※本記事は4回に分けて投稿する連載記事の1本目です。
社会の課題を「バグ」として見ると、いくつかの現象がよく似た構造をしていることに気づきます。
たとえば、空き家の増加と少子化の進行。
一見まったく別の問題のようでいて、実はこの二つは同じコードの欠損から生じている――そんな構造仮説をもとに生まれたのが「ご近所OS構想」です。
1. 社会のソースコードに埋まった断絶
空き家問題は「住む人がいない家」で、少子化問題は「家がない(または支えのない)人」。
対象は違っても、どちらも “循環が止まった状態” として現れます。
つまり、現代社会では 「モノの循環」と「人の循環」 が別々のスレッドで動き、同期を失っている。
- 都市計画:家をどう再利用するか
- 少子化対策:家族をどう支えるか
それぞれが「正しい処理」を行おうとしているはずなのに、出力結果が想定通りにならない。
まるで、同じメモリ空間を共有せず、同期も取れていないプロセス。
非同期処理の同期が取れていないようなバグを起こしているかのようです。
2. 直列構造の限界
行政も企業も、問題を「原因→対策→成果」という直列構造で処理します。
単一スレッド部分だけを修正してバグを解決しようとします。
この構造はシンプルでわかりやすいのですが、循環系の障害には対応できません。
そのため、マルチスレッド系のバグには対応できません。
なぜなら、循環の停止は“どこか一箇所の故障”ではなく、接続そのものの断絶だから。
要はスレッド間の同期が取れていないのです。
空き家と少子化は、その同期が取れていない非同期処理の結果として発生したバグといえます。
- 家が余る一方で、
- 家族は暮らす場所と支援を失う。
本来なら相互に補い合うはずの構造が、
縦割り化によって直列処理され、循環を閉じることができない。
3. 矛盾は、バグではなく構造そのもの
興味深いのは、この二つの課題が互いの解を内部に持っていることです。
- 空き家対策の「家」は、少子化対策の「家庭」の不足を埋める。
- 少子化対策の「人」は、空き家問題の「居住者不在」を埋める。
つまり、矛盾が解そのものになっている。
ここに「循環設計(Circular Design)」のヒントがあります。
矛盾はエラーではなく、処理系の設計思想を変える契機。
つまり、直列ではなく、循環として設計し直す必要があるのです。
ありていに言えば、スレッド間の同期を取ればいいのです。
4. ご近所OS構想 ― 矛盾を循環に変える設計
「ご近所OS」は、この断絶を修復するための社会的OS(オペレーティングシステム)です。
単に空き家を再利用するだけでなく、
人と税と関係を循環させる仕組みを設計単位にしています。
この構想では:
- 都市計画課(ハード)が「場」を整え、
- 少子化対策課(ソフト)が「人」を動かし、
- OS層(仕組み)が両者を循環で同期させる。
結果として、両者のKPI(成果指標)が一致します。
行政的には別部署、構造的には同一回路――それが「ご近所OS」の中核思想です。
5. 次回予告:「循環を設計する」という発想
次回は、この“循環という構造”をどのように設計するのか、
技術的・行政的・社会的な視点を統合して整理します。
「断絶を見つけた」第1回。
次回は「循環を設計する」第2回です。
直列構造の社会を、どうすればOS的に書き換えられるのか。