はじめに
Ethereumの大きな課題の1つであるスケーラビリティ。その解決策として注目されているzkRollupについて、仕組みからMEVまで詳しく解説します。
1. zkRollupとは
オフチェーン実行の仕組み
zkRollupは、トランザクションの処理をオフチェーンで実行する Layer 2 ソリューションです。この「オフチェーン」は以下のような特徴を持っています:
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分散型の実行環境
- 複数のノード(Sequencer/Validator)で構成
- トランザクションの収集、実行、検証を分散処理
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Sequencerの役割
- ユーザーからのトランザクション受付
- トランザクションの順序付けと処理
- バッチ処理と零知識証明の生成
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Validatorの役割
- 証明の検証
- 不正検知
2. トランザクション処理の違い:L1 vs L2
Mempoolの違い
L1(Ethereum)とL2(zkRollup)では、トランザクションの処理フローが大きく異なります。
主な違いのポイント
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Mempool管理
- L1:分散的なpublic mempool
- L2:Sequencer管理下のプール
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処理速度
- L1:ブロック時間(約12-14秒)に依存
- L2:Sequencerのバッチ処理タイミング
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最終性
- L1:ブロック確定で完了
- L2:L1確定を待つ必要あり
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コスト効率
- L1:各トランザクションに高いガス代
- L2:バッチ処理による大幅なコスト削減
3. MEVの比較:L1(PoS)vs L2
MEVの構造的違い
MEVの主な違い
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MEV抽出者
- L1:複数アクター(ブロックビルダー、バリデーター、リレー)
- L2:主にSequencer
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抽出方法
- L1:多様な戦略(サンドイッチ、フロントランニング等)
- L2:Sequencerによる取引順序操作
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規模と特徴
- L1:大規模な流動性、多様な機会
- L2:比較的小規模、Sequencer主導
課題と対策
L1の課題:
- バリデーター間の競争激化
- リレーの中央集権化リスク
- PBS実装の複雑さ
L2の課題:
- Sequencer権限の集中
- 透明性の欠如
- ユーザー選択肢の制限
4. 今後の展望
L1(PoS)の方向性
- PBSの継続的改善
- MEVブーストの分散化促進
- フェアネスメカニズムの強化
L2の発展
- 分散型Sequencerの実装
- 順序付けオークションの導入
- 透明性向上への取り組み
まとめ
zkRollupは、Ethereumのスケーラビリティ問題に対する有効な解決策として期待されています。しかし、MEVの観点からは新たな課題も存在します。L1とL2それぞれの特性を理解し、適切に活用していくことが重要です。