。
4. ベンチマーク(メーカー測定)
以下は、Liquid AIが自社のモデルカードに掲載した測定値です。第三者の再現でも、筆者の再測定でもありません。
4-1. 各ベンチマークが見ているもの
| ベンチマーク | 見ているもの |
|---|---|
| LiveClaw | OpenClawを使うエージェント課題の達成 |
| BFCL V4 | 正しい関数・引数を選ぶツール呼び出し |
| MCP-Atlas | ツールを伴う長い課題 |
| SWE-bench Verified | 実リポジトリの課題修正(OpenCode経由) |
| LiveCodeBench v6 | プログラミング問題のコード生成 |
| IFEval | 検査可能な指示条件を守れるか |
| GPQA Diamond | 専門的な科学の難問 |
| RULER 128K | 長い入力内の情報を扱えるか |
4-2. 8指標×6モデル
すべて高いほどよい指標です。
| ベンチマーク | LFM3-1.7B | LFM2.5-2.6B | MiniCPM5-2B | Gemma4-E4B | Qwen3.5-4B | Qwen3.5-9B |
|---|---|---|---|---|---|---|
| LiveClaw | 45.60 | 14.70 | 30.37 | 20.36 | 19.94 | 35.77 |
| BFCL V4 | 71.39 | 55.89 | 62.65 | 48.25 | 55.12 | 62.83 |
| MCP-Atlas | 32.57 | 16.45 | 26.38 | 6.19 | 41.37 | 42.67 |
| SWE-bench Verified (OpenCode) | 43.40 | 18.00 | 34.80 | 0.50 | 41.20 | 51.20 |
| LiveCodeBench v6 | 73.46 | 60.57 | 70.52 | 71.00 | 61.99 | 69.86 |
| IFEval | 96.66 | 95.39 | 87.83 | 90.02 | 92.52 | 92.08 |
| GPQA Diamond | 63.37 | 57.78 | 65.15 | 57.88 | 75.76 | 80.40 |
| RULER 128K | 65.56 | 1.15 | 37.96 | 18.82 | 84.63 | 87.11 |
4-3. 評価条件
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 精度・実行 | 全モデルBF16/vLLM |
| 最大context | LFM3-1.7B・Qwen3.5-4B・Qwen3.5-9B:262,144/LFM2.5-2.6B・MiniCPM5-2B・Gemma4-E4B:131,072 |
| サンプリング | 原則 temperature 0.6、top_p 0.95 |
| BFCL V4 | greedy、最大出力32,768 tokens |
| LiveClaw | OpenClaw、最大出力8,192 tokens |
| SWE-bench Verified | OpenCode、最大250 turn |
| MCP-Atlas | 最大256 turn |
ハーネスやturn上限、モデル別のcontext上限に差があるため、完全に同一条件の比較とは言えません。
4-4. 読み方
- 同じ行のモデル同士だけを比べます。 異なるベンチマークの点数は尺度も意味も違うので、横に比べません。全指標を一律に「正答率」とも読みません。
- 差を性能の倍率に変換しません。
- LFM2.5-2.6B比:8指標すべてで上回ります。IFEvalの差(96.66対95.39)は小さめです。
- Qwen3.5-9B比:上回るのはLiveClaw(45.60対35.77)、BFCL V4(71.39対62.83)、LiveCodeBench v6(73.46対69.86)、IFEval(96.66対92.08)。下回るのはMCP-Atlas(32.57対42.67)、SWE-bench Verified(43.40対51.20)、GPQA Diamond(63.37対80.40)、RULER 128K(65.56対87.11)です。
- Qwen3.5-4B比:MCP-Atlas、GPQA Diamond、RULER 128Kで下回り、他の5指標で上回ります。
- MiniCPM5-2B比:GPQA Diamond以外の7指標で上回ります。
- Gemma4-E4B比:8指標すべてで上回ります。SWE-bench 0.50やMCP-Atlas 6.19のような極端な値は、ハーネスやcontext上限の差の影響が切り分けられていないため、単独で実力の結論にしません。
- 表全体の平均は、性質の違う指標の非加重平均になるため、万能な順位としては使いません。
読めること:メーカー条件(BF16)では、LFM3-1.7Bはツール呼び出し・エージェント課題・指示条件の指標で高いスコアです。
読めないこと:日本語会話の品質、安全な自動操作、量子化版(Q8_0やQ4_0)での同等性、長文の実用精度。また、コード問題を正しく解くことと、自律的に開発を完遂することは別です。公式も文字モデルをagentic codingには推奨していません。
4-5. VL・Audio・Omni・d1(メーカー発表)
公式ブログでは、視覚系62評価の単純平均として、LFM3-VL-2B(実パラメータ1.92B、型番2B)が71.4、Gemma4 12Bが71.7、GPT5.6 Lunaが73.4、Gemini3.5 Flash Liteが70.0と示されています。このテスト集合では近い結果ですが、あらゆる画像質問に同じ強さとは言えません。
Audioは18言語の音声対話、Omniは画像・音声の統合、d1は生成せず型付き判定と確率を返す役割です。文字モデル以外の5モデルは本端末で未検証です。
4-6. 速度の数値について
公式の端末速度比較はQ4_0/llama.cpp/context 32Kの条件です。本記事の測定(10章)はQ8_0の単回測定なので、公式値とは比較しません。
5. 検証環境(ローカル観測)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 端末 | Apple M4 Max/64GB |
| アプリ | Bionic 1.1.9(build 6) |
| ランタイム | Metal llama.cpp 2.65.1(Bionic側の版数) |
| モデル |
LiquidAI/LFM3-1.7B-GGUF の LFM3-1.7B-Q8_0.gguf
|
| サイズ | 1,846,238,496 bytes(1.85GB) |
| 整合性 | SHA256が公式LFSと一致。GGUF内のchat_templateも公式と一致 |
ランタイムの2.65.1はBionic側の版数で、llama.cpp本体のGitHubリリース番号(参照したのはb11938)とは別の番号です。llama.cppのmasterに src/models/lfm3.cpp が存在することも確認しました。Liquid AIのllama.cpp導入ガイドは例に旧LFMのものが混ざっているので、古いビルド番号の例をLFM3対応版として読まないよう注意してください。
参照(確認日2026-10-28):
- https://lmstudio.ai/docs/bionic/models
- https://github.com/ggml-org/llama.cpp/releases/tag/b11938
- https://docs.liquid.ai/deployment/on-device/llama-cpp
6. モデルの選択と読み込み
公式GGUFをダウンロード済みである前提です。Bionic公式ガイドのモデルの項と筆者の観測にもとづく流れです。
- モデル選択で「Local」を選ぶ
- 配布者が
LiquidAI、ファイルがLFM3-1.7B-Q8_0.ggufであることを照合する - 既存のQ8_0を選び、loadする
非公式の変換版は対象外です。サイズとSHA256を、Hugging Faceのファイルページの値と照合します。
# 公式GGUFを既に持っている前提の例です。本記事の制作中にこのコマンドは実行していません
shasum -a 256 LFM3-1.7B-Q8_0.gguf
7. 調整前に起きたこと(ローカル観測)
- Bionicが渡す作業用指示・環境情報・ツール定義に反応し、単純な質問でも存在しないフォルダの探索を繰り返しました。
- 最初の短い会話テストが通っても、通常会話で安定する保証にはなりませんでした。
- System Promptの変更とThinking offだけでは解消しませんでした。
- 調整前には、中国語の混入や指定した文数を守らない応答も見られました。
8. 通常会話専用テンプレート(独自調整)
各設定欄へ到達する正確なメニュー階層は記録していないため、記載しません。画面の項目名や配置はバージョンで変わる可能性があります。他端末での再現は未検証です。
8-1. 変更前に原本を保存する
- モデル設定のプロンプトテンプレート(Jinja)欄の内容を全文コピーし、手元に別ファイルとして保存します。元に戻すときの最優先の原本です。
- これから変える設定項目の現在値を控えます。スクリーンショットには個人のパスなどが写ることがあるので、手元だけで保管してください。
8-2. 独自テンプレートの処理内容
本検証で使ったテンプレートの全文は、この記事では配布しません。公式テンプレートは次のURLで確認できます。
独自テンプレートは、公式のChatML形式を土台に次の処理をしています。
-
tools=[]にして、ツール定義を渡さない - 新しい短い日本語のsystemを入れる
- 履歴から、userと、ツール呼び出しを含まないassistantだけを取り出す
- user本文に
</environment>があれば、最後の区切りより後ろだけを残す enable_thinking=false
結果として、ツール定義・環境情報・作業用指示(既存のsystem/developer指示)の3つを会話に渡しません。
通常会話専用です。 作業用指示とツール文脈を保持しないため、ファイル操作・コーディング・自動操作などのエージェント用途には使わないでください。また </environment> の処理はすべてのuser messageにかかるので、本文にこの文字列を含めると、それより前の内容が失われることがあります。
8-3. 推論設定
| 項目 | 値 |
|---|---|
| Temperature | 0.1 |
| top_k | 50 |
| repeat penalty | 1.1 |
| Thinking | off |
| context length | 8192 |
| GPU offload | 24 |
| max concurrent predictions | 1 |
| Unified KV Cache | off |
| Context Checkpoints | 0 |
テンプレートと各設定のどれがどれだけ効いたかは切り分けていません。全項目が必須とは言えません。
8-4. 適用と確認
- shellをoffにして、モデルを再ロードします。
- 新しい会話で、9章の質問を順に送ります。
9. 結果(ローカル観測)
※図の会話例は簡略表記です。図の除外情報の3つめは作業用指示です。各設定の因果は未分離です。
| 質問 | 応答 | 判定 |
|---|---|---|
| 五十音順で、あ・い・う・えの次 | お | 正答 |
| (続けて)では、その次 | おの次はか | 正答(文脈を保持) |
| 空が青い理由 | レイリー散乱について日本語で回答 | 内容は妥当 |
| あ、い、う、え、の次は? | 的外れな返答 | 誤答が残る |
4問とも探索ループは出ませんでした。ただし「回答が返る」「正答する」「用途に合う」は別々に判断する必要があります。
10. 長文生成の単回測定(ローカル観測)
5章の環境と8章の設定のまま、新しい会話で「日本語の物語を10,000文字以上、全20章で」と指示しました。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 測定日 | 2026-10-28 |
| 出力文字数 | 5,276文字(Pythonの len()、改行・見出し込み)→ 10,000文字の指定は未達
|
| 入力トークン | 149 |
| 出力トークン | 3,471 |
| 生成速度 | 139.56 tokens/秒 |
| 生成時間 | 24.86467秒 |
| 入力処理込みの時間 | 24.97247秒 |
| TTFT(最初のトークンまで) | 0.10781秒 |
| 停止理由 |
eosFound(モデルが自発的に終了) |
測定方法:lms の prediction.output.stats の値とサーバーログを照合しました。直後に自動で走った会話タイトル生成(別の出力、22.53秒)は含めていません。
- 1回だけの測定で、この環境・この設定に限った数字です。
- 上限による打ち切りではなく、指定の半分ほどでモデル自身が書き終えています。
- 物語の内容の正確さと、全20章の指定を守ったかは評価していません。
出典:筆者の検証記録(非公開)
採用を判断するときは、自分の用途に近い短い実務サンプルで、正答と指定条件を確かめてから使ってください。
11. 失敗したときの切り分け
| 症状 | 確認すること |
|---|---|
| フォルダ探索が続く | テンプレートが置き換わっているか、shellがoffか、再ロードしたか |
| 設定を変えても挙動が同じ | 再ロード後の新しい会話で試しているか |
| 曖昧な質問で外れる | 「五十音順で」のように条件を具体的に書く。それでも外れる場合は用途に合わない可能性 |
| 作業系の指示が効かない | 仕様どおり(8-2の制約)。作業用途には使わない |
| 原因がわからない | 次章の手順で元に戻す |
12. 元の設定に戻す
- テンプレート欄に、8-1で保存した原本を貼り戻します。これを最優先にしてください。
- 保存していない場合に限り、公式の chat_template.jinja(8-2のURL)を使えます。読者自身の設定のバックアップではなく、版が違えば手元のGGUFの内蔵テンプレートと一致しない可能性があります。
- 8-1で控えた値に各設定を戻し、モデルを再ロードして新しい会話で確認します。
GGUFファイル自体は変更していないので、再ダウンロードは不要です。
13. ライセンスと通信
- 重みの公開は、無条件の商用利用許可ではありません。LFM Open License v1.0 の第1条・第5条に、年間売上1,000万米ドルを基準とする条件があります。該当し得る場合は原文を読み、必要なら別契約を確認してください。
https://huggingface.co/LiquidAI/LFM3-1.7B/blob/main/LICENSE - ローカル実行でも、検索・API・ツール接続を使えば通信が発生します。
14. 未検証
メーカーのベンチマークの再現、長文の内容精度と全20章の遵守、文脈長の全長、速度の再現性と他条件での速度、消費電力、通信遮断状態での動作、音声・画像・動画、自動操作、他端末での再現。LFM3-1.7B以外の5モデルは試していません。
出典(確認日2026-10-29)
- https://www.liquid.ai/blog/lfm3
- 2章の表の各正式型番のリンク先(Hugging Faceの公式モデルカード)
- https://x.com/liquidai/status/2115128329003303107 (2026-10-28に確認)





