はじめに
本記事は any Advent Calendar #2 「マルチテナントSaaSにおけるエンジニアリング大全」 Day25 の記事です。 弊社anyのアドベントカレンダーをひとつ丸ごと占有して、ひとりアドベントカレンダーとして、筆者の「マルチテナントSaaSのエンジニアリング」への経験をすべてアウトプットしていくカレンダーです。
マルチテナントのエンジニアリングを追う長い旅路も、ついに最終日を迎えることになりました。これまでエンジニアリングの話を中心にしてきました。今回はこれまでの内容を振り返りながら、それ以前に大切なマインドセットの話をさせてください。
最後にはエンドユーザの方を向くこと
これまでマルチテナントSaaSの作り方、いわゆる"how"の部分に着目してきましたが、そもそも私たちがそのプロダクトを作る理由は、「エンドユーザに利便性や感動を与えるため」と言い換えることができます。
マルチテナントSaaSにおけるテナント分離など、いわゆるテクニックはこれまで多く紹介してきましたが、最終的に 「エンドユーザの利便性を落とさないことへの姿勢」 が最重要なのではないかと思います。
一般的にはこれらはトレードオフなのです。そもそもデータの分離など行わなければ、パフォーマンス上大きなメリットが得られるかもしれませんし、マルチテナントであることを強く意識しすぎて、複雑なインフラ構成になってしまうかもしれません。
それでもセキュリティやガバナンスのような観点から、エンドユーザに不便を与える可能性のある選択を取らざるを得ない場面はあるでしょう。しかしながら、さまざまな最後の判断軸として、「エンドユーザの体験の方向を向けているか」を議論する土台が大切だと思います🙏
そして、一方でマルチテナントSaaSにかかわる開発者のみなさんは、直接的にサービスのエンドユーザーではない場合も多いと思っています。そのため顧客に共感することを忘れないような行動ができているかを見つめ直すと良いでしょう。
まずはエンドユーザに直接会うという機会、これはPdMに限らずエンジニアも積極的に行うべきと思います。anyでの事例では、エンジニアが展示会や自社カンファレンスのイベントなどに参加するなどして顧客との接点をつくることを非常に大切にしています。
いわゆる「想い」の面については昨年のアドベントカレンダーでも似たような内容で書いたので、こちらも読んでいただけると嬉しいです☺️
ビジネスサイドへのリスペクトを
みなさんは自分のプロダクトに対するビジネスサイドへの理解度はどの程度でしょうか?これは私自身の反省でもありますが、前職のSansanというメガベンチャーに在籍していたときですら、B to B SaaSのビジネスサイドへの理解が及んでいたとは言い切れませんでした。
その反省もあり、anyに入社してからは、ビジネスサイドのメンバーとの交流を多くもつように心がけています。ありがたいことに、anyの開発においては、ビジネスサイドのメンバーは絶対的に味方である、と断言できます。これも信頼関係のたまものです。
とはいえ、いきなりビジネスサイドの全てを理解することは難しいという気持ちは非常によくわかります。Horizontal B2B SaaSという文脈においては、まず自社のビジネスモデルである『The Model』、つまりマーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスなどの部門の役割理解から始めると良いでしょう。
また前日にも紹介しましたが、SaaSであればメトリクスの理解なども一度覚えるだけなので、非常にオススメです。まずはビジネスの構造を理解してみましょう。
こういった座学的な勉強は形式的な知識の習得のみならず、GTM(Go to Market)を担う部門に対するリスペクトの醸成に直結します。もちろんリスペクトを持つべきである点は、バックオフィスなどの他部門も同様ですが、視点を持つ必要性をビジネスサイドへ向けてみることから始めてみてはいかがでしょう。
そして最後は自分が飛び込む勇気です。プロダクトや顧客と向き合うことを本気で考えれば、ビジネスサイドへの理解をしようと自然に思う感覚が伝われば良いなと思います。
さいごに
25日間のアドベントカレンダーをお読みいただきまして誠にありがとうございました。
もともとの動機として、これまで7〜8年ほど関わったB2B SaaSのマルチテナントのエンジニアリングについて、このタイミングで体系立ててみたいと思ったのですが、自分が思った以上に整理できた気がしています。もちろん良い意味で生成AIやマルチプロダクトなどの視点が足りないことへの内省にもつながる貴重な機会でした。
そして何よりこれらの記事が、同じようにマルチテナントSaaSを支えるエンジニアのみなさんに届く内容になれば嬉しいなと思います🙌
むすびに、ここまで社内レビューを毎日行って下さったanyのみんなに感謝を送り、この記事を締めたいと思います。
本当にありがとうございました!
