講演レポート
セッション名:NIPPON EXPRESSグループにおけるグループグローバル会計システム導入を契機としたITSM・生成AI(Now Assist)活用の取組み
講演日:2025年10月23日
概要
NIPPON EXPRESSグループでは、グローバル会計システム導入をきっかけとして、グループ全体のITサポート基盤としてServiceNowを導入。初期は会計システム領域における問合せ対応の効率化を目的としてITSMを採用したが、現在ではグループ全体のITサポートソリューションの中核として発展している。
講演では以下が紹介された:
自己解決(セルフサーブ)を促進するナレッジ活用
ServiceNow生成AI「Now Assist」やAI Searchの利用状況
今後の運用拡張と課題認識
特にAI Searchを用いた検索型ナレッジ参照がすぐに利用可能である一方、ナレッジコンテンツの量が十分でないため、QAデータの蓄積が効果発揮の前提である点が強調された。また、Now Assistの実運用にはワークスペース版(Next Experience)への移行が前提であり、インシデント/問題/変更管理アプリの改修・移行が必要であることが示された。
仕事に生かせる点
① 自己解決の仕組み作り
AI Searchを利用してナレッジを即座に参照できる設計は、自社でもユーザ対応負荷軽減に応用できる。特にFAQや問い合わせ履歴を構造化し、QAベースで蓄積する仕組みが参考になる。
② AI活用の段階的導入
NXが"利用可能な範囲から導入し、段階的に拡張する"アプローチを採った点は、生成AI導入の現実的な進め方として有効。まずはAI Search → 次にNow Assistのようにステップを踏む構成を自社計画に転用可能。
③ ワークスペース化の意義
従来のフォームUIからワークスペースUIに移行することで、AI要約やナレッジ提案機能が有効になる。将来的なユーザ体験向上に向けた改修方針策定の参考になる。
実現への課題
① ナレッジの量と質の確保
現時点ではナレッジ利用頻度が低く、AI Searchの効果を最大化するにはFAQ/QAデータの充実が必要。継続的なナレッジ運用体制(更新・レビュー・評価)が鍵。
② システム構成の改修
Now AssistはNext Experience対応のワークスペース上で動作するため、既存ITSMアプリ(Incident/Problem/Change)の改修・移行が前提。カスタムUI・フローとの互換性検証が必要。
③ 教育と運用浸透
新UIや生成AI活用にはオペレーター/利用者教育が不可欠。AI結果の精度検証やガイドライン整備も課題。
④ 投資判断
機能移行やAI連携の開発コストに対する費用対効果を明確化する必要。特に段階導入でROIを可視化するアプローチが求められる。
総括コメント
AI SearchとNow Assistの両者は、すぐに導入できる要素と中期的に整備が必要な要素を併せ持つ。NIPPON EXPRESSグループのように、まず検索型の自己解決基盤を整備し、次段階で生成AI要約を導入する戦略は、自社のAI活用ロードマップ策定においても有効なモデルケースといえる。