「富士通 CoEチームによるServiceNowを核とした社内DX」講演レポート
~実践知としくじりから学ぶ、OOTB準拠の重要性~
報告日: 2025年10月24日
- セッション情報
セッション名:
「富士通がServiceNow CoEチームを設置した理由と、しくじりからの再構築」
登壇者:
富士通株式会社 ServiceNow CoEチーム
開催形式:
事例講演 - 背景・概要
富士通では、約20名体制のCoE(Center of Excellence)チームを中心に、ServiceNowを核とした全社DX推進を実施しております。
同社では過去にCMDBを過剰にカスタマイズした結果、開発が停滞し、バージョンアップや保守性の面で大きな支障をきたした経験がありました。
この反省を踏まえ、CoEでは以下の方向転換を明確化しております:
【主要な取り組み】
OOTB(Out of The Box)準拠の徹底
標準機能に極力合わせる「Fit to Standard」の姿勢を全社に浸透させる方針
CoEによる全社ガバナンスの確立
個別部門主導から、共通基盤チームによる設計・変更統制・標準運用への移行
再利用と学びの循環
過去の失敗を社内知として蓄積し、他プロジェクトへの再発防止策に反映
講演では、「標準を軽視した結果、成長が止まった」という教訓から、「まずはOOTBでできる範囲を最大限に活かすことが、長期的なスピードと品質の両立につながる」という明快なメッセージが強調されておりました。
- 業務への示唆
Fit to Standard の意識徹底
システム導入時は「どうやって標準機能に合わせるか」を第一に考えることが重要です。要件をシステムに"合わせる"設計が、保守性・継続性を大きく高めます。
過去の失敗を"資産化"する仕組み
失敗を個人経験で終わらせず、ナレッジ化・標準化して再発防止へ活用します。「しくじりを語る文化」は学習する組織づくりに直結します。
CoEモデルの導入検討
当組織においても、ガバナンス・標準化・教育・品質保証を統括する横断チームの設置が有効と考えられます。特にプラットフォーム拡張が進む環境では、全社一元管理の司令塔が重要です。
OOTB+アジャイルの融合
標準を守りつつ、改善サイクルを早めることで、ユーザー体験とスピードを両立できます。 - 実現に向けた課題
課題項目 内容
業務側との調整コスト Fit to Standardの徹底には、現場の「これまで通りやりたい」という抵抗をどう解くかが課題。標準の意義を理解させる教育・対話が必須。
既存システムとの整合性 OOTBで統一する際に、既存カスタム機能や外部連携部分をどう置き換えるか検討が必要。
CoE人材の育成と維持 高度な知識(開発・運用・設計・ガバナンス)を兼ね備えた人材を20人規模で維持するための継続的なスキル育成が重要。
グローバル標準の浸透 海外拠点を含めたグローバルインスタンス化には、文化・業務差をどう吸収するかの統一戦略が必要。
AI活用への拡張 将来的にNow Assistなどの生成AIをどうCoEの運用・自動化に取り込むかが次の挑戦。 - 総括・提言
本講演を通じて、「標準を守ることは制約ではなく、長期的な自由を得るための投資」という富士通CoEの核心的メッセージが強く印象に残りました。
技術者視点ではカスタマイズの誘惑に陥りやすい傾向がありますが、標準への回帰が結果的に進化を早めるという事例は、当組織のシステム導入・運用においても重要な指針となります。
【提言】
今後のプロジェクトにおいては、以下の観点を設計原則として組み込むことを提案いたします:
新規導入時の「Fit to Standard」評価プロセスの制度化
カスタマイズ判断基準の明文化とレビュー体制の確立
失敗事例の組織的共有とナレッジベース化の推進
以上