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Go言語の go.mod を1日でざっくり理解した話 — tidy と replace の関係から見えた構造的限界

Last updated at Posted at 2025-11-01

Goは手続き型言語なのにモジュール対応してしまった。
これが悲劇の始まりであり、go.modの宿命でもある。


本記事は、go.mod/tidy/replace の関係を 筆者が1日でざっくり理解した内容 を整理した記録です。
筆者は独自に Real言語 という、Goを基盤にした新しいプログラミング言語を設計していますが、その過程で見えたことを共有することが本記事の目的です。
理論よりも現実、哲学よりも再現性。
でも、なぜ壊れるのか、その構造もちゃんと見ていきます。


1. go.modとは何なのか

Goにおける go.mod は単なる設定ファイルではなく、
プロジェクト構造を宣言する設計図 です。

多くの利用者は go.mod を「依存を記録するファイル」だと思いがちですが、実際には「構造を宣言するファイル」です。

module example.com/hello
go 1.22
require (
    github.com/foo/bar v1.0.0
)
  • module は「このディレクトリ以下が1つの世界です」という宣言です。
  • Goはここを基準に import を辿り、依存関係を構築します。
  • つまり、適切なimport宣言を記述していくには、go.modファイルの内容を正確に理解・把握することが求められます。
  • よって go.mod は「依存ファイル」ではなく 構造宣言ファイル です。

go.sum はその裏で、依存の署名やハッシュを保持しているだけの存在です。


2. go.modが何を解決できるのか/何を解決するための存在なのか

Goのモジュール導入前は、GOPATH 配下で全プロジェクトが依存を共有しており、
バージョン競合やビルド再現性の問題がありました。

とはいえ、Goがこれを導入したのは「外部ライブラリを安全に共有したい」という実務的必然でもありました。
つまり、哲学と現実のバランスを取ろうとした結果として生まれたのが go.mod なのです。

go.mod はこれを解決するために生まれました。
目的は次の3つです:

  • 依存のバージョン固定
  • プロジェクト構造の独立
  • 再現可能なビルド

ただし、Goはもともと 手続き型=内部完結型 の言語です。
そこに「外部依存の管理」という新しい層を後付けしたことで、構造的なねじれが生じました。
これが後の「go.modが壊れる」問題の根源です。


3. go mod tidy コマンドの正体

go mod tidy は、プロジェクト全体を再走査して、go.mod と go.sum を再構築 するコマンドです。

go mod tidy

go mod tidy は、一見すると「整理整頓ボタン」で、プロジェクトの状態を最適化してくれるように見えます。
しかし実際には、全構造を“正しいと思い込んで”再構築する再帰的ツールです。
これは現代のVibeコーディングにも通ずる危うさを含んでいます。

(※Vibeコーディング=AIや補助ツールに任せすぎることで、構造理解を失う危険を指しています。)

go mod tidyが内部でやっていること:

  1. import文をすべて解析
  2. 不足している依存を追加
  3. 不要な依存を削除
  4. go.sum を再計算

つまり tidy は 構造の再整合ツール です。
構造的に言えば「自分の全体像を再構築する再帰処理」です。
mainパッケージを起点に、全てのimportを走査した上でgo.modを更新してくれるため、一見便利なコマンドに感じますが、ここに大きなリスクが潜んでいます。

一見便利な tidy ですが、Go への構造理解が浅いまま実行すると、思わぬ“構造破損”を引き起こします。
次章では、その典型例を見ていきます。


4. go mod tidy コマンドが破損をもたらす時

tidy は「整合」を目的としているため、
構造が不安定な状態で実行すると 破壊的な再構築 を行います。

破損が起きやすい例:

  • 下層フォルダにも go.mod が存在する
  • import が外部モジュールをまたいでいる
  • モジュールキャッシュが古い
  • vendor と go.sum の不一致

こうした場合、tidy は「正しい状態を知らないまま正しさを上書き」します。
結果として依存が壊れたり、ビルドが通らなくなったりします。

tidy は賢い整合ツールではなく、“何も疑わず全構造を再帰的に整える装置”です。
便利に見えますが、上記のような破損が起きやすい例に該当する環境で使うと、高確率で破壊的な変更をもたらします。


5. go mod replace の存在意義と使い道

replace は、tidy で壊れた構造を手動で修復するための手段です。
tidy によって破損することを予想できているのであれば、破損を事前に回避するための予防手段でもあります。

replace example.com/foo => ../foo

これで依存をローカルディレクトリなどに差し替えられます。
便利ですが、「恒久的な修復手段」ではありません。
当然go mod tidyの実行で再度破損します。

  • 用途:ローカルでの依存テスト、キャッシュ破損時の応急処置
  • リスク:replace が増えると構造が歪み、tidy の再整合が効かなくなる

replace は「壊れた構造を立て直す仮設の手段」ですが、放置すると建物が歪むように、モジュールも歪みます。
replace を必要とする環境になっているのなら、その環境は既に赤信号の状態にあると言えます。


6. 最後の手動編集

最終手段として、go.modgo.sum直接編集することは悪ではありません。

# キャッシュを消して再整合
go clean -modcache
rm go.sum
go mod tidy
  • 不要な require は手動で削除
  • replace の依存を整理
  • 必要に応じて go.sum を再生成

go.mod は構造の設計図。
tidy は再帰整合。
replace は応急処置。

これさえ理解していれば、壊れてもプロジェクトを修復することが可能になります。
また、あらかじめ理解しておくことで、プロジェクトを壊れにくくすることができます。


結論

Goは「手続き型言語なのにモジュール対応してしまった」。
この矛盾が、tidyやreplaceが必要になるすべての理由です。

でも、その構造を理解してしまえば――
tidyの挙動も、replaceの意味も、
そして壊れた時の修復も、すべて説明がつきます。

理解して使えば、Go Modules はもう怖くない。

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